欧州でIPv4アドレスの在庫が枯渇、世界的な課題へ:企業からのアドレス回収に頼る
欧州などでIPアドレスの管理を行うRIPE NCCは、IPv4アドレスの在庫が枯渇したと発表した。「/22」サイズのIPアドレスブロックの割り振りを終了したため、今後は企業やネットワーク事業者からの回収が頼みの綱になる。
欧州地域でIPアドレスの割り振りや管理を行うRIPE NCCは2019年11月25日(現地時間)、分配可能だった「/22」サイズのIPアドレスブロックについて最後の割り振りを行い、IPv4アドレスの在庫が枯渇したと発表した。/22サイズとは1024個のIPv4アドレスの割り振りのこと。
RIPE NCCは、世界に5つあるRIR(地域インターネットレジストリ)の一つで、欧州や中東、北アフリカ、アジアの一部地域におけるIPアドレスの割り振り、管理を行っている。
RIPE NCCではIPv4アドレスの在庫が枯渇することを予想しており、これまでもRIPEコミュニティーで対策が行われてきた。RIPE NCCは、「コミュニティーによる責任あるリソース管理の取り組みのおかげで、RIPE NCCは、2012年に『/8』サイズ(約1677万個)のIPv4アドレスブロックを最後に割り振った後も、サービス地域の多数の新しいネットワークに/22サイズのIPアドレスブロックを割り振ってきた」と述べている。
IPv4アドレスが完全に枯渇したわけではないが
今回の枯渇によってIPv4アドレスの新規割り振りが不可能になったわけではない。なぜなら使われなくなったIPv4アドレスを集めて回復し、再配布できるからだ。
そのようなIPv4アドレスは、倒産した企業や解散した企業から回収できる他、ネットワーク事業者から不要になったとして返却されるものもある。これらのアドレスは、RIPE NCCの会員であるLIR(ローカルインターネットレジストリ)に対して、新しい待機リストに従って割り振られる。
そのため、RIPE NCCは当分の間、IPv4アドレスの割り振りを続ける予定だ。だが、割り振られる量は、担当地域のネットワークで現在必要とされる量には遠く及ばない。
割り振りを受ける条件も厳しい。待機リストに登録されていることはもちろん、RIPE NCCからIPv4アドレス割り振りを一切受けたことがないLIRだけが、IPv4アドレス割り振りを申請でき、「/24」サイズ(256個)の1つのIPアドレスブロック割り振りを受ける資格がある。
RIPE NCCは、待機リストに含まれる申請件数と、最も早く申請を行ったLIRの待機日数を示すグラフも新たに公開した。
IPv6の普及が重要に
IPv4アドレスは世界的に在庫が枯渇している。なぜならアドレス長が32bitと短く、合計しても約43億個(2の32乗)しかないからだ。この数は世界人口の約半分と少ない。
RIPE NCCの他に、アジア太平洋地域を担当するAPNICや南米のLACNIC、北米のARINでも/8サイズのIPv4アドレスが既に枯渇している。ARNICによればアフリカのAFRINICも2020年5月には枯渇しそうだという。
RIPE NCCのサービス地域では近年、IPv4アドレスの移転市場が登場している他、キャリアグレードNAT(CGNAT)の利用も進んでいる。だが、RIPE NCCは、「どちらも一長一短があり、コストも考えると、IPv4アドレスの不足という問題の解決にはならない」との見方を示している。
例えばエンドユーザーにとっては移転市場をプロバイダーが利用したため、違う地域のIPアドレスが割り振られてしまい、地域限定の動画サービスを視聴できないといった課題が生じる。
IPv4アドレスの不足によってインターネットの発展が阻害されるのを防ぐには、IPv6の広範な普及が不可欠だとRIPE NCCは述べている。IPv6への移行は長い道のりではあるが、普及への取り組みを支援してほしいと全てのステークホルダーに呼び掛けるとともに、RIPE NCC会員およびコミュニティーへのサポートを約束している。
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