“AIチャットbot”が県民の救急医療相談に対応――埼玉県、NEC開発の「AI救急相談自動応答システム」を2019年7月に開始
埼玉県がAI活用のチャットbotによる「AI救急相談自動応答システム」を2019年7月に本格稼働させる。NECが開発に着手した。文章表現が違っても文意を的確に捉えられるNECのAI技術を活用。急な病気やケガの際の対処方法や医療機関などについて、スマホなどからチャット形式で相談できるようになる。
NECは2018年9月21日、埼玉県からAI(人工知能)を活用したチャットbot(自動応答ソフトウェア)による「AI救急相談自動応答システム」を受注したと発表した。県民の急な病気やケガによる救急相談の利便性向上と、適正受診の推進による救急医療機関の負荷軽減に向けて、2019年7月からの本格稼働を予定している。
埼玉県では、救急医療体制の充実を目指し、急な病気やケガの際に家庭での対処方法や医療機関への受診の必要性について看護師が電話で相談に応じる「埼玉県救急電話相談」を実施。現在は24時間365日体制で相談を受け付けており、その相談件数は年間約15万件に及ぶという。
今回導入するAI救急相談自動応答システムは、スマートフォンやPCなどからいつでも相談できる、チャット形式による救急相談の自動応答サービスを提供する。
NECのAI技術「テキスト含意認識技術」を活用したチャットbotシステム「NEC 自動応答」を用いて構築。テキスト含意認識技術は、単語の重要性や文の構造から2つの文が同じ意味を含むかどうかを高精度に判定する。表現が異なっても意味が同じものや、似た表現で異なる意味のものでも、正しく分析できるという。
専用チャットbotは、埼玉県のWebサイトなどで公開する予定。相談者がチャットbotの画面に入力した救急相談の文章を自動的に分析して、症状別のデータベースから適切な対処方法や緊急度などを判定し、高精度かつ高速に回答する。
さらに、的確な応答機能を実現するため、全国の救急電話相談対応サービスなどで実績とノウハウを持つダイヤル・サービスと連携。同社のノウハウを生かした高品質な対話シナリオを作成し、実装する。リアルな救急相談事例に基づいた自動応答チャット相談が可能になるという。
同システムの導入により、埼玉県では県民に「手軽につながる救急相談」が可能なサービスを提供するとともに、救急電話相談員の応対業務の負荷軽減も期待できるとしている。
また、NECでは、将来的に音声入力や外国語対応も支援し、同システムの強化を図っていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- インフルエンザを診断するAI、ディープラーニングで実現へ 医療機器ベンチャー「アイリス」の挑戦
タイミングの制限があり、精度もそこまで高くはないインフルエンザの初期診断。これをディープラーニングで支援できないか、と挑むベンチャー企業がある。 - AI活用で臨床試験を効率化 新薬開発の時短や成功率向上を支援――田辺三菱製薬と日立が協業
田辺三菱製薬と日立製作所が、新薬開発における臨床試験全般の幅広い業務の効率化に向けた協業を開始。日立のIoTプラットフォーム「Lumada」やAI技術などを活用して、臨床試験の期間短縮と開発コスト削減、新薬開発の成功確率向上を目指す。 - AIやIoTを使った“未来の医療”への近道? MSが掲げる「病院がクラウド化するメリット」とは
日本マイクロソフトは、医療や製薬などのヘルスケア分野に特化した新しいクラウド推進策として、「働き方改革支援」「先端技術との連携」「コンプライアンスおよびセキュリティ」の3点を強化した戦略を打ち出した。同社が掲げる“医療現場にとってのクラウド化のメリット”とは、一体何なのか。 - IoTとLPWAネットワークで患者のバイタルサインを収集 最適な医療を提供――名大病院、シスコが実証研究へ
ICTの活用による医療サービスの向上を目指して「スマートホスピタル構想」を進める名古屋大学医学部附属病院(名大病院)は、シスコシステムズと共同でIoTデバイスとLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークを活用した、医療現場のIoT化に関する実証研究を開始した。 - あなたたちは、本当に「AI開発プロジェクト」をやる気があるのか?
データもない、分析技術もない、開発するエンジニアもいない――。AIを開発しようという企業には「3つのカベ」が立ちはだかるといわれていますが、それよりももっと根本的な「当事者意識」の問題があるのを知っていますか?