AWSの支配が揺らぎ、“新興勢”が躍進――クラウドは「専門性で選ぶ」時代?:AI時代のネオクラウドとは
クラウドインフラサービス市場で、「ネオクラウド」と呼ばれる新興事業者の存在感が高まっています。その一方で、AWSのシェアが下落傾向にあり、ハイパースケーラーが圧倒的な影響力を持ってきた構図に変化の兆しが見えています。
クラウドサービス市場に変化の兆しがあります。長年、IaaS(Infrastructure as a Service)市場のトップを走ってきたAmazon Web Services(AWS)のシェアが低下しています。AWSと共に“メガクラウド”の一つに挙げられるMicrosoftやGoogleのクラウドサービスのシェアも伸びていますが、勢力を増しているのはそうした大手だけではありません。
クラウド市場に現れた「ネオクラウド」とは
調査会社Synergy Research Groupが公表した、2025年第3四半期(2025年7〜9月)の世界のクラウドインフラサービス市場(IaaS、PaaS〈Platform as a Service〉、ホステッドプライベートクラウドを含む)の調査結果によると、AWSは首位を維持しつつも、そのシェアは徐々に低下しています。その一方で目立っているのが、「ネオクラウド」と呼ばれる新興勢力の躍進です。
特定用途に特化した「ネオクラウド」と呼ばれる新興勢力が急速に存在感を高めています。その背景には、生成AI(人工知能)の普及に伴うインフラ需要の変化があると考えられます。
ベンダー別のシェアでは、AWSが30%を割り込み29%となっています。Microsoftは20%、Googleが13%といずれもシェアを伸ばしており、依然として大手の影響力が強いことは確かですが、新興勢力のシェア拡大が顕著になっています。
ネオクラウドの代表格であるCoreWeaveやLambda Labsは、AI技術向けのGPU(グラフィックス処理装置)による計算に特化したインフラを提供する事業者です。汎用(はんよう)的なクラウドサービスを展開するハイパースケーラー(大規模データセンターを運営する事業者)とは異なり、GPUリソースの大量調達と高速提供に経営資源を集中させている点が特徴となっています。
ネオクラウドへの追い風
ネオクラウドの成長を後押ししているのが、生成AIの急拡大に伴うGPU需要の爆発的増加です。McKinsey & Companyによる分析では、GPU供給の逼迫(ひっぱく)が市場全体のボトルネックとなっていると指摘されています。
AWSやMicrosoft、Googleといったハイパースケーラーは、先端半導体の調達力で優位に立つ一方で、多くのAIスタートアップや企業が十分なGPUを確保することが難しくなりました。こうした需要と供給のギャップを埋めるために登場したのがネオクラウドです。
ネオクラウドは、AI向けの用途に特化したインフラを構築し、GPUの計算リソースを大量かつ迅速に提供することに専念しています。その結果として、AWSのようなハイパースケーラーよりも大幅に低コストでサービスを提供できるようにしています。
ネオクラウドの今後は?
今後も、ネオクラウドはクラウドインフラ市場に影響を与え続けることができるのでしょうか。ネオクラウドが競争力を維持するには幾つかのハードルを乗り越える必要があります。McKinsey & Companyは、多くのネオクラウドが立脚しているBMaaS(Bare Metal as a Service)モデルは、差別化の方法が限られており、価格競争にさらされるため、コモディティ化しやすいと分析しています。
半導体製品のリリースサイクルによる価格への下降圧力も考えられます。半導体新製品が登場するたびに、古いGPUの価格は下落します。事業者は減価償却期間中に利用コストの大幅な減額を経験する可能性があります。競争力を維持するために、新世代GPUに継続的に再投資する必要も出てきます。
こうした課題を踏まえ、ネオクラウド各社はGPUリソースの提供にとどまらず、AIモデルの学習管理やワークロード最適化、分散処理を支援するソフトウェア層の強化に動くことも予測されます。
今後、ハードウェア特化型インフラと専用ソフトウェアを組み合わせることで、単なる計算資源供給から総合的なAIインフラプラットフォームへ進化を目指す企業の登場が期待されます。
ネオクラウドの台頭が示す今後の展望
ネオクラウドの成長は、クラウド市場が汎用型インフラ中心の構造から、用途特化型インフラへと多様化しつつあることを示しています。AWSをはじめとするハイパースケーラーが引き続き市場の中核を担う一方で、AIや高性能計算といった特定分野では、専門特化型事業者が重要な役割を果たす構図が広がりつつあるのです。
ユーザー企業にとっては、単一のクラウドサービスに依存するのではなく、用途に応じて最適なインフラを組み合わせるマルチクラウド戦略を採用することが、合理的な判断になる可能性があります。ネオクラウドの台頭は、クラウド市場の競争軸が「規模」から「専門性」へと変化しつつあることを象徴する動きと見ることができます。
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