「GitHub Sponsors」は、OSSコントリビューターの「お金」問題をどう解決できるのか:プログラム責任者に聞いた(1/2 ページ)
GitHubは2019年5月、OSSの開発者/コントリビューターを金銭的に支援するスポンサーシッププログラム、「GitHub Sponsors」を発表し、β版として運用を開始した。責任者であるデボン・ズーゲル氏に、同プログラム誕生の経緯と目的、仕組み、今後の展開を聞いた。
GitHubは2019年5月、オープンソースソフトウェア(OSS)の開発者/コントリビューターに対するスポンサーシッププログラム、「GitHub Sponsors」を発表し、β版として運用を開始した。これはGitHub上でOSSのコントリビューターを指定し、継続的な金銭的支援ができる仕組みだ。提供を開始して間もない現時点では、スポンサーとなれるのは個人のみ。
GitHub Sponsorsの直接責任者であるデボン・ズーゲル(Devon Zuegel)氏は、以前より開発者の支援に関する仕事をしてきたが、世界で最も多くのOSS開発者が集まる場といえるGitHubは、こうしたスポンサーシッププログラムを展開するには最適な場だと話す。同氏に、GitHub Sponsors誕生の経緯と目的、仕組み、今後の展開を聞いた。
「私たちが取り組んでいるのは、『OSSにコントリビュートする開発者のモチベーションをどのように保っていけるか』というテーマです。OSSの開発は単純にいって楽しいし、世界中の尊敬する人たちと一緒に、同じ問題を解決できるなどのメリットがあります。一方、多くの場合無報酬であるにもかかわらず、責任を伴い、過剰な期待をかけられることもあります。そこでGitHubでは、OSSに関与する人たちの負担を減らすために、役割分担や権限移譲を促進するような仕組みを採り入れるなどしています。一方で、メリットを高める方法の一つとして、OSSに関する作業で報酬を得られるとしたらどうだろうと考えました。お金は、私が話した数多くのOSS開発者が抱える最大の課題です。このことは、GitHubが実施したアンケートでも裏付けられました」(ズーゲル氏、以下同)
GitHub Sponsorsの現時点での仕組みは、次のようになっている。
OSSにコントリビューション(「開発」に限定されるものではない)を行うGitHubユーザーが、GitHubに申請して認められると、プロフィールに自身へのスポンサーシップを募集する情報を掲載できる。スポンサーシップは1回のみの選択肢はなく、月額サブスクリプション方式。複数の金額レベルが設定できるようになっている(レベルの設定イメージは、クラウドファンディングサイトに似ている)。
資金援助は、スポンサーシッププロファイルページから行える他、GitHubにおけるやりとりで、相手のユーザー名にカーソルを合わせると表示される「Sponsoring」というボタンや、各OSSプロジェクトにおけるコントリビューターの「ホバーカード」から行える。資金援助を行っているGitHubユーザーのプロファイルにはバッジが表示される。加えてスポンサーシップを募集する各ユーザーは、「援助への感謝をツイートする」などの謝礼方法を提示できる。
GitHub Sponsorsはメリットベースの資金援助を促進する
「私が最も気に入っているのは、GitHub Sponsorsが開発者のワークフローに組み込まれていることにあります。これまでも、PatreonやPayPal、Ko-fiなどのサービスを通じた支援はできました。しかしこうしたサービスでは、資金援助をする人が相手のやっていることを既に知っていなければなりませんし、援助を受ける人は物理的な世界で人気でなければなりません。Twitterのフォロワー数を競うコンテストのようになってしまいます。一方GitHub Sponsorsでは、私のイシューをクローズしてくれたり、私のプルリクエストをオープン、マージしてくれたりした人がスポンサーを求めていることを、その場で知ることができるので、この人をサポートしたいと考えたら、すぐに実行に移せます。Twitterフォロワーを増やすことに躍起にならなくても、素晴らしい仕事をしている人たちが資金援助を受けられるチャンスを広げるという意味で、GitHub Sponsorsは大きな前進だと考えています」
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