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WSUSによる「Windows 10 バージョン21H1(May 2021 Update)」の移行計画企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(101)

前回は、Windows UpdateおよびWindows Update for BusinessでWindows 10 バージョン21H1(May 2021 Update)の受信をコントロールする方法を紹介しました。今回は、Windows Server Update Services(WSUS)で管理された環境でのコントロールを取り上げます。

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「企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内

Windows 10 バージョン21H1のサポート期限に注意

 「Windows 10」の「半期チャネル(Semi-Annual Channel:SAC)」は、リリース後、18カ月間サポートされます。ただし、Enterprise/Educationエディションの下半期(H2)リリースについては30カ月間の長期サポートが提供されます。

 2021年5月18日(米国時間)に一般向けにリリースされた「Windows 10 バージョン21H1(May 2021 Update)」は、全てのエディションが18カ月間サポートされます。現在、企業でWindows 10 Enterpriseのバージョン20H2を利用している場合、Windows 10 バージョン21H1に移行すると、サポート期限が5カ月ほど短縮されてしまうことに注意してください(表1)。

Windows 10のバージョン Home/Proの
サポート期限
Enterprise/Educationの
サポート期限
バージョン21H1
有効化パッケージ対応
Windows 10 バージョン21H1
(May 2021 Update)
2022年12月13日 2022年12月13日
Windows 10 バージョン20H2
(October 2020 Update)
2022年5月10日 2023年5月9日
Windows 10 バージョン2004
(May 2020 Update)
2020年12月14日 2021年12月14日
Windows 10 バージョン1909
(November 1909 Update)
サポート終了 2022年5月10日 ×
Windows 10 バージョン1903以前 サポート終了 サポート終了 ×
表1 現在サポートされているWindows 10 SACバージョンとそのサポート期限

 Windows 10 バージョン21H1は、OSのコア部分をバージョン2004/バージョン20H2と共有しており、品質更新プログラムは共通です。新機能も、特定のハードウェアに依存するごく小規模なものです。大規模なアップグレードは、次のバージョン21H2で実施されるとみられています。

 Windows 10 バージョン20H2のEnterpriseまたはEducationエディションを利用中の場合は、現在のバージョンを維持し、次のバージョン以降で移行を計画するのが、最も作業が少なくて済み、安定性を維持できる現実的な判断です。

WSUSで配布できるバージョン21H1の機能更新プログラムは2種類

 前回(第100回)で説明した「Windows Update」や「Windows Update for Business(WUfB)」とは異なり、「Windows Server Update Services(WSUS)」を導入した環境は段階的なロールアウトの影響は受けず、管理者の承認に基づいて機能更新プログラムをWSUSクライアントに展開することができます。WSUSでは、Windows 10 バージョン21H1の一般向けリリースと同じ日に、Windows 10 バージョン21H1の機能更新プログラムが利用可能になりました。

 小規模なアップデートであるWindows 10 バージョン21H1は、Windows 10 バージョン1903に対するバージョン1909のアップデートや、Windows 10 バージョン2004に対するバージョン20H2のアップデートのときと同じように、Windows 10 バージョン2004/バージョン20H2に対する「有効化パッケージ(Enablement Package)」として提供されます。

 Windows 10 バージョン21H2の新機能は、有効化パッケージの対象バージョンのこれまでの品質更新プログラムによって“非アクティブ化状態”で既に追加されており、有効化パッケージは新機能の有効化とバージョン情報の切り替えを行う、25KB程度の小さな更新プログラムです。そのため、互換性問題の影響はほとんどなく、短時間でアップデートを完了できます。

 Windows 10 バージョン1909以前に対しては、数GBの通常の機能更新プログラムとして提供され、Windowsのアップグレードインストールが行われます。そのため、一部の設定がリセットされたり、アプリやハードウェアの互換性問題の影響を受けたりする場合があります。

 Windows UpdateおよびWUfBでは、Windows Update経由でのみ、有効化パッケージを受信することができます。

 WSUSで利用可能な機能更新プログラムは、数GBの通常の機能更新プログラムと、有効化パッケージ形式の機能更新プログラムの両方です。前者の機能更新プログラムは、Windows 10 バージョン20H2以前を実行する全てのWSUSクライアントに承認、展開可能です(画面1)。後者の有効化パッケージは、Windows 10 バージョン2004/バージョン20H2を実行するWSUSクライアントに承認、展開可能です(画面2)。

画面1
画面1 従来形式の機能更新プログラムはWindows 10 バージョン20H2以前の全てのバージョンに承認、展開可能。サイズはx64版で約3.5GB
画面2
画面2 有効化パッケージ形式の機能更新プログラムは、わずか25KB程度。Windows 10 バージョン2004/バージョン20H2のWSUSクライアントに対して承認、展開できる

 ただし、有効化パッケージを受け取るためには、追加のソフトウェアの前提条件があります。詳しくは以下のサポート情報で説明されているので、先に前提となる更新プログラムを展開してください。

段階的なロールアウトで明らかになる既知の問題の注視が必要

 MicrosoftがWindows Updateで段階的にロールアウトを行うのは、ダウンロードが集中しないようにするためでもありますが、さまざまなソフトウェア/ハードウェア環境で発生する可能性がある問題の情報を収集し、必要があれば影響を受けるデバイスに対するロールアウトを「セーフガード」機能を用いて一時停止するためでもあります。

 WSUSは管理者により配布が制御されるため、既知の問題については管理者自身で影響を調査した上で展開する必要があります。現在、そして今後明らかになる既知の問題は、以下のサイトで報告されるので、小まめにチェックしながら、組織内で段階的にロールアウトすることをお勧めします。

 ここ最近のアップデートでは、特定の条件下でSTOPエラーが発生する、1分後に自動的にシャットダウンを開始する、証明書が消失する、レガシー「Microsoft Edge」が削除されたのに新しいMicrosoft Edgeが追加されない、などの問題がリリース後、しばらくして報告され、セーフガードの措置やインストールメディアの更新などが行われました。

 Windows Update経由で更新する場合は、機能更新プログラムのインストールと同時にインストールされる「動的更新プログラム(Dynamic Update)」によって解決される問題もありました。

 WSUSの場合は、「Dynamic Cumulative Update for……」という名前の更新プログラムで提供されるので、機能更新プログラムを承認、展開する際には、最新の動的更新プログラムを承認、展開するようにしてください(画面3)。

画面3
画面3 今後明らかになる既知の問題は、最新の動的更新プログラムで回避できる場合があるので、機能更新プログラムと併せて承認すること

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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