「使われ続ける社内システム」ってなに? 四苦八苦アプリ改善の先にあるものとは:ユーザーが“自ら”アプリを改善するべき理由(2/3 ページ)
社内業務の迅速化がビジネスにとって重要になってきている。ユーザーの業務を効率化し、かつ使われ続ける社内システムを開発するにはどうすればいいのだろうか。kintoneを使ったアプリ開発の苦労や開発方法などを3つ紹介する。
情報の統合でマーケティングを加速:リノべる
リノべるは、不動産会社と施工会社、設計会社との連携体制によって、中古住宅のリノベーションプラットフォーム事業を展開している。現在、全国に21店舗を構え、2015年度は年間で400件のリノベーションマッチングを達成。そして、将来に向けた大きな目標として、2025年度に「年間1万件のマッチング」を掲げている。
「これは、非常に高い目標であり、実現するためには、ITを駆使した業務改革が不可欠だ。またテレビでCMを大々的に打つことも難しいので、データを活用して、いかに効率的に市場を開拓していくかが求められる」と語るのは、リノべる 取締役CMO(最高マーケティング責任者)の渡会雄一氏。
この取り組みの重要なキーポイントに位置付けられたのが、顧客管理システムの刷新だった。リノべるのサービスフローは、Web訪問から来場予約、物件探し、設計、施工、引き渡し、サポートまで約6カ月間のリードタイムで展開している。このプロセスの中で、さまざまな顧客情報が取得される。「だが従来の顧客管理システムでは、部門間での情報のやりとりが多い上に、それぞれで別システムが使われていたため、正確な情報が伝達されないケースも少なくなかった」
そこで新たな顧客管理システムを自社開発とkintoneの2つで検討した結果、kintoneが最も条件にマッチすると判断し、導入を決定。「自社開発の場合、完成するまでに約7カ月必要だった。それに比べてkintoneは、開発期間が短くて済むことが分かり採用した」
顧客管理システムの開発ポイントは、「営業案件データベース(DB)」を中心に、Web訪問から引き渡しまでの間、一気通貫でのデータ管理を実現したことだ。「今まで、マーケティング部門はGoogleスプレッドシート、営業部門は既存のCRMツール、設計部門はExcelと、それぞれ別々のシステムで顧客情報を入力していた。それが顧客システムへの入力1回で全ての情報を共有できるようになった」
また業務の効率化を図るために、顧客管理システムとさまざまなアプリを連携したという。「顧客管理システムとMA(Marketing Automation)ツールをAPI連携することで、顧客情報とWebアクセス情報を合わせたセグメントを、3分程度で作れるようになり広告施策を打ちやすくなった」
さらに顧客管理システムとBIツールを連携することで、リアルタイムのレポートを見られるようになったという。「以前は、情報をcsv形式で吐き出して、足りないところを電話で確認しながらレポートを作成していた。そのため、レポートの作成がマーケティング部門の仕事になっていた。現在は、BIツールでリアルタイムな状況を見られるようになって、レポート作成も容易になり、施策のPDCAサイクルも回しやすくなった」
顧客管理システムの活用だけではなく、入力にも工夫を凝らした。システムへの入力方法を変更すると、ユーザーになかなか新しい入力方法が浸透しない。その問題を解決するため、部署ごとに慣れているインタフェースで入力用のアプリを作成したという。「設計部門は、使い慣れているExcelの入力形式を使い続けたいと強い要望があった。そのため、Excelライクなインタフェースの入力用アプリを作成した。現在は問題なく使ってもらっている」
最後に渡会氏は、顧客管理システムの統合が「『社員全員が同じ数字を基に議論できる』『入力工数を削減し、本業に集中できる』『顧客データを武器としてマーケティングに活用できる』という3つの業務改革に結び付いた」と強調した。
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