MMCを置き換えるサーバ管理ツール、「Windows Admin Center」が正式リリース:Microsoft Azure最新機能フォローアップ(48)
開発コード名「Project "Honolulu"」として開発され、テクニカルプレビューが提供されてきた新しいWindows管理ツールが「Windows Admin Center」として正式に公開されました。
全く新しい、オールインワンのオンプレミス向けサーバ管理ツール
「Windows Admin Center」は、Windows Server Semi-Annual Channel(SAC、半期チャネル)や2018年後半にリリース予定の「Windows Server 2019」に最適化された、軽量なブラウザベースのサーバ管理ツールです(画面1)。
このサーバ管理ツールは開発コード名「Project "Honolulu"」として開発が進められ、2017年10月のWindows Server SACの最初のリリースである「Windows Server バージョン1709」と同時に、最初のテクニカルプレビュー(バージョン1709)が提供されました。以降、数度のテクニカルプレビューを経て、Windows Admin Centerという正式名称でバージョン1804の一般提供が開始されました。ただし、これで完成ではなく、今後も機能強化や新機能が追加されていく予定です。
これまで、Windows Serverの管理ツールといえば、デスクトップエクスペリエンス(旧称、GUI使用サーバー)としてインストールされたWindows Serverの「サーバーマネージャー」や、管理の種類や役割に応じて用意されている「Microsoft管理コンソール(MMC)」スナップインベースのGUI管理ツール、Windowsクライアントにインストールする「リモートサーバー管理ツール(Remote Server Administration Tools:RSAT)」がありました。
また、大規模環境向けにはSystem Center製品やクラウドベースの「Microsoft Intune」「Microsoft Operations Management Suite(OMS)」が用意されています。Windows Admin Centerは、その中間に位置するものと考えると分かりやすいでしょう。1台のサーバ管理にも使用できますし、オンプレミスやクラウド上のサーバ群を管理することもできます。
Windows Admin Centerは、サーバーマネージャーや標準のGUI管理ツールを完全に置き換えるものではありません(従来の管理ツールも引き続き提供されます)。機能的には、サーバーマネージャーとGUI管理ツール、コントロールパネルアプレットを1つのコンソールに統合したイメージです。
従来のように、管理ツールを使い分ける必要はなく、一貫性のあるWebベースのユーザーインタフェース(UI)を使用して、従来と同様の管理操作ができます。
例えば、「サービス」「イベントビューアー」「コンピューターの管理」「セキュリティが強化されたWindowsファイアウォール」「証明書」スナップインといったMMC管理ツール、エクスプローラーの機能の一部(ディレクトリとファイルの検索)、「レジストリエディター(regedit.exe)」の機能、サーバーマネージャーの「ファイルサービスと記憶域サービス」コンソール相当のディスク、ボリューム、共有、記憶域スペースの管理、サーバーマネージャーの「役割と機能の追加/削除」ウィザードの機能、「Hyper-Vマネージャー」相当の仮想マシンの管理を、ツールを使い分けることなく、1つのコンソール上で操作できます。また、リモートデスクトップ接続(Mstsc.exeクライアントを使用しないブラウザのみでの接続)や、Windows Updateによる更新プログラムの確認とインストール、再起動のスケジュールといった機能も備えています(画面2、画面3)。
Windows 10に簡単にローカルインストールして、すぐに管理を開始できる
Windows Admin Centerは、Windows 10に簡単にローカルインストールすることができる、Webベースの管理ツールであり、現状、「Microsoft Edge」と「Google Chrome」から利用できます。管理対象に資格情報を指定して直接リモート接続して管理することもできますし、1台のWindows Server 2016にインストールし、これをゲートウェイとして企業内ネットワーク全体のサーバ群や、Microsoft AzureのIaaSに展開されたサーバ群を管理することもできます。
Windows Admin Centerと管理対象との通信にはWinRM(Windows Remote Management)やRDP(Remote Desktop Protocol)が使用され、ブラウザとゲートウェイの間の通信にはHTTPS(既定のポートは6516、変更可能)だけが使用されます。
Windows Admin Centerは「Server Core」でのみ提供されるWindows Server SACや、2018年後半にリリース予定のWindows Server 2019の管理に最適化されていますが、Windows Server 2012以降およびWindows 10の管理にも対応しています。
また、Windows Serverの「フェールオーバークラスター」や「ハイパーコンバージドクラスター」の管理にも対応しています。ハイパーコンバージドクラスターは、Hyper-Vやフェールオーバークラスター、ソフトウェア定義のネットワーク(SDN)、ストレージ(記憶域スペースダイレクトなど)、データセンターブリッジングなど、Windows Server 2016が備える機能だけで構築されたハイパーコンバージドインフラ(HCI)アプライアンスのことです。
Microsoft Azureとの統合を見据えた拡張性
Windows Admin Centerではオンプレミスのサーバはもちろん、Microsoft AzureのIaaSなど、クラウド上に展開したサーバの管理も可能ですが、Microsoft Azureの各種サービスとの統合も予定されています。
現状では、Azure Active Directory(Azure AD)によるゲートウェイのアクセス制御、Azure Recovery ServicesのAzure BackupとAzure Site Recoveryとの連携機能を利用できるようです。その他のサービスとの連携も、今後、Windows Admin Centerの拡張機能として、または新しいバージョンで、Microsoft Azureのさまざまなサービスへの対応や移行ソリューションが追加されていくことになるでしょう(画面4、画面5)。
Windows Admin Centerの詳細と入手方法(無料)については、以下の公式ドキュメントをご覧ください。
- Windows Admin Center(formerly Project Honolulu)[英語](Windows IT Pro Center)
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ビジネスとITの“つながり”をさらに深く――日本マイクロソフト・平野社長
2017年は「お客さまのデジタルトランスフォーメーションの推進」を掲げ、ビジネスを展開してきた日本マイクロソフト。2018年はどう臨み、何をつなげていくのか。同社の代表取締役社長 平野拓也氏に話を伺った。 - 今度はWindows 7のWindows Updateでトラブル──でも、解決策はあります!
2017年12月4日ごろから、Windows 7で「Windows Update」を実行できないというトラブルに遭遇しているユーザーが少なからずいるようです。Microsoftによる公式なアナウンスや回避策は今のところないようですが、取り急ぎ、問題を解消できる可能性がある方法を紹介します。 - 年の初めに再確認、2018年にサポートが終了するMicrosoft製品は?
Microsoftは同社の製品およびサービスについて、明確なサポートポリシー(ただし、途中で変更あり)に基づき、更新プログラムを含むサポートを提供しています。2018年は主に10年前にリリースされた製品がサポート終了を迎えます。どのような製品があるのか、年の初めに再確認し、使用していないかどうかを調べておきましょう。 - 緊急パッチだけではプロセッサ脆弱性対策は不十分――Spectre&Meltdown対策状況を再チェック
2018年早々、プロセッサに影響する脆弱性が公表されました。そして、Microsoftは1月の定例日(1月10日)を待たずにこの脆弱性を軽減する緊急のセキュリティパッチを含む更新プログラムの提供を開始しました。この緊急パッチをインストールしたことで安心してはいませんか。今回の問題は、OSのパッチだけでは不十分です。