ついに最後の「Itanium」が登場、HPEは搭載プラットフォームを2025年までサポート:「The Next Platform」で読むグローバルITトレンド(7)(2/2 ページ)
2017年5月、Intelが「Itanium 9700」を発表した。今回は、Itaniumの歴史を振り返り、その未来を考察する。
Oracleの「Itaniumサポート打ち切り宣言」の波紋
Intelは、Itaniumがまずまずのパフォーマンスを提供できるようになるまで、同プロセッサのロードマップを何度か変更し、新モデルの出荷を延期していた。そうした中でOracleが2011年に、同社のソフトウェアでのItaniumサポートを打ち切るという爆弾宣言を行った。IntelとHPは、Oracleが挙げたサポート打ち切りの理由に反論し、両社のItaniumの取り組みを擁護した。
この対立は同年にOracleとHPの訴訟合戦に発展した。Oracleの主張は一理あった。AIXとSolarisはItanium版がリリースされなかった。2009年12月にはRed Hat Enterprise LinuxのItaniumサポートの終了が発表され、Microsoftも2010年4月、Windows ServerとSQL ServerでのItaniumサポートを打ち切ると発表していた。それでもOracleは敗訴し、Itanium上での「HP-UX」のサポートを再開した。HP-UXはHPのUNIX OSだ。
Itaniumをめぐる訴訟が行われている間に、さまざまな動きが明らかになった。HPはx86プロセッサへのHP-UXの移植を開始し、AMD Opteronプロセッサ搭載の大型NUMAマシンにも取り組んだが中止に至った。
これらは「Project Kinetic」という大規模な取り組みの一環だった。最終的に、Project Kineticでは、Xeon E7とItaniumに共通のソケットを搭載するシステムの投入が計画された。この共通ソケット戦略は、Kittson世代のItaniumプロセッサで実現する予定となった。2012年11月、最大8コアの「Itanium 9500」プロセッサ(コードネーム:Poulson)が発表された際、この戦略も併せて公表された。
その前年の2011年、HPは「Project Odyssey」を発表している。これはHP-UX、「NonStop」「OpenVMS」プラットフォームが動作するItaniumマシンとなっていた、NUMA対応の「Superdome」システムにXeon搭載ブレードを組み込めるようにするという計画だった。
だが、Intelは2013年1月末に、XeonとItaniumのソケットの共通化を最終的に取りやめたと発表した。実は、この共通化が計画されたのはこれが初めてではなかった。初めてOpteronが登場した2003年以来、XeonとItaniumの共通ソケットというアイデアはひそかに話し合われていた。
さらにこの発表時には、ソケットの共通化とともにKittsonで計画されていた、32ナノメートルプロセスから22ナノメートルプロセスへの製造プロセスの微細化についても中止が発表された。22ナノメートルプロセスはXeonプロセッサ「Ivy Bridge」「Haswell」(いずれもコードネーム)と同じ製造プロセスだが、KittsonはPoulsonと同じ32ナノメートルプロセスに据え置かれることになった。
これらの計画の中止は、基本的に、Kittsonの実際の姿はコードネーム「Poulson+」に近いことを意味している。
Itanium 9700は最後のItaniumプロセッサ
いずれにしても、Intelの広報担当者は、われわれが以前から推測していたことを事実と認めた。それは、Itanium 9700として発表されたKittsonが、Itaniumラインの最後のプロセッサだということだ。KittsonとPoulson、「Tukwila」の比較を以下に示す。
ご覧のように、KittsonはPoulsonと比べて、ターボブーストを利用できる他、クロック周波数が若干向上しているにすぎない。実のところ、Intel用語の「チック」(Tick:製造プロセスを微細化した世代)でも「タック」(Tock:設計変更により性能、機能が向上した世代)でもない。だが、HPE(Hewlett Packard Enterprise)がHPと顧客に対して何年も前に約束したことを持ち出して騒がなければさほど問題はない。
HPEの顧客が気に掛けているのは、多少なりとも性能が向上していて、自社の大型またはミッドレンジのNUMAマシンを継続してサポートしてくれる新しいプロセッサが手に入ることだ。
NVM Express(NVMe)フラッシュをHPE Integrityサーバプラットフォームに追加し、メインメモリを2倍に増量し(32ソケットのSuperdomeシステムであれば8TBに)、調整が施されたHP-UX OSを使えば、顧客はItanium 9700にアップグレードすることで、30%程度のパフォーマンス向上が期待できる。
なお、HPEのエンタープライズサーバ担当製品管理ディレクター、ジェフ・カイル氏は次のように述べている。「HPEは、Itanium 9700を搭載するIntegrity i6ラインで、Intelの3D XPointメモリ『Optane』をサポートする。また、ItaniumベースのHP-UXプラットフォームを少なくとも2025年までサポートする」
さらに、HPEは「ProLiant」シリーズの一般的なXeonサーバ上のLinuxコンテナで動くよう、HP-UXの移植にも取り組んでいる。この方が興味深いかもしれない。HPEは、エミュレートされた環境におけるOSの実行に関しては経験がある。同社が何年も前に提供していたエミュレーション環境「Aries」は、PA-RISCプロセッサ向けにコンパイルされたHP-UXバイナリをItaniumプロセッサ上で動作させるものだった。
最終的に、HP-UXはLinuxアプリケーションの1つになりそうだ。ただし、それはデータベースやアプリケーションサーバとセット化された大規模なものになる見通しだ。実際、われわれはHP-UXを使用する多くの企業がItanium 9700へのアップグレードを行わず、Xeonプロセッサ「Skylake」(コードネーム)などを搭載するシステム上のLinuxコンテナでHP-UXが使えるようになるのを待ったとしても驚かないだろう。
出典:The Last Itanium, At Long Last(The Next Platform)
筆者 Timothy Prickett Morgan
IT industry analyst, editor, journalist
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