Azureとの連携が強化された「Windows Admin Center 1809」:Microsoft Azure最新機能フォローアップ(62)
本連載第48回に紹介した最初のバージョン「Windows Admin Center 1804」は、その後、何度かのInsider Previewリリースを経て、「Windows Admin Center 1809」として2018年9月20日(米国時間)に一般提供が開始されました。新バージョンの強化点を紹介します。
Windows Server 2019をフルサポートするWindows Admin Center 1809が完成
本連載第48回で紹介したように「Windows Admin Center」は、Windows Server Semi-Annual Channel(SAC、半期チャネル)や、間もなく完成し、2018年10月に一般提供が開始される予定の長期サービスチャネル(LTSC)の「Windows Server 2019」に最適化された、HTML5ベースの軽量なサーバ管理ツールです。
Windows Server 2019が正式リリースされるのを待たずに、Windows Server 2019を完全にサポートする新バージョン「Windows Admin Center 1809」が一般向けにリリースされました。
- Windows Admin Center 1809 and SDK now generally available![英語](Windows Server Blog)
Windows Admin Center 1809は、Windows 10 バージョン1709以降またはWindows Server 2016以降にインストールできます。Windows 10の場合は「デスクトップモード」でインストールされ、ローカルのWebブラウザを使用して、ローカルコンピュータとリモートのWindows 10/Windows Server 2008 R2以降のサーバを管理できます。
Windows Server 2016以降(Server Coreを含む)の場合は「ゲートウェイモード」でインストールされ、リモートコンピュータのWebブラウザからゲートウェイに接続して使用します。利用できるWebブラウザは、「Microsoft Edge」「Google Chrome」「Mozilla Firefox」(Firefoxの使用はテストされていません)です。
Windows Admin Centerは、Windows 10コンピュータのローカルおよびリモート管理に対応した「コンピューターの管理」、Windows Server 2008 R2以降のサーバ管理に対応した「サーバーマネージャー」、Windows Server 2012以降の「フェールオーバークラスター」の管理に対応した「フェールオーバークラスターマネージャー」、記憶域スペースダイレクト(S2D)が構成されたWindows Server 2016以降のフェールオーバークラスターとネットワークコントローラーの管理に対応した「ハイパーコンバージドクラスターマネージャー」で構成されます(画面1)。
画面1 Windows Admin Center 1809のトップページ。Windows 10、Windows Server 2008 R2以降のサーバ、フェールオーバークラスター、Windows Server 2016以降のハイパーコンバージド構成のクラスタ管理が可能
Windows Admin Centerを使用すると、オンプレミスのネットワーク上のWindows 10コンピュータとWindows Serverを管理できます。さらに、パブリックIPとポートの許可設定を適切に行うことで、Microsoft Azure上のWindows仮想マシンをオンプレミスのWindows Admin Centerで直接管理できるようになります。
Windows Admin Center 1809は、間もなく完成するとみられるWindows Server 2019に最適化されており、Windows Server 2019に実装される新機能に対応しています。例えば、Windows Server 2019にはSMB(Server Message Block)共有間のファイル一括移行が可能な新機能「Storage Migration Service」が追加されていますが、この機能はWindows Admin Center 1809の「サーバーマネージャー」の「記憶域の移行サービス」を利用して、GUIで直感的に実行できます(画面2)。
画面2 Windows Server 2019の新機能「Storage Migration Service」をWindows Admin CenterのGUIからインストールでき、移行作業もGUIで完結できる
Microsoft Azureとの連携をさらに強化
Windows Admin Centerは、Azureとの統合(Azureインテグレーション)を構成することで、Azureの各種サービスを簡単にセットアップできるようになります。
Windows Admin Center 1809では、「Azure Active Directory」のID認証によるWindows Admin Centerアプリケーションへの接続許可やロールベースのアクセス制御の他、「Azure Site Recovery」サービスを使用したHyper-V仮想マシンのAzureへのレプリケーション保護の構成(画面3)、「Azure Backup」サービスを使用したクラウドへのスケジュールバックアップ(画面4)、「Azure Update Management」サービスを使用したWindows Serverの更新管理(画面5)、Azure仮想ネットワークとのポイント対サイトVPN(Point-To-Site VPN)接続(画面6)のセットアップが簡素化されます。
画面6 「Azureネットワークアダプターの追加」は、Azure仮想ネットワークとのポイント対サイトVPN接続のセットアップをWindows Admin Centerだけで実行できる。この機能も現時点ではプレビュー機能
Azure Site RecoveryサービスについてはWindows Admin Center 1804から利用できましたが、大幅に簡素化されています(以前はPowerShellスクリプトの実行が必要でした)。Azure Backup、Azure Update Management、ポイント対サイトVPN接続の簡易セットアップ機能は、Windows Admin Center 1809からの新機能です。
なお、筆者の環境では、Windows Admin Center 1804では利用できていたHTML5ベースのリモートデスクトップ接続クライアントである「リモートデスクトップ」機能が、Windows Admin Center 1809(およびそれ以前のプレビュー版)で期待通りに動作しませんでした。筆者の環境固有の問題なのか、Windows Admin Center 1809の問題なのかは現時点では確認できていません。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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