「デジタル化に関する誤解」が企業幹部の最大の懸念事項に、Gartnerが調査:漸進的な変革アプローチが重要に
Gartnerの「Emerging Risks Monitor Report」の最新版によると、2019年第3四半期には、「デジタル化に関する誤解」と「デジタル化の遅れ」が、世界のビジネスリーダーが抱える最大の懸念事項となった。
Gartnerは2019年10月24日(米国時間)、四半期ごとに実施している組織のリスク調査をまとめたレポート「Emerging Risks Monitor Report」の最新版を発表し、2019年第3四半期には、「デジタル化に関する誤解」と「デジタル化の遅れ」が、世界のビジネスリーダーが抱える最大の懸念事項となったと報告した。
この調査は世界各地域の幅広い業種の上級幹部を対象に実施されており、144人から回答を得た2019年第3四半期調査では、懸念事項の1位が「デジタル化に関する誤解」(第2四半期の調査では4位)、2位が「デジタル化の遅れ」(第2四半期も2位)となった。第2四半期に1位だった「変化のペース」は、2018年第4四半期から3四半期連続で5位までに入っていたが、今回は6位以下となった。
Gartnerのリスクと監査プラクティス担当バイスプレジデントであるマット・シンクマン氏は、次のように説明している。
「米中国貿易戦争のような外部マクロリスクの脅威への懸念が、経営幹部の間で高まっている。だが、今四半期のレポートで上位3つの懸念事項が、いずれも社内オペレーションに関するものであることに注目したい。ビジネスリーダーは、デジタル化に関する戦略に最も注意を払っており、その実行のためのリソースを確保している」
確信が持てない企業戦略の担当者
調査によると、主要なリスクとして「デジタル化に関する誤解」を挙げた回答者は52%、「デジタル化の遅れ」を挙げた回答者は51%。業種別に見ると、ITと通信業界では、「デジタル化に関する誤解」を挙げた回答者の割合が75%と高く、銀行とエネルギー業界では、7割近くの回答者が「デジタル化の遅れ」を挙げた。
Gartnerが企業戦略の担当者から収集した追加のデータは、企業におけるデジタル戦略に対する懸念が大きいことを示している。企業戦略担当者の最大の関心事は、戦略実行の遅さと不十分なデジタル能力であり、回答者の60%が両方の分野を最大の関心事としている。
担当者の不安が大きくなるのには理由がある。何らかの形でデジタルビジネスの変化を経験している組織の割合が高いからだ。大多数の戦略担当者、デジタル化がビジネスモデルの4つの領域(ビジネス能力、利益モデル、価値提案、顧客行動)に影響を与えていると指摘している。
加えて、現在のビジネスモデルから将来のビジネスモデルへ移行するはっきりした道筋が見えていない担当者が多い。将来のビジネスモデルを推進するためにどのような投資やイニシアチブが必要かについて確信を持っていると答えた戦略担当者はわずか35%にとどまり、ビジネスモデルの移行が組織にどのようなプラスの影響を与えるかについて明確になっていると答えたのはわずか20%だった。上層部がこうした変化に同意すると確信している戦略担当者の割合は8%だった。
デジタル化には誰が参加すべきなのか
シンクマン氏は次のように状況をまとめた。
「Gartnerのデータによれば、多数の企業が既にデジタル化を進行中であるにもかかわらず、経営陣が革新的なビジネスモデルの変更に自信を持っていないことが分かった」
同氏のアドバイスはこうだ。
「デジタル化が失敗に終わるリスクを軽減するためには、企業は漸進的なアプローチでビジネスモデルの変革を進めるべきだ。今後の取り組みのための知識構築を一歩一歩実行していく必要がある。ビジネスモデル変革を複数の個別プロジェクトとして展開すれば、大きな混乱が起こる可能性が低くなる」(シンクマン氏)
また同氏は、リスク管理担当役員がデジタル化プロジェクトに関与する必要があると指摘する。Gartnerの別の調査によると、リスク管理担当役員の3分の2が、自社でDX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトが進んでいると答えているが、リスク管理チームがそれらのプロジェクトに携わっていると答えた割合は、35%にとどまっている。
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