偽のコンテンツが増加傾向に――Gartnerが考える「2018年以降に企業に待ち受ける展望」とは:音声認識機能は今後伸びるのか
Gartnerは、2018年以降にIT部門やユーザーに対して長期にわたって大きな変化を与えると同社が考える重要な展望を発表した。新たに登場する技術によって変化する未来への知見を提供する。
Gartnerは2017年10月3日、「Gartner Predicts 2018」を発表した。これは、「2018年以降に長期にわたってIT部門やユーザーに対して大きな変化を与える」と同社が考える展望だ。同社はこの展望によって、エンドユーザー企業のCIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)に対し、新たに登場する技術で変化する未来への知見を提供するとしている。
Gartner Predicts 2018の戦略的展望トップ10は以下の通り。
Gartner Predicts 2018の戦略的展望トップ10
- 2021年までに、ビジュアル検索/音声検索に対応できるようWebサイトを再設計した早期採用企業は、デジタルコマースにおいて30%の売り上げ増を達成する
- 2020年までに、デジタルの巨大企業トップ7社のうち5社は「自己破壊」を意図的に推進し、リーダーシップを発揮する次なる機会を創出する
- 2020年末までに、銀行業界はブロックチェーンに基づく暗号通貨を使用して10億ドルのビジネス価値を得る
- 2022年までに、成熟した経済諸国の大多数の国民は、正しい情報より誤った情報を多く利用するようになる
- 2020年末までに、AI(人工知能)主導で「偽りの現実」(偽のコンテンツ)を作成するペースが、それを検知するAIの能力を上回り、デジタル化への不信感が高まる
- 2021年までに、50%超の企業では、botとチャットbotの開発にかける年間支出が、従来のモバイルアプリ開発支出を上回る
- 2021年までに、ITスタッフの40%は複数の役割を担う「バーサタイリスト」になり、その役割の大半は、テクノロジーよりもビジネスに関わるものとなる
- 2020年、AIは新規職業を生み出す明確な要素となる。AIによって消える仕事が180万件であるのに対して、新たな仕事が230万件創出される
- 2020年までに、IoT(Internet of Things)テクノロジーは、新たなエレクトロニクス製品の95%に実装される
- 2022年末までに、IoT向けのセキュリティ予算の半分は、セキュリティ保護ではなく、障害修復、リコール、安全上の不備への対応に費やされる
そのうちのトップ3を紹介する。
2021年までに、ビジュアル検索/音声検索に対応できるようWebサイトを再設計した早期採用企業は、デジタルコマースにおいて30%の売り上げ増を達成する
Gartnerは、Amazon EchoやGoogle Homeといった音声認識機能を備えた機器への消費者需要は、2021年までに35億ドルを創出すると見込む。こうした機器を利用して、手を使わずにシステムを活用する手法を開発できるブランドは、デジタルコマースの売り上げを高められるという。
ビジュアルや音声による検索を早期採用した企業は、こうした検索方式とスマートフォンから入手できるコンテキスト情報を組み合わせることで、コンバージョン率や売り上げ、新規顧客獲得、市場シェア、顧客満足度の点で評価され、競争優位性を獲得するだろうとGartnerは予測している。
2020年までに、デジタルの巨大企業トップ7社のうち5社は「自己破壊」を意図的に推進し、リーダーシップを発揮する次なる機会を創出する
Gartnerは、AlibabaやAmazon.com、Apple、Baidu、Facebook、Google、Microsoft、Tencentといったデジタル分野の大企業の影響力が大きくなり過ぎてしまい、企業が新たに活動するとき、新しい価値のシナリオの創出が難しい状況になるとしている。そしてこれが最終的に自己破壊につながるという。他社に先んじるために意図的に自社を破壊する自己破壊戦略にはリスクが伴うが、何もしないリスクの方が高いこともあり得るとしている。
2020年末までに、銀行業界はブロックチェーンに基づく暗号通貨を使用して10億ドルのビジネス価値を得る
現在世界で流通している暗号通貨の総額は1550億ドルで、今後も増加し続けるという。暗号通貨は、それを支える技術基盤やビジネス基盤よりも成熟している。Gartnerは、銀行が暗号通貨とデジタル資産を、従来の金融商品と同様に捉えるようになると、より分散されたビジネス価値が生じ始めると予測する。
そのためには、全ての業界が商品とサービスの価格設定や会計、課税方法、決済システム、リスク管理機能といった現在の法定通貨に基づくビジネスモデルを見直して、新たな形態の価値を事業戦略に取り込む必要があると指摘する。
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