システム開発時のトラブル経験は4割、GVA TECHが調査:3割が契約内容を理解していない
GVA TECHの調査によると、多くの企業でシステム開発の受注契約書が専門家の確認を経ていない実態が明らかになった。契約先とのトラブルの原因には、「納期の遅れ」や「成果物の質」「責任の所在」が多く挙がった。
GVA TECHは2018年11月26日、システム開発関連の契約トラブル実態調査の結果を発表した。それによると、多くの企業で専門家による契約書の確認がないという実態が明らかになった。また、自身が関わるプロジェクトの契約内容について「理解していない」と答えた割合は3割を超えた。
まず、システム開発プロジェクトに関する契約先とのトラブルを経験したかどうかについて聞いたところ「10回以上」と回答した割合が8.3%に上った。「5〜10回未満」が5.0%、「2〜5回未満」が19.4%、「1回」が6.1%だった。
次に、システム開発に関する契約先とのトラブルの原因について、最も多かった回答は「納期の遅れ」で28.5%だった。次いで、「成果物の質」が26.9%、「責任の所在」が16.9%だった。
「契約先との契約内容について全てを理解していたか」との問いには、「全く理解していなかった」と回答した割合は13.9%、「あまり理解していなかった」が20.6%だった。つまり、3人に1人は契約内容を理解していなかったことになる。
契約書の確認について、「通常、社外と契約を結ぶ際、社内では契約書を誰が確認しているか」との問いに対して、「自業務の責任者」との回答が最多で39.4%。それに対して「社外の弁護士」は6.7%、「社内の弁護士」は6.4%、「法務部員」は13.9%であり、法務専門家が確認している企業は少なかった。
今回の調査で契約書が専門家によって確認されていない実態が明らかになったことに加え、「納期の遅れ」や「成果物の質」「責任の所在」がトラブル原因の上位に挙がっている。GVA TECHでは、これらのトラブル原因は契約内容が十分に確認されていないことの裏付けと考えられるとしている。
さらに今回の調査では、4割弱が契約締結までに1カ月以上かかると回答しており、契約手続きの長期化がビジネスの遅延やリスクを生み、案件の失注にまで影響するケースがあったことまで分かった。こうしたことから同社では、トラブル回避やトラブル発生時の適切な対処のためにも、契約書確認や内容理解を徹底し、迅速に契約を締結することが重要だとしている。
今回の調査対象はソフトウェアや情報サービスを手掛ける中小企業やベンチャー企業に勤める男女360人。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 作業工数は1075万円分ですが、446万円しか払いません。瑕疵対応は無償でしょう?
定額制の保守契約にもかかわらず、瑕疵対応を理由に支払いを減額され続けた保守ベンダー。準委任と請負の悪いところ取りな契約を、裁判所はどう判断したのだろうか。 - 要件定義も設計もしてもらいましたが、他社に発注します。もちろんお金は払いません!
東京高等裁判所 IT専門委員として数々のIT訴訟に携わってきた細川義洋氏が、IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。今回も正式契約なしに着手した開発の支払いをめぐる裁判を紹介する。ユーザーの要請でエンジニアを常駐して設計まで進めた開発案件、「他社に発注することにした」はアリ? ナシ? - 請負契約(うけおいけいやく)
契約書に書かれている法律用語、トラブル時にIT訴訟で争点となるかもしれない契約の種類。エンジニアなら知っておきたいシステム開発契約にかかわる法律用語を、IT紛争解決の専門家 細川義洋氏が分かりやすく解説します。