アクセス制御やデータ保護機能にニーズ、ノークリサーチが文書管理とストレージサービスを調査:クラウドの拡大に変調あり
ノークリサーチは中堅中小企業を対象に、文書管理とオンラインストレージサービスに関する市場動向の調査結果を発表した。アクセス制御やデータ保護へのニーズが高まっていることが分かった。
ノークリサーチは2018年10月26日、年商500億円未満の中堅中小企業1300社を対象に「2018年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」を作成、文書管理とオンラインストレージサービスの市場動向の調査結果を発表した。
今回は、「オンプレミスが減少し、クラウドが増加する」という過去数年間の傾向とは異なる結果が得られたという。既存システムとの連携は2017年並みながら、アクセス制御やデータ保護へのニーズが高まっていることが分かった。
まず、中堅中小企業が導入済みの文書管理やオンラインストレージサービスのベンダー別シェアを2017年と2018年で比較した。オンプレミスを主体とした文書管理が減少し、ASP(Application Service Provider)/SaaS(Software as a Service)形態のオンラインストレージサービスが増加するといった直近の数年に見られた傾向とは明らかに異なる。
例えば、文書管理に分類される富士ゼロックスの「DocuWorks」はシェアを維持しているのに対して、オンラインストレージサービスに分類されるDropboxの「Dropbox Business」はシェアを落とした。また、グループウェアの文書管理機能を利用している企業数が減少する一方で、独自開発(完全なスクラッチ開発)したシステムを利用している企業が増えた。
ユーザーサポートや価格が優位性となる?
次に、文書管理やオンラインストレージサービスの導入背景とシェアとの関係を調べた。すると、2017年から2018年にかけシェアを維持した文書管理やオンラインストレージサービスについて、一貫した傾向は見られなかった。
例えば、DocuWorksは、「機能がニーズに合致している」と「販売元(販社やSIer)の保守/サポートが優れている」の割合が全体の平均よりも高く、「価格がニーズに合致している」の割合が全体の平均よりも低かった。それに対して日本マイクロソフトの「Office 365」や「SharePoint Online」は、「機能がニーズに合致している」の割合が全体の平均と比べて低く、「価格がニーズに合致している」の割合が高かった。ノークリサーチでは、DocuWorksを例に挙げて、以前から利用しているユーザー企業にとっては、サポートが優れている点が安心感につながっていると分析している。
次に、導入済みの文書管理やオンラインストレージサービスについて、「今後持つべき機能や特徴」を尋ねた。例えば、グループウェアなど既存の情報系システムと連携できることや、ERP(Enterprise Resources Planning)、会計、販売など既存の基幹系システムと連携できること、取引先や顧客に一時的なアクセスを提示できること、フォルダやファイル単位で共有できることなどを想定した。
これらの想定について2017年の調査結果と比較すると、既存のシステムとの連携機能が必要だと回答した割合に大きな変化は見られなかった。それに対してフォルダやファイル単位での共有機能や、ファイルの持ち出しや印刷を禁止する機能のように、アクセス制御やデータ保護に対するニーズが、2017年よりも2018年は高かった。
ノークリサーチでは、今後はシステム連携に加えてアクセス制御やデータ保護が、文書管理やオンラインストレージサービスにとって差別化要因となる可能性があるとしている。
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