コロナ禍で問い合わせ数が約10倍、オンライン診療サービス「curon」を支えたアーキテクチャとは:Amazon ECSやAWS Fargateを活用
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でオンライン診療のニーズが高まっている。オンライン診療サービスを提供するMICINは急増する需要にどう対応しているのかを語った。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大がさまざまなビジネスに影響を与える中、診療の姿も変わろうとしている。2015年に遠隔診療という位置付けで始まり、対象疾患や対面診療歴に応じて可能となっていたオンライン診療が2020年4月から特例として全面解禁され、初診でも受けられるようになった。2020年5月現在、政府はオンライン診療の恒久化に向けた議論を始めている。
オンライン診療サービス「curon(クロン)」を展開するMICINのCEO 原聖吾氏はAWS(Amazon Web Services)ジャパンの記者説明会でオンライン診療のニーズやcuronを支えるアーキテクチャを語った。
新規登録や問い合わせが約10倍
「オンライン診療のニーズは大きく高まっている。新規患者の登録数が2020年1月の平均と4月の平均を比較して約10倍に、サービスを導入した医療機関数は約4倍、問い合わせは約10倍になっている。今までオンライン診療の対象疾患ではなかった小児科、皮膚科などの疾患領域からの問い合わせも急増している」
医療機関を対象としたオンライン診療だけではなく、服薬指導や治験のオンライン化のニーズも高まっているという。
MICINでは2020年4月から新型コロナウイルス感染症で中断している医薬品の開発にオンライン診療を活用するサービス「MiROHA」をシミックと共同で開始。また、2020年5月21日に、薬局向けオンライン服薬指導サービス「curonお薬サポート」も開始した。
「オンライン服薬指導は、2020年9月に解禁が予定されておりそれに合わせて準備を進めていたが、新型コロナウイルス感染症による特例措置として、4月に解禁されたため、当初の予定より早く、5月に公開を早めた」(原氏)
オンライン診療へのニーズの急速な高まりや、サービス開始までの期間短縮にどう対応しているのだろうか。
原氏は「3つのシステム基盤は全てAWSを活用している」という。
「Amazon ECS」や「AWS Fargate」を活用
原氏はAWSの製品群やそれ以外のサードパーティーツールをどのように利用しているか説明。なぜAWSを利用しているのか、3つの理由を挙げた。
1つ目は、迅速なサービス立ち上げに対応できる仕組みがそろっていること。API開発でアプリケーションに対しプロキシとして動作する「envoy」と「Amazon ECSサービスディスカバリ」を利用した疎結合のアーキテクチャを採用することで、既存IT資産の再利用が可能になったという。
「新機能や新規サービス開発でもAmazon ECS(Amazon Elastic Container Service)やAmazon RDS(Amazon Relational Database Service)、AWS Lambda、Amazon S3(Amazon Simple Storage Service)などを使い、素早くサービスを立ち上げることができた」(原氏)
2つ目は、スケール化が容易であること。スケーリングやデプロイの自動化により運用、開発のオーバーヘッドが最小限になったため、新型コロナウイルス感染症に伴う需要増にも対応できた。
3つ目は、マネージドサービスの活用。ビジネス上の差別化を生まない機能開発にAWSマネージドサービスとパートナーソリューションを活用した。
「スタートアップの限られたエンジニアリソースでも必要な機能を容易に実現できた」(原氏)
AWSの支援策
AWSは、新型コロナウイルス感染症の診断、研究、テストなどの診断サービスの開発費用を支援する「AWS Diagnostic Development Initiative」や、医療情報システムの構築、運用を行う上で順守すべきガイドラインとAWS環境でガイドラインに対応するための情報を取りまとめた「医療情報システム向けAWS利用レファレンス」を公開し、ヘルステック領域におけるAWS製品の活用を支援している。
新型コロナウイルス感染症の拡大によりオンライン診療が全面解禁されたことでヘルステック領域の変化はますます加速している。つい先日には、LINEがオンライン診療事業への参入を表明している。
「多くの企業が参入すると、オンライン診療の認知が進むメリットがある一方で、急な腹痛や発熱があったり、患者とのコミュニケーションが難しく判断材料を得られなかったりと、オンライン診療では正確な診断ができない場合にも使われてしまうという課題がある。オンライン診療のユースケースやエビデンス形成を進め、普及と促進につなげたい」(原氏)
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