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日本マイクロソフトとTIS Azure利用のヘルスケアサービス実装テンプレートを提供開始PHR分野の標準化を図る

日本マイクロソフトとTISはPHR分野において連携することを発表した。Azureを利用したヘルスケアサービス実装テンプレート「ヘルスケアリファレンスアーキテクチャー」を提供し、PHR分野の標準化を図る。

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 日本マイクロソフトとTISは2020年7月8日、PHR(パーソナルヘルスレコード)分野において連携し、「ヘルスケアデータリファレンスアーキテクチャー」を無料で提供すると発表した。

 PHRとは、健康診断の結果や服薬履歴などの健康に関する情報の記録のことだ。これを電子化し継続的に記録することで、健康増進だけでなく、得られたデータを基にした研究などの2次利用、災害時の情報逸失の防止などが期待できる。

 民間企業からは歩数やバイタルを取得するスマートウォッチや、栄養管理を行うスマートフォンアプリなど、PHRに関するさまざまな製品が登場している。こうした背景を受け、行政においてもPHR活用促進の動きは高まっており、厚生労働大臣を本部長とするデータヘルス改革推進本部の下、2019年から「国民の健康づくりに向けたPHRの推進に関する検討会」を設置するなど、PHR普及に向けて議論している。

日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 医療・製薬営業統括本部長 大山訓弘氏
日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 医療・製薬営業統括本部長 大山訓弘氏

 収集したヘルスケアデータの活用が進む一方、各データの管理はサービス事業者によってバラバラだ。日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 医療・製薬営業統括本部長の大山訓弘氏は同日行われた会見の場でこう述べた。

 「ヘルスケアデータは国や医療機関、研究機関にとっても価値あるデータだが分散管理されているため、統合と分析が進んでいない。データ基盤という一歩踏み込んだところに課題があると認識した」

 データの統合と分析を進めるべく2社連携で開始するのが「ヘルスケアリファレンスアーキテクチャー」だ。

 ヘルスケアリファレンスアーキテクチャーは、「Microsoft Azure」を利用したヘルスケアサービス開発に必要なシステム共有部分を定型化したものだという。業務ファンクションマップ、アーキテクチャーマップ、GitHubで公開するサンプルプログラムの3つで構成されており、全て無料で利用可能だ。

TIS サービス事業統括本部 ヘルスケアビジネスユニット 執行役員 ジェネラルマネージャー 伊藤浩人氏
TIS サービス事業統括本部 ヘルスケアビジネスユニット 執行役員 ジェネラルマネージャー 伊藤浩人氏

 開発に当たり、TISのヘルスケア業界における知見が組み込まれているという。TISのサービス事業統括本部 ヘルスケアビジネスユニット 執行役員 ジェネラルマネージャーの伊藤浩人氏は「TISが開発した、PHRデータ管理に向けてIT基盤に求められる要件に対応したMicrosoft Azureベースのテンプレート『PHR POC テンプレート』を提供している」と話す。

ヘルスケアリファレンスアーキテクチャーのアーキテクチャーマップ。機能要件、システムの検証、データ構造の標準化実装、運用方法を確認できるという(出典:TIS)
ヘルスケアリファレンスアーキテクチャーのアーキテクチャーマップ。機能要件、システムの検証、データ構造の標準化実装、運用方法を確認できるという(出典:TIS)

「PHR POCテンプレート」とは? Microsoft Azureで提供

 「PHR POCテンプレート」を活用することで、ヘルスケア関連サービス事業者は、標準に準拠したサービスをMicrosoft Azureで構築しやすくなる。また、PHRのアーキテクチャの基本部分をサンプル実装し、サービスが動作する環境を自動で構築するプログラムも提供しているという。

 「テンプレート中に用意されている『データモデルの定義』『データ連携インタフェースの定義及び実施』『表示内容の実装』を行えば、簡易なPHRのPoC(概念実証)を実施できる」(伊藤氏)

 同テンプレートでは、臨床関連の6学会(*)による「生活習慣病コア項目セット集(第2版)」「生活習慣病自己管理項目セット集(第2版)」と、経済産業省の「健康情報等交換規約定義書」を参照したサンプルプログラムとデータを提供している。

(*)日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本動脈硬化学会、日本腎臓病学会、日本臨床検査医学会、日本医療情報学会

 「標準として定義されたデータモデルとデータ交換フォーマット上に、サンプルデータを登録しているので、データモデルやインタフェースの標準化の重要性を、データの質を保ったデータ交換の流れで実際に動作させて確認することができる」(伊藤氏)

 ヘルスケアリファレンスアーキテクチャーを用意しても、ヘルスケアサービスを提供する企業がそれを利用できなければ意味がない。そこで両社は技術者育成プログラムも提供する。アーキテクチャのコンセプトからレベル別に学習でき、また「FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)」という医療情報交換の国際標準規格であるHL7(Health Level 7)の中で最も新しい規格を学べるプログラムも用意する。同プログラムは2020年7月下旬から開始予定だ。

 「PHR分野におけるデータ活用の仕組みを標準化し相互運用性を高め、データ流通や再利用を可能とすることが、健康寿命延伸という社会課題の解決につながると考えている」(伊藤氏)

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