「使われ続ける社内システム」ってなに? 四苦八苦アプリ改善の先にあるものとは:ユーザーが“自ら”アプリを改善するべき理由(1/3 ページ)
社内業務の迅速化がビジネスにとって重要になってきている。ユーザーの業務を効率化し、かつ使われ続ける社内システムを開発するにはどうすればいいのだろうか。kintoneを使ったアプリ開発の苦労や開発方法などを3つ紹介する。
あらゆる業種において、ITがビジネスを支えることが当たり前となっている現在、顧客管理やパートナー企業との受発注などの社内業務をいかに迅速に行うかが、ビジネスの成否を分けるといっても過言ではない。このような意識を持つ企業は、「社内システムの“使いやすさ”をいかに改善していくか」を継続的に考え、自ら主導してシステム改善を進めている。
kintoneは、開発の知識がなくても、自社の業務に合わせたビジネスアプリを容易に作成できるクラウドサービスだ。ユーザー企業も多く、kintoneの業務活用ノウハウやアイデアをユーザー企業同士が発表し、情報交換するイベント「kintone hive」が何度か開催されている。
本稿では、サイボウズが2017年5月19日に東京・六本木アカデミーヒルズタワーホールで開催した「kintone hive tokyo vol.5」の講演から、ジーベックテクノロジーとリノべる、リクルートライフスタイルの3社をピックアップ。業務改善プロジェクト成功の秘訣(ひけつ)やアプリ開発の苦労、活用のコツなどを探る。
入力動線とデータ活用法を改善してシンプルで使いやすいアプリへ:ジーベックテクノロジー
ジーベックテクノロジーは、工具用研磨や切断、微細バリ取り用工具などの開発、製造、販売を手掛けている。長年手作業で行われていた金属加工時にできる“バリ”を取り除く作業の自動化も推進している。
ジーベックテクノロジーは、営業部が顧客の部品情報や加工条件などを記録、管理するための顧客・案件管理システムをWebベースで自社開発し、2003年に導入。顧客数とデータ量の増大に伴い、2012年にクラウド型CRMツールへシステムを移行した。
しかし、入力の動線や画面設計にツール特有の制限があったこと、システム会社に開発を依頼したものの費用面で妥協しなければいけなかった点が多かったことから、ツールのカスタマイズ開発が思い通りにいかなかった。移行当初は使っていたものの「次第にシステム自体が使われなくなってしまった」と、ジーベックテクノロジー 管理部マネージャーの本堂円氏は当時を振り返る。営業部からは、「入力の動線が営業の流れにそぐわない」「画面デザインが見づらい」「検索が使いづらい」などの不満が続出していたという。
クラウド型CRMツールを2年間利用していたが、これ以上継続して使うのは難しいと判断。新たなシステムのプラットフォームとして、同社が注目したのがkintoneだった。「kintoneは、画面設計の柔軟性が高い、コストパフォーマンスが良い、社内にシステムエンジニアがいなくてもメンテナンスできることから、既存システムの課題を解決できると考え、2014年秋から導入を開始した」
顧客・案件管理システムのリプレースに当たって、営業が入力する動線と見た目を精査し、データの入力画面を開発した。以前よりは使われるようになったものの、1つ大きな課題に直面したという。「ユーザーの入力漏れを防ぐために、1つの画面内で全ての入力を完結できるkintoneの『テーブル行』でシステムを開発した。しかし、入力項目数が多かったので、非常に横長の画面構成になってしまった」
横長の画面のため、データを入力するときに横スクロールする必要があり、データの閲覧にも手間がかかる。また検索のしづらさも改善されていなかった。「ユーザーの入力の導線を重視したが、かえって不満の声が挙がってしまった」
この課題を抱えたまま約1年が経過したころ、kintoneのカスタマイズ開発を手掛けるM-SOLUTIONSのセミナーに参加した。このことをきっかけに、同社を開発パートナーに迎え、顧客・案件管理システムの改修に乗り出す。
最大の課題だったのは、横スクロール問題だ。まずは、横長になっている入力画面を再構築。顧客・案件管理システムにボタンを設置し、ポップアップウィンドウを表示するようにした。そのポップアップウィンドウに入力用のアプリを組み入れて、1つの画面に収まるように項目を集約。ポップアップウィンドウ内の保存ボタンを押すと、データが登録される。「入力の動線を改めて整理し、ユーザーにとって使いやすいシステムを実現した」
併せて検索機能の充実も図り、データの一覧画面上に検索パーツを埋め込んだ。ユーザーがよく使う検索項目を画面上に一覧表示することで、探したいデータを素早く検索できるようにした。これにより、シンプルで誰もが使いやすい検索機能を実現したという。
こうして、入力の導線と検索の使いづらさの両方を解決した本堂氏は、システムを開発する際の要件定義の問題について「入力に対する改善要望と検索に対する改善要望を集めたとき、入力の改善要望が多いと、それに偏ったシステムができてしまう」と述べる。
しかも、時間がたつと、情報を検索する人が増えたり、ユーザーの使い方が変わったりする可能性がある。そのとき、最初に作ったシステムがユーザーのニーズに合わなくなってくる。「アプリの管理者としては、その時々の利用状況に応じて最適な利用環境を提供することが重要ではないか。業務アプリは開発したら終わりではなく、さまざまなビジネス変化に合わせて成長させていく必要がある」
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