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リクナビだけじゃない――不正利用元年に理解すべき個人情報の概念と倫理お天道様は見ている(5/6 ページ)

就活サイト「リクナビ」が就活生の「内定辞退率」を企業に販売し、影響を受けた(と思われる)学生の就職活動の妨げとなった。問題の根源は何か、リクナビが反省すれば問題は解決するのか――HR業界の闇を明らかにするために、あのフリークたちが集結した!

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新卒に高い価値が置かれる日本ならではの構造的な問題

 厚生労働省がリクルートキャリアに対して行った行政指導は、職業安定法(職安法)に基づくものだ。労務分野を専門とする倉重氏によると「そもそも職安法とは、労働者に対して不利益な契約を防ぐため」という趣旨で制定されたもの。リクナビのサービスは、単なる募集情報提供ではなく「職業紹介」に該当すると判断し、指導を行ったという流れだ。


倉重公太朗弁護士

 職業紹介に当たっては、求職者の個人情報の収集、保管、使用を適法かつ公正な手段で行わなければならないとされ、例えば「みだりに他人に知らせてはいけない」という条文もあるが、何をもって「みだりに」と判断するのかなど、解釈の分かれる部分もある。2000年という古いインターネットをイメージして作られた条文と、リクナビに限らずインターネットを介したさまざまな求人サービスが存在する現状の間には、さまざまなギャップがあるとした。

 ただ、「そもそも同意を得たからといって情報提供してもいいのか。堂々と語れないようなサービスは、そもそもダメなのではないか」と倉重氏は述べた。

 同氏はまた「そもそもこの問題は日本でしか成立しないのではないか。新卒一括採用という労使慣行があり、新卒にものすごく価値が置かれる社会ならではの構造的な問題ではないか」と指摘し、新卒の予定採用数を達成できるかどうかが評価される人事担当者が、多少はムチャなことに手を出す背景に、こうした構造があると述べた。

 ただ、だからといってテクノロジーを活用した採用活動が「ダメ、絶対」ではなく、どう個人データを生かしながら守るかが問われるのだという。

 「HR(人的資源)テクノロジーは有効であり、使わないわけにはいかないが、フェアに堂々と明示できないサービスは存在すべきではない。労働組合側も、こうした観点をちゃんと理解すべきだ。明確に、堂々とテクノロジーを使ってHRテックをやるべきだというのが、労働法観点からの意見だ」(倉重氏)

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