エンタープライズアーキテクチャについて、今何が起こっているのか:Gartner Insights Pickup(111)
エンタープライズアーキテクトや技術イノベーションリーダーには、新しい業務モデルの設計と実現が求められようになる。こうした期待に応えるには、今後コラボレーションとAIの活用に力を入れる必要がある。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
デジタルビジネス全体の最適を追求する企業では、IT部門は個々の技術への関与を減らし、技術を活用したビジネスモデルやソリューションへの関与を増やすことになる。同様に、こうした企業では、アーキテクトや技術イノベーションリーダーがビジネス結果への貢献を中心的な役割として求められ、エンタープライズアーキテクチャ(EA)の観点から、新しい業務モデルの設計と実現に取り組むようになる。
「2021年までに企業の40%は、新しい技術によって可能になる新しいビジネスイノベーションを構想するために、エンタープライズアーキテクトを起用するだろう」と、Gartnerのアナリストでバイスプレジデントを務めるマーカス・ブロシュ氏は語る。
「EAおよび技術イノベーションのリーダーは、ビジネスや技術の最新のアイデアを生かして、新しい収益源やサービス、顧客エクスペリエンスを生み出さなければならない」(ブロシュ氏)
ブロシュ氏は、ITリーダーが今後、念頭に置くべきEA分野の顕著な動向について、次のように説明している。
コラボレーティブなEAアプローチ
企業でデジタルトランスフォーメーションが必要になり、ITリソースを利用した実践が進む中、全社的なコラボレーションの必要性が高まっている。EAチームは、今後も比較的小規模にとどまると予想されるため、さまざまな部署間のコラボレーションを組織化することで、価値を付加しなければならない。
実際、Gartnerは、2022年までにデジタル企業の80%が、コラボレーティブなEAアプローチを取ると予想している。ビジネス部門とIT部門がEAの取り組みに参加する他、参加組織がさらに増える可能性もあるという。依然として、EAのツールや技術は非常に貴重だが、エンタープライズアーキテクトの本当の貢献は、コンサルティングやコーチング、メンタリングの能力と、ビジネス成果を促進する能力にある。
社内の経営コンサルティング組織としてのEAチーム
新しいビジネスモデルは、新しい顧客やサービス、エクスペリエンスを生み出す。だが、ビジネスモデルの実行を設計、計画するためのビジネスアーキテクチャがなければ、それは不可能だ。ビジネスアーキテクトは、ビジネス部門と密接に協力する必要があり、そのために、2022年までにビジネスアーキテクトの80%が、ビジネスリーダーに直属する見通しだ。
これに伴い、EAチームは社内の経営コンサルティング組織という位置付けになる。これにより、EAチームではデータ収集に使われる時間が減少し、意思決定のためのデータ活用に使われる時間が増加する。ビジネスアーキテクチャは、将来目指すビジネス機能を実現するのに必要なビルディングブロックを組み合わせ、検証する作業の基準になる。そのため、ビジネスアーキテクトがビジネスリーダーと密接に連携しないと、技術を活用した取り組みに支障が出てしまう。
AI(人工知能)に支えられるEA
EAチームが今後、社内の経営コンサルティング組織のように機能することから、EAチームや技術イノベーションリーダーが使用するツールが、より重要性を増す。AIはプロセスを自動化して、よりスムーズに進むようにし、ビジネス効率を向上させる。Gartnerは、2020年までにAI技術は、ほぼ全ての新しいソフトウェア製品やサービスに組み込まれるようになると予想している。そのため、2022年までにEAプログラムの50%は、計画作成やガバナンス、保証、IT資産管理の面で、AIを活用したソフトウェアに支えられる見通しだ。
EAチームは従来、企業における人やプロセス、情報、技術およびこれら相互の関係に焦点を当てて、将来目指すアーキテクチャについて決定してきた。EAチームと技術イノベーションリーダーは今、企業が、ビジネスエコシステムをサポートする適切なビジネスおよび技術ベースのプラットフォームを選択、構築、実装できるよう支援する、かつてない機会に恵まれている。
出典:The Evolution of Enterprise Architecture(Smarter with Gartner)
筆者 Katie Costello
Manager, Public Relations
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