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Gartner、9つの戦略的テクノロジートレンドを発表分散クラウドやセキュリティメッシュなど

「企業や組織が2021年に調査する必要がある」9つの主要な戦略的テクノロジートレンドをGartnerが発表した。「人中心」「場所からの独立」「復元力のあるデリバリー」という3つの主要な動きに対応したテクノロジーだ。組織の可塑性やオペレーションレジリエンスの実現に役立つとしている。

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 Gartnerは2020年10月19日(米国時間)、「企業や組織が2021年に調査する必要がある」とした主要な9つの戦略的テクノロジートレンドを発表した。

 Gartnerのリサーチバイスプレジデントのブライアン・バーク氏は、次のように説明する。「企業の業務全般にわたって、オペレーションのレジリエンス(復元力)の必要性がかつてなく高まっている。企業が状況変化に適応してビジネスを構築していくには、組織がダイナミックな自己再構築を繰り返す可塑性が必要になる。今回発表した主要な戦略的テクノロジートレンドを理解し、活用すれば、こうした可塑性の実現に役立つ」

 「企業はコロナ禍に対応し、成長を推進していく上で、2021年のトレンドを形作る『人中心』『場所からの独立』『復元力のあるデリバリー』という3つの主要な動きに注目すべきだ。一連のトレンドは連動して、部分和よりも大きな全体像を作り出している。どのような社会的個人的な要求が現れても、最適解が生まれる仕組みを実現しようという流れができる」(バーク氏)

 2021年の主要な戦略的テクノロジートレンドの概要は次の通り。

(1)「行動のインターネット」が個人の行動を促す

 「行動のインターネット」(IoB)は、個人に直接フォーカスした顔認識や位置追跡、ビッグデータなどの既存技術を組み合わせたものだ。得られたデータと、関連する行動イベント(現金購入、デバイスの使用状況など)を結び付ける。

 人間の行動に影響を与えるために企業はこのデータを使用する。例えば、企業はコロナ禍の中で、従業員がマスク着用などの健康指針を守っているかどうかをモニタリングするために、コンピュータビジョンを通じてIoBを利用するかもしれない。

 2025年末までに世界人口の半分以上が、商用または政府が提供する少なくとも1つのIoBプログラムの対象になると、Gartnerは予想している。ただし、IoBが技術的に可能でもすぐに採用されるとは限らない。行動に影響を与える目的で採用されるさまざまなアプローチについて、広範な倫理的社会的議論が続く見通しだ。

(2)マルチエクスペリエンスから「トータルエクスペリエンス」へ進む

 2019年にGartnerは会話プラットフォームやVR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)といった技術によって多様化する現実を「マルチエクスペリエンス」として戦略的テクノロジーのメガトレンドに位置付けた。2020年はさらに「トータルエクスペリエンス」(TX)へと一歩進めた。

 TXとは、マルチエクスペリエンスを顧客や従業員、ユーザーエクスペリエンスの各分野と結び付ける戦略だ。

 Gartnerは、TXを提供する企業が今後3年間、主要な満足度指標で競合他社を上回ると予想している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大などに伴い、人と企業のやりとりではモバイル化や仮想化、分散化が進んでいる。こうした中、企業はTX戦略を必要としているという。企業はビジネストランスフォーメーションで成果を挙げるため、TXによってさまざまなステークホルダーのエクスペリエンスを向上させることを目指している。

(3)処理中のデータについて「プライバシーを強化する計算処理」が広がる

 世界的にデータ保護法制の整備が進む中、どの地域のCIO(最高情報責任者)もプライバシーやコンプライアンス違反のリスク増大に直面している。「プライバシーを強化する計算処理」は、保存データのセキュリティ管理とは異なり、使用中のデータを保護し、機密やプライバシーを維持するものだ。

 Gartnerは2025年までに大企業の半数が、信頼性の低い環境や複数の当事者によるデータ分析におけるデータ処理のために、プライバシーを強化する計算処理を実装するようになると見ている。

(4)プライベートクラウドから「分散クラウド」へ

 「分散クラウド」はパブリッククラウドサービスが複数の異なる物理的な場所に分散されて、サービスのオペレーションやガバナンス、進化については、パブリッククラウドプロバイダーが責任を維持するという形態のクラウドを指す。

 低レイテンシやデータコスト削減を必要とする企業の他、特定のデータレジデンシー要件を持つ企業向けには分散クラウドが素早く対応する環境を提供する。さらにクラウドコンピューティングリソースを、データアクティビティーやビジネスの物理的な場所の近くに持つ必要がある顧客のニーズに対応する。

 2025年までにほとんどのクラウドサービスプラットフォームは、必要とされる場所で実行される分散クラウドサービスを少なくともある程度提供するようになる見通しだ。「分散クラウドはプライベートクラウドに取って代わり、エッジクラウドなど、クラウドコンピューティングの新しいユースケースを実現する」(バーク氏)

(5)5つの分野に「どこでもオペレーション」が広がる

 「どこでもオペレーション」とは、顧客がどこにいてもサポートでき、従業員がどこにいても仕事ができ、分散インフラにビジネスサービスを展開することを可能にするように設計されたIT運用モデルを指す。

 在宅勤務や顧客との仮想的なやりとりが可能になるだけでなく、付加価値を生むユニークなエクスペリエンスが5つの分野で実現する。「コラボレーションと生産性」「安全なリモートアクセス」「クラウドとエッジインフラ」「デジタルエクスペリエンスの定量化」「リモート業務を支援する自動化」だ。

 2023年までに企業の40%が、どこでもオペレーションを適用することで、顧客や従業員に対して、最適な仮想エクスペリエンスと物理エクスペリエンスを組み合わせて提供するようになる見通しだ。

(6)データの位置を問わない「サイバーセキュリティメッシュ」が最も実用的なアプローチへ

 デジタル資産がどこにあっても、どのようなものであっても、誰でもどこからでも、安全にアクセスすることを可能にするのが「サイバーセキュリティメッシュ」だ。クラウドデリバリーモデルにより、ポリシー強制とポリシーに関する意思決定を分離し、アイデンティティーがセキュリティ境界として機能するようになる。2025年までにサイバーセキュリティメッシュは、デジタルアクセス制御要求の過半数をサポートするようになる見通しだ。

 「企業の大半のサイバー資産が、従来の物理セキュリティや論理セキュリティ境界の外部に置かれている。どこでもオペレーションが進化を続けるとともに、サイバーセキュリティメッシュは、クラウド上のアプリケーションと分散データに対して、制御されていないデバイスから安全にアクセスするための最も実用的なアプローチになるだろう」(バーク氏)

(7)意思決定を向上させる「インテリジェントコンポーザブルビジネス」が企業を変える

 コロナ禍の影響によって効率を追求した従来の静的なビジネスプロセスがうまく機能しなくなっている。CIOやITリーダーは、ビジネスの変化のペースに適応するビジネス機能の重要性を理解するようになった。

 「インテリジェントコンポーザブルビジネス」は、適切な情報へのアクセスと俊敏な対応により、意思決定の根本的なリエンジニアリングを実現する。例えば、豊富なデータとインサイトのファブリックにより、AI(人工知能)などの機械が意思決定を向上させる。インテリジェントコンポーザブルビジネスは、デジタルビジネスモーメントの再設計や新しいビジネスモデル、自律的なオペレーション、新しい商品、サービス、チャネルに道を開く。

(8)本番環境でAIを使いやすくする「AIエンジニアリング」が登場する

 Gartnerの調査によると、AIプロトタイプの構築後、本番環境での利用に成功するプロジェクトは、53%にとどまる。CIOやITリーダーはAIプロジェクトのスケーリングに苦労している。本番環境に適したグレードのAIパイプラインを作成、管理するためのツールが乏しいからだ。

 本番環境で利用できるようにするには、AIエンジニアリングを活用する必要がある。AIエンジニアリングは、幅広いオペレーション化されたAIと意思決定モデル(機械学習や知識グラフなど)のガバナンスとライフサイクル管理にフォーカスしたエンジニアリング分野だ。

 AIエンジニアリングには、「DataOps」「ModelOps」「DevOps」という3つの柱がある。強固なAIエンジニアリング戦略は、AIモデルのパフォーマンスやスケーラビリティ、相互運用性、信頼性の向上を促進し、AI投資の価値を最大限に引き出す。

(9)デジタルファーストを実現する「ハイパーオートメーション」

 ビジネス主導のハイパーオートメーションは、できるだけ多くの承認されたビジネスやITプロセスを迅速に特定、検証、自動化するための規律あるアプローチだ。ここ数年、揺るぎないペースでトレンドを形成してきたが、コロナ禍の影響によりあらゆる分野で“デジタルファースト”が突然必要になり、需要に拍車が掛かった。企業の70%以上が数十のハイパーオートメーションの取り組みを進めるに至っている。

 Gartnerは、これら9つの主要なトレンドが今後5〜10年間に、大きなディスラプション(創造的破壊)や機会を促進するだろうと述べている。

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