ワーケーションしたらクリエイティブになれるの?:仕事が「つまんない」ままでいいの?(71)(3/3 ページ)
「地方で仕事をすればクリエイティブになれる」――ワーケーションを勧めるチラシやWebサイトには魅力的な言葉が並んでいます。しかし、それは事実ではありません。では、クリエイティビティを養うには、何が必要なのでしょうか?
越境学習──「価値観の揺らぎ」が起こる仕組み
このような「価値観の揺らぎ」によって起こる「気付き」「発見」「学び」のことを「越境学習」と言います。「越境学習」とは、普段の環境(つまり、会社)の枠を超えて、異なる環境を行ったり来たりすることによって得られる学びです。
「サードプレース」という言葉がありますが、社外の勉強会やワークショップ、NPOの活動などに自発的に参加し、自宅や職場とは異なる「第3の場所」にあえて身を置くことで、「気付き」「発見」「学び」を得ようとする行動は、まさに越境学習です。
社外の勉強会など、普段とは異なる環境に入るだけでも小さな“越境”は起こります。さらに、「都市部と地方」といった価値観が異なる非日常に越境すると、「価値観の揺らぎ」は大きくなります。
なお、観光で遠くの地域に行っても、新たな「気付き」「発見」「学び」はそれほど起きないように、その環境に入っただけでは、「価値観の揺らぎ」はあまり起こりません。越境学習で大切なのは、異なる価値観を持った人たちとの“交流”です。
つまり、クリエイティブな発想やアイデアを創発するポイントは、「越境と交流」なのです。
また、クリエイティブで、イノベーティブなアイデアを生み出す能力は、何らかの学習をすれば身に付く「スキル」ではありませんし、資格を取っても得られません。再現性もありませんし、体系的に得られるものでもありません。異なる環境に入る越境と、価値観が異なる人たちとの交流によって生じる「気付き」「発見」「学び」が起きる瞬間を待つしかありません。
言い方を変えると、努力して身に付けたスキルでないのなら、「価値観の揺らぎ」が起きるような環境さえ整えれば、誰にでも起きる可能性があるとも言えます。もちろん、必ずしも「そうなる」わけではありませんが、少なからず、オフィスで「かつてない、もっと斬新なアイデアを出せ!」とプレッシャーをかけるよりは、「価値観の揺らぎ」が起きる環境に身を置いた方が、クリエイティブでイノベーティブなアイデアが生まれる可能性は高くなるのではないでしょうか。
また、そういったアイデアが湧いてくると、楽しい。
「正解がない」といわれる現代のビジネスシーンを楽しく歩むなら、会社から一歩飛び出して、異なる価値観、環境の中に越境し、交流してみると、新たな「気付き」「発見」「学び」が生まれて、仕事に楽しさを感じられるようになるかもしれません。
冒頭で触れたワーケーションも、越境と交流を意識して取り組めば、「気分が良さそう」以上の、価値ある時間になると思います。
筆者プロフィール
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 地方暮らし、東京勤務 アフターコロナのリモートワーク
ポストコロナのIT業界とエンジニアの生き残り術を模索する特集「ポストコロナのIT業界サバイバル術」。第3弾は、リモートワークの未来です - マクロ編:「ワーケーション」で新しい働き方を切り開く、和歌山県の戦略
リゾート地でバケーションしながらワークする、そんな働き方はいかが?――ご当地ライターが、リアルな情報をつづる「UIターンの理想と現実」。全国のIT先端エリアを紹介する「マクロ編」、第4回は関西のリゾート地「和歌山県」です - 宮古島編:青い空! 白い砂!――首都圏の仕事をビーチでリモートワークするという、うっとりするような選択肢
沖縄県にある離島の1つ宮古島が、エンジニアのテレワークを応援している。美しい海がある観光地では、どんな働き方ができるだろうか