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Gartner、2019年以降の「戦略的展望」トップ10を発表AIとプライバシー、SNS、クラウドの動向を視野に

Gartnerは、IT部門やユーザーにとって重要な意味を持つと同社が考える2019年以降、2023年までの「戦略的展望」トップ10を発表した。企業内のAI利用は今後もなかなか進まないが、社会に与えるAIの影響は大きいという。プライバシー情報をより入念に扱わなければならなくなり、企業活動に与える影響が大きくなるとした。

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 Gartnerは2018年10月16日(米国時間)、2019年以降、2023年までの「戦略的展望」トップ10を発表した。IT部門やユーザーにとって重要な意味を持つリストだという。

 戦略的展望では継続的なデジタルイノベーションによる3つの基本的な効果を検討した。1つ目は人工知能(AI)とAIを扱うスキル、2つ目は組織文化の進歩、3つ目はプロセスだ。ここでいうプロセスとはデジタルイノベーションによって、プロセス自体が製品として流通するものをいう。


組織文化が企業活動に与える影響は大きい(出典:Gartner

 戦略的展望のトップ10の概要は次の通り。

AI人材の不足が続く

 2020年まで、AIプロジェクトの80%は、企業内で「魔術師がこなす錬金術」のような位置付けにとどまる。AIの専門家が増え、組織内の幅広い部署に配置されることは望み薄である。

 AI分野で求められる幅広い専門的人材は今後も不足し、AIプロジェクトは、そうした少数の人材の属人的なノウハウに頼って行われるケースがこれからも多い。

AIの画像認識技術が社会を変える

 2023年には、AIの顔認識技術のおかげで、行方不明者の数が2018年と比べて80%減少するだろう。

 顔認識技術については確実性の高い画像撮影や画像ライブラリ開発、画像解析技術、社会からの受容が高まるという点で、重要な進展があるだろう。また、カメラ内蔵のエッジAI機能を用いることで、政府や民間部門が撮影動画を全てクラウドにアップロードして処理するのではなく、アップロードする必要がある画像データだけをフィルタリングできるようになる。

仮想医療の導入が医療コストを低減

 2023年までに、慢性疾患患者に対するAIベースの仮想医療が拡大し、米国の救急部門の出動が2000万件減少する。

 Gartnerの調査によれば、仮想医療の導入が成功すれば、コスト管理に役立ち、医療提供の質や医療へのアクセスも改善されることを示している。

企業におけるSNSの利用制限はうまくいかない

 2023年までに、25%の組織が従業員や職員に、ネット上での嫌がらせを行わないという誓約書への署名を求めるようになる。企業の社会的な評判を落とさないための措置だ。だが、こうした取り組みの70%は失敗する。

 雇用主は、組織の評判に悪影響を与える行為を防ぐため、従業員や職員のソーシャルメディア利用時の行動ガイドラインを強化しようとしている。最も有効なのは組織文化自体を変えることだという。

文化の多様性がビジネスを成功に導く

 2022年までに、性別や人種といったダイバーシティ(多様性)と多様性を認めるインクルーシブネス(包括性)の文化を反映した意思決定チームを現場に置く組織の75%が、財務目標を達成する。

 ビジネスリーダーは、多様性と包括性(D&I)がビジネスにプラスの影響を持つことを理解するようになっている。現在の重要なビジネス課題は、組織のできるだけ下位のレベルまで、D&Iを考慮したより良い意思決定が迅速に行われるようにすることだ。

ブロックチェーンにプライバシー情報が紛れ込むと対応が困難に

 2021年までに、パブリックブロックチェーンの75%で“プライバシーポイズニング”が発生する。

 プライバシーポイズニングは、個人データが入り込むことで、ブロックチェーンがプライバシー法違反となることを指す。プライバシーポイズニングが発生したパブリックブロックチェーンは、置き換えることも、匿名化することも、共有台帳から構造的に削除することもできない。パブリックブロックチェーンを使用する組織は、ブロックチェーン全体のコピーを維持しなければならない。

クッキーの利用が難しくなり、オンラインでのプライバシーコストが増加

 2023年までに、eプライバシー規制の影響で、オンラインコストが増加する。クッキーの利用が最小限に抑えられ、企業がこれまでインターネット広告収入を得るために使用してきた枠組みが損なわれるからだ。個人向けにカスタマイズされた広告を全面禁止する流れが生まれている。

 2018年5月に施行された欧州連合(EU)の「一般データ保護規則(GDPR)」や、今後施行される「California Consumer Privacy Act of 2018」(2018年カリフォルニア消費者プライバシー法)がきっかけだ。これらの法律は企業に対し、クッキーの利用を制限し、消費者から個人データの利用に関する承諾を得る方法についての見直しを迫っている。

クラウド利用により、社内向けIT機能を外販できるように

 2022年までに、クラウドの経済性や柔軟性を利用して、社内向けに開発されたIT機能の外販が活発に行われるようになる。

 これまで外販を妨げていた種々の制約を、クラウドインフラとクラウドサービスプロバイダーが解消する。アプリケーションのスケーラビリティがクラウドで確保できるようになり、主要なアプリストアの流通やマーケティング機能も利用できる。さらにアプリケーションを商品としてサポートし、改良することも、クラウドツールを使って容易に行えるようになってきた。

GAFAと中国企業のエコシステムが幅広く利用される

 2022年までに、巨大デジタル企業の“ゲートキーパー(門番)”の地位を利用する企業が、各業種の世界市場シェアの平均40%を獲得する。

 世界市場で大きなシェアを獲得、維持するには、GoogleやApple、Facebook、Amazon、中国Baidu、中国Alibaba、中国Tencentといった巨大デジタル企業のエコシステムの活用が重要になる。

SNSの炎上はもはや問題にならなくなる

 2021年までに、ソーシャルメディアの不祥事やセキュリティ侵害が起こったとしても、消費者への持続的な影響は実質的になくなる。

 消費者にとってデジタル技術を使用するメリットは、潜在的に存在する将来の未知のリスクを上回っているからだ。

 消費者にとってデジタルサービスの選択肢は少なく、競争もない。他のユーザーが利用しているから自分も利用するという「ネットワーク効果」は非常に強力だ。消費者によるデジタル技術の利用は今後も拡大し、技術の使い方に問題がある企業への反発は、短期間にとどまる見通しだ。

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