製造現場からスマート家電まで、セキュリティ対策は必須――IDC Japanが「国内IoTセキュリティ製品市場予測」を発表:「WannaCry」事件でIoT機器への脅威が現実的に
IDC Japanは、国内IoTセキュリティ製品市場の2017〜2021年の予測を発表した。2016年の市場規模は、2015年比27.5%増の518億円。2021年には、1250億円規模まで成長すると予測する。
IDC Japanは2017年11月6日、国内IoT(Internet of Things)(注)セキュリティ製品市場の2017〜2021年の予測を発表した。2016年の市場規模は、2015年から27.5%増の518億円。同社は、2016〜2021年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)を19.3%と見込み、2021年の市場規模は1250億円になると予測した。
※注:IDCは、IoTを「IP接続による通信を、人の介在なしにローカルまたはグローバルに行うことができる識別可能なエッジデバイスからなるネットワークであり、法人/政府/個人といったさまざまなユーザーが利用するユビキタスなネットワーク環境に対して、管理/監視/分析といった多様な付加価値を提供するものである」と定義している。
人々がIoT機器や制御システムを狙ったサイバー攻撃を「現実的な脅威」として認識するきっかけを作ったのが、2017年5月に全世界で猛威を振るったランサムウェア「WannaCry」だ。WannaCryは、Windowsの脆弱(ぜいじゃく)性を突き、医療機器や自動車工場などのシステムにも被害を及ぼした。以来、IoT環境向けサイバーセキュリティ製品へのニーズは高まり、IDCは、こうした製品の導入が今後進展すると見ている。
IDCは、IoTセキュリティ製品市場を、「ハードウェア製品」と「ソフトウェア製品」の2つの製品セグメントに分類。ハードウェア製品は、セキュリティアプライアンス製品の他、センサー/モジュールやサーバ、ストレージなどに組み込むセキュリティハードウェアモジュールなどを含む。
IoTセキュリティ製品のうち、ハードウェア製品の2016年市場規模は144億円で、2016〜2021年のCAGRは15.1%の見込み。2021年の市場規模は2016年の2倍に当たる291億円に拡大するとIDCでは予測する。一方、ソフトウェア製品は、2016年の市場規模が374億円で、2016〜2021年のCAGRが20.7%。2021年の市場規模は2016年の2.6倍に当たる960億円に成長する見込みだ。
現在、IoTの用途として最も多いのは、「製造機械の稼働状況の把握」や「遠隔制御」などだ。IoTセキュリティ製品の導入状況でも、製造工場内ネットワークや遠隔制御用ネットワークなどに向けたネットワークセキュリティアプライアンス製品が他の製品に先行している。同様の用途には、センサー機器やセンサーモジュールも多く投入されている。IDCは、「今後、センサーやセンサーモジュールに組み込むセキュリティハードウェアモジュールの導入が進む」と見ている。
一方、IDCは、ソフトウェア製品について、「あらゆる産業で投資が加速する」と予測する。製造や資源などの分野では、IoTの利用環境としてクラウドを導入する動きが2019年まで進む見込みだ。2019年以降には、個人消費者やクロスインダストリー向けに、スマート家電やパーソナルロボットなどのIoT機器を制御するためのアプリケーションソフトウェアへの需要も高まると予測される。
IDC Japanでソフトウェア&セキュリティのリサーチマネジャーを務める登坂恒夫氏は、「IoTセキュリティ製品ベンダーは、セキュリティ業界内でのパートナーエコシステムを構築するばかりでなく、IoTセンサーやデバイス、IoTプラットフォームなどのベンダーとセキュリティ業界を超えたパートナーエコシステムを構築すべきである。それによって、シームレスなIoTソリューションと強固なセキュリティソリューションの提供が行える」と述べている。
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