「空冷」ではもう無理 AI時代のデータセンターで「液冷」を選ぶ“必然”:高密度冷却と運用管理デジタル化の融合が鍵
生成AIの普及によって、データセンターでは100キロワット超の高密度ラック構成が広がりつつある。今後のITインフラはどのように変わるのか。シュナイダーエレクトリックが、世界市場の動向を基に分析した。
シュナイダーエレクトリックは、ITインフラに関する課題やトレンドをまとめたニュースレターを報道機関向けに提供した。同社が世界のデータセンター市場に関する分析を基にまとめたものだ。同社によると、生成AIの急速な普及を受けて、データセンターの設計は大きな転換期を迎えている。
データセンターの電力密度は、従来は1ラック当たりおよそ数キロワット〜10キロワットが一般的だったとシュナイダーエレクトリックは説明する。次世代AIシステムの普及に伴い、現在は100キロワットを超える高密度のラック構成が珍しくなくなっているという。背景には、GPU(グラフィックス処理装置)の高性能化による消費電力と発熱量の増加がある。
AI向けシステムでは、GPUサーバをラック内に高密度に配置する動きが広がっており、単位面積当たりの発熱量が急増しているという。その結果、従来の空冷方式では排熱が追い付かなくなりつつあり、物理的な限界が近づいているとシュナイダーエレクトリックは指摘する。
グローバル規模で加速するデータセンターの「液冷シフト」
シュナイダーエレクトリックによると、AI向けITインフラの拡大に伴い、世界のデータセンターでは主に3つの変化が起きている。
1つ目は「高密度化」だ。日本やシンガポールといったアジアの主要データセンター拠点では、AI関連ワークロード(アプリケーションやプロセス)向けラックの高密度化が進んでいる。上述の通り1ラック当たり100キロワット超の運用例もあり、ITインフラの刷新が急務になっている。
2つ目は「冷却の効率化」だ。シュナイダーエレクトリックはオーストラリアなどの事例を基に、空冷から液冷に移行することで、冷却に必要なエネルギーは20〜50%削減できる可能性があると説明する。AIデータセンター向けGPUが生み出す熱負荷への対策としては、GPUなどの半導体チップを直接冷却する「ダイレクト・ツー・チップ」方式の採用が世界的に広がっているという。
3つ目は「持続可能性」だ。生成AIの普及に伴ってデータセンターの電力需要が増加傾向にある中、各国では液冷技術の導入などを通じたエネルギー効率の向上が進んでいる。冷却に使用する水の管理や再利用に取り組む動きもある。地域環境への負荷抑制と、安定したデータセンター運用の両立を目指した動きだ。
日本が直面する「電力の壁」
17カ国のAI向けITインフラおよびエネルギー戦略を比較する中で、日本については100キロワット超の高密度データセンター運用に向けた、ITインフラの刷新が急務だとシュナイダーエレクトリックは分析する。
日本では、AI関連の電力需要が2030年までに945テラワット時に達し、国内の総消費電力を上回る可能性があるという。スペースの限られた都市部のデータセンターにおいては、液冷技術の需要が拡大しているとシュナイダーエレクトリックは指摘する。
シュナイダーエレクトリックが「日本の競争力につながる」と説明するのが、狭いスペースで発熱量の大きい機器を冷やす高密度冷却技術と、デジタル技術を活用した運用管理を組み合わせて、限られたエネルギーを効率的に活用する実装力だ。日本がアジアのAI拠点として存在感を高める上でも、こうした実装力は重要な要素になるという。
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