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モノづくり企業、デンソーが作ったSRE課の役割、「目標はこの部署が不要になること」「個人や部署間の壁をできるだけ低く」(1/2 ページ)

結局、「SRE」とは何を意味するのだろうか。誰が何をどう、どこまでやることなのか。モノづくり企業、デンソーがデジタルトランスフォーメーションの過程で実践を通じてつかんだ意味とは。そしてなぜ、「将来、SREチームは不要になることが望ましい」のか。

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 自動車部品メーカーのデンソーは、モノづくり企業でありながら、ソフトウェアやサービスの開発に力を入れていることで知られている。自動運転、MaaS(Mobility as a Service)などの開発を進める一方、クラウド型の社有車管理システムなど、実用化したサービスも増えている。こうした同社におけるSRE(Site Reliability Engineering)への取り組みについて、同社デジタルイノベーション室SRE課担当課長の石田晋哉氏が、2020年7月末に開催された「Cloud Operator Days Tokyo 2020」で話した。

 ソフトウェアがデンソーにおける製品のますます多くにおいて中核的要素になり、ビジネスに直結するようになってくると、ソフトウェア開発は以前のような外注では済まなくなり、ソフトウェア開発者とビジネス部門が投資対効果を共有して共通のゴールを目指さなければならなくなった。このために内製とアジャイルの社内における推進組織としてできたのがデジタルイノベーション室だという。


モノづくり企業でも、サービスがビジネスに直結するようになってくると、ソフトウェア開発(、そして運用)の在り方が変わる必要がある。これが原点

 石田氏は約3年前、デンソーに入社し、デジタルイノベーション室内のSRE課を率いる役割を与えられた。デジタルイノベーション室には、ユーザーニーズの切り口で活動する「ビジネス開発課」「アジャイル開発課」と、テクノロジー起点で考える「アーキテクチャー&テクノロジー課」があり、SRE課はこれらの間に挟まれ、ユーザーニーズとテクノロジーの接点に位置して、インフラアーキテクチャの設計・構築支援、非機能要件の定義・評価支援、運用の要件定義、運用システムの構築・運用支援を行う部署として生まれた。

 「Googleは『DevOpsという概念、信条、あるいは文化を実践するエンジニアリング集団がSRE』と言っている」(石田氏)。これをデンソーではどう実践するか。石田氏は、社内の課題から出発したと説明した。

スクラムチームが相互に分断されている課題から出発

 デンソー社内では当時既に、開発プロジェクトの数が増え、スクラムチームが増えることで、各チームのメンバーは自らのプロジェクトに集中しすぎて、外が見えにくい傾向が強まっていたという。結果的に各チームが同じような問題で別々に悩み、同じようなものを作るが、各チームのスキルレベルの違いから、できあがったものの品質が異なるといったことが発生していた。

 そこでSRE課は、各スクラムチームが単独では解決しにくい問題を解決できるよう、役割分担をシフトしていく活動を始めた。


スクラムチームを支援するために、SRE課のメンバーを各チームに配置し、背後でSRE課全体が支援する

 各スクラムチームに、SRE課のメンバーを少なくとも1人専任で張り付け、これらのSRE課メンバーを通じて、SRE課全体でスクラムチームを支援する。

 より具体的には、「システムを運用可能な状態にする」「共通化・コード化を推進する」の2つを軸としているという。

 システムを運用可能な状態にするという点では、非機能要件の検討・検証を通じた支援を実施している。一方、「共通化・コード化の推進」では、各チームで作ったものを他のチームで再利用しやすいようにモジュール化したり、コード化して、他のチームもそのコードを実行すれば同じ状態を作り出せるようにしている。

 特定の人やチームだけにひも付くものを減らし、知見を幅広く共有できるように図っているという。これにより、チーム間のスキルの差を縮めることも狙っている。

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