そのNano Serverのインストール、ちょっと待った!:山市良のうぃんどうず日記(104)(1/2 ページ)
Windows Server 2016には、従来のGUI環境と「Server Core」と呼ばれるCUI環境に加え、新たに「Nano Server」という最小インストールオプションが追加されました。Nano Serverは、Hyper-Vなど幾つかのサーバの役割を実行できますが、現行バージョンの本番環境への導入はお勧めしません。なぜなら初代Nano Serverは、ある意味、一代限りのはかない存在になりそうだからです。
1年前にデビューしたNano Server、初代は引退を表明?
「Nano Server」は、2016年9月(ライフサイクルの開始は10月15日)にリリースされたWindows Server 2016の新しいインストールオプションです。Windows Server 2008以降、「GUI使用サーバー」とも呼ばれるフルインストール(Windows Server 2016では「デスクトップエクスペリエンス」と呼ばれます)と、フルインストールのWindows ServerからGUI(Graphical User Interface)機能を削除した「Server Core」インストールの2つのインストールオプションが存在しましたが、Nano ServerはServer Coreインストールよりもさらにコンパクト化された、“最小のインストールオプション”です。
更新プログラム適用前のインストールサイズ(ディスク上のサイズ)は500〜700MB程度と、非常にコンパクトでありながら、Hyper-V、コンテナ、IIS(インターネットインフォメーションサービス)、ファイルサーバ、フェイルオーバークラスタリング、DNS(Domain Name System)サーバ、ASP.NET 5/.NET Coreといった、インフラストラクチャサーバおよびアプリケーションサーバ用のOSとして利用できます。
Nano Serverからはローカルコンソールさえも削除されており(「Nano Server Recovery Console」というトラブルシューティング用のローカルコンソールはあります)、「PowerShell Remoting」などによるコマンドラインベースのリモート管理が基本になります。通常のWindows Serverと同様、物理マシン、Hyper-V仮想マシン、Azure仮想マシンにインストールすることができます(画面1)。また、Windows Server 2016の新機能であるDocker対応のWindowsコンテナのベースOSイメージとしても利用可能です(画面2)。
画面1 Hyper-V仮想マシンにインストールされたNano Server。PowerShell RemotingやPowerShell Direct(Windows Server 2016 Hyper-Vの新機能)でリモート接続して操作する。この利用形態は現行バージョンが最後になる予定
画面2 Windows Server 2016のコンテナホスト上で、Docker Hubから取得したNano Serverイメージ(microsoft/nanoserver)を使用して、Windowsコンテナを作成、実行しているところ。この利用形態は今後も利用可能
Nano Server自身が非常にコンパクトであることから、その分、コンピューティングリソースをサーバ上の役割やアプリケーションに割り当てることができるため、興味を持たれている企業/サーバ管理者も多いと思います。
例えば、VMwareが提供する無償版のハイパーバイザーに「VMware vSphere Hypervisor(ESXi)」がありますが、それに相当するものとしてMicrosoftは無償の「Microsoft Hyper-V Server」を提供しています。ただし、技術的に言うと、Microsoft Hyper-V Serverは、Server CoreベースのWindows Serverであり、あらかじめ「Hyper-Vの役割」を有効化したようなもので、インストールに必要な領域やリソース要件はWindows Serverとほぼ共通です。Nano ServerベースでHyper-Vホストを構築した方がESXiにより近いイメージであり、ハイパーバイザー環境を最小限のリソースで動かし、その分、仮想マシンにリソースを割り当てることができます。
しかし、Nano Serverにそのような期待をして、運用環境に導入するのはちょっと待ってください。前出の画面1の利用形態、つまり物理マシン、Hyper-V仮想マシン、Azure仮想マシンにインストールして動かす利用形態は、現行バージョンのNano Serverが最後になるからです。
もう1点、Nano Serverについては重要なことがあります。それは、Nano Serverが通常のWindows Server 2016のコアベースのライセンスが提供する永続ライセンスではなく、コアベースのライセンスに加えて、「ソフトウェアアシュアランス(SA)」契約が必要な“非永続ライセンス”だという点です。
通常のWindows Server 2016は「Long Term Servicing Branch(LTSB)」(2017年秋からは「Long Term Serving Channel(LTSC)」と呼ばれるようになる予定)という、標準で最低10年のサポート(メインストリーム5年+延長サポート5年)が提供されます。対して、Nano Serverは、SAに基づいて「Current Branch for Business(CBB)」というWindows 10でもおなじみのサービスオプションで提供されます。Nano Serverは、CBBのサービスオプションで1年に2〜3バージョンがリリースされる予定でした。Nano Serverが登場して間もなく1年になりますが、その約束が果たされることはありませんでした。
2代目ブラザーズ、Nano Serverはコンテナ限定の地下アイドル?
Windows 10 Fall Creators Update バージョン1709およびOffice 365 ProPlusのバージョン1709からは、1年に2回(3月と9月ごろ)のサイクルで新しいバージョンがリリースされる「Semi-Annual Channel(半期チャネル)」の事実上のスタートです。Windows 10のCurrent Branch(CB)/Current Branch for Business(CBB)は、それぞれ「Semi-Annual Channel(Targeted)」「Semi-Annual Channel」という名称に変更されます(Semi-Annual Channelという名称の使用は、Windows 10 Creators Update バージョン1703の2017年7月のCBB向けリリースから始まっています)。
これに合わせ、Windows ServerでもSemi-Annual Channelがスタートします。従来のLTSB(今後はLTSC)に基づいたWindows Server 2016のサポートは続きますが、Semi-Annual ChannelはSAに基づいて提供されるサービスオプションであり、その対象はServer CoreおよびNano Serverです。
そして、Semi-Annual ChannelのServer Coreは、物理サーバ、仮想マシン、Azureのようなクラウド環境にインストールして使用できる他、WindowsコンテナのベースOSイメージとしても提供されます。対して、Nano Serverの方は、WindowsコンテナのベースOSイメージとしてのみの提供になります。
WindowsコンテナのベースOSイメージとしてのみの提供となるNano Serverは、利用可能な役割やコンポーネントがさらに削減され、コンパクトになっています。例えば、コアイメージはWindows PowerShellやWMI(Windows Management Instrumentation)のサポートさえ含みませんし、物理マシン用のドライバも不要です。OS更新の必要もないため(イメージを置き換えるだけなので)、Windows Updateの機能も搭載していません(プレビュービルドのmicrosoft/nanoserver-insiderで200MB程度)。なお、Windows Server Insider Previewでは、オープンソースの.NET CoreおよびPowerShell Coreを組み込み済みのイメージ(microsoft/nanoserver-insider-powershell)も提供されています(画面3)。
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