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【速報】Windows 10 October 2020 Update(バージョン20H2)が正式リリースに山市良のうぃんどうず日記(191:特別編)

Windows 10の最新バージョン「Windows 10 October 2020 Update(バージョン20H2)」が正式にリリースされました。Windows Updateを通じて段階的にロールアウトされるため、全てのPCで利用可能になっているわけではありません。案内が来るのを気長にお待ちください。

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山市良のうぃんどうず日記

バージョン2004の未解決問題を残しながら、バージョン20H2がリリース

 Windows 10の最新バージョン「Windows 10 October 2020 Update(バージョン20H2)」が正式リリースされました。バージョン20H2は、「Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)」とOSのコア部分を共通とする“マイナーアップデート”ともいえるバージョンです。2020年10月20日(米国時間)から「Windows Update」の「更新プログラムのチェック」をクリックした一部のユーザーに「機能更新プログラム」としてロールアウトされています。

 ロールアウトの対象範囲は段階的に拡大されるため、「更新プログラムのチェック」をクリックしても検出しないかもしれません。今回のロールアウトは、テレワーカーが多い現在の状況を踏まえ、より時間をかけて拡大していくようです。

 機能更新プログラムの対象に選ばれた場合は、「Windows Update」に「Windows 10、バージョン20H2の機能更新プログラム」の案内が表示されるはずです。リリース直後の数カ月は自動的にインストールが始まることはありません。ユーザーの都合の良いタイミングで「ダウンロードしてインストール」をクリックして、アップデートを開始できます。なお、筆者の手元の環境では、正式リリースとなったバージョン20H2の案内をリリース初日に受け取ったPCは1台もありません。

 前述したように、バージョン20H2は1つ前のバージョン2004とOSのコア部分が共通であり、2020年10月以降の毎月の品質更新プログラムも共通です。そのため、バージョン2004で未解決の既知の不具合は、バージョン20H2にも影響します。実際、「Microsoft IME」の日本語入力の不具合は、バージョン20H2にも未解決の問題として引き継がれています。その他の既知の問題については以下のサイトで確認してください。

新機能はChromium版Microsoft Edgeへの完全移行

 マイナーアップデートであるバージョン20H2で注目の新機能があるとすれば、Chromium版の新しい「Microsoft Edge」への完全移行でしょう。Microsoftは新しいMicrosoft Edgeの安定版(Stable)を2020年1月にリリースし、その後、Windows Updateを通じて移行を進めてきました。

 バージョン20H2には最初から新しいMicrosoft Edgeが搭載されています(画面1)。旧Microsoft Edgeを利用していたWindows 10をバージョン20H2に更新すると、新しいMicrosoft Edgeに置き換わります。少し古い「バージョン86」がインストールされるので、最新バージョンに更新してください(2020年10月にバージョン86がリリースされています)。

画面1
画面1 Windows 10をバージョン20H2に更新すると、まだ新しいMicrosoft Edgeに移行していない場合でも、新しいMicrosoft Edgeに置き換わる

 新しいMicrosoft Edgeは多数のポリシーに対応していますが、「ポリシー管理用テンプレート」はWindows 10のインストールに含まれません(旧Microsoft Edgeのポリシー設定は残っています)。「グループポリシー」や「ローカルコンピューターポリシー」で管理する場合は、以下のダウンロードサイトの「ポリシーファイルを取得」から管理用テンプレートを入手し、システムに登録します。ポリシー設定はMicrosoft Edgeのメジャーバージョンがリリースされると増えるので、その都度、新しいテンプレートを入手する必要があります。

新機能の多くはバージョン2004と共通

 以下のMicrosoftの公式ドキュメントは、バージョン20H2とバージョン2004の新機能を説明しています。両者を見比べると分かると思いますが、Microsoft Edge以外のほとんどの機能はバージョン2004からのものであり、バージョン20H2で新たに追加されたものではないということに気が付くでしょう。

 公式ドキュメントのバージョン20H2の方にだけある新機能「Windows Update」の項で説明されている「最新の累積更新プログラム」(Latest Cumulative Update、LCU)と「サービススタックの更新プログラム」(Servicing Stack Update、SSU)が統合されて1つのパッケージになったという改善は、2020年9月までの累積更新プログラムとSSUによってバージョン2004にも導入済みです。

バージョン1903から1909のときと同様の有効化パッケージ形式による配布

 Windows Updateを利用してバージョン20H2の機能更新プログラムをインストールする場合、バージョン2004を実行中のPCには、数GBのダウンロードを伴う従来の機能更新プログラムではなく、80MB程度の小さなサイズの「有効化パッケージ」が利用されます。

 これはWindows 10 バージョン1903からバージョン1909への更新の際に採用された新しい方式で、短時間のダウンロードと毎月の品質更新プログラムと同じようにインストールしてバージョンを切り替えることができるものです(アップグレードインストールは行われません)。前回は20KB程度でしたが、今回は新しいMicrosoft Edgeのインストーラーが含まれている関係で若干サイズが大きくなっているのだと思います。

 すぐにバージョン20H2に更新したいという場合は、以下のサイトから手動で更新するか、インストールメディアを作成して更新できます。ただし、実行中のバージョンが2004であっても有効化パッケージは利用されないことに注意してください。

 繰り返しますが、有効化パッケージを利用できるのは、バージョン2004を実行中でWindows Update経由で更新する場合です(後述するWSUSでも利用できます)。ダウンロード、インストール、再起動が短時間で完了し、アップグレードインストールではないので、アップグレードに伴う失敗やエラーのリスク(ディスク領域不足で続行できない、更新後に互換性問題で正常起動しないなど)が軽減されます。このような有効化パッケージのメリットを得るには、Windows Updateに機能更新プログラムの案内が出てくるのを待ちましょう。有効化パッケージを使用したインストール開始後のエクスペリエンスについては、以下の連載記事を参考にしてください。

WSUSでは機能更新プログラムと有効化パッケージが既に展開可能に

 バージョン20H2の正式リリースと同時に、「Windows Server Update Services(WSUS)」では新バージョンの機能更新プログラムと有効化パッケージが利用可能になっています。機能更新プログラム(ja-jp、ビジネスエディションの場合)のサイズは64bit版が約3.7GB、32bit版が約2.8GBで、Windows 10のバージョンに関係なく承認、配布できます。

 一方、有効化パッケージは64bit版が約85MB、32bit版が約80MBです。バージョン2004(ただし、2020年10月のBリリースの19041.572以降に更新済みであること)の場合は、有効化パッケージの方を承認、配布できます(画面2)。機能更新プログラムで配布する場合は、最新のバージョン20H2用「Dynamic Update(DU)」パッケージを併せて承認することをお勧めします(10月21日時点ではKB4579305が最新)。最新のDUパッケージには、CVE-2020-16908の脆弱(ぜいじゃく)性に対する修正が行われているからです。

画面2
画面2 バージョン20H2はWSUSで既に配布可能。数GBの機能更新プログラムに対して有効化パッケージは80MB程度(32bit版の場合)

 「Microsoft Endpoint Configuration Manager(旧称、System Center Configuration Manager、略称、ConfigMgr)」や「Microsoft Endpoint Manager(Microsoft Intune)」、その他の更新管理ツールを利用している場合も、既に企業内のクライアントに展開できるようになっています。秋リリースのバージョン20H2は、EnterpriseおよびEducationエディションに対して30カ月の長期サポートが提供されます。各企業の計画に従って移行を進めてください。

バージョン20H2は「バージョン2009」でもある

 以下の連載記事で解説したように、Windows 10のバージョン形式はこれまでの「YYMM」(YYは暦年下2桁YY、MMは月2桁)から、その年の前半/後半で区別する「YYH1/YYH2」形式に変更されました。そしてバージョン20H2は、内部的には「2009」という旧式のバージョン番号も維持しています。更新プログラムの名称に「Version 2009」が出てくることもあるので(.NET Frameworkの累積的な更新プログラムなど)、「20H2=2009」であるということを覚えておきましょう(画面3)。

画面3
画面3 更新プログラムの名称は「20H2」のものもあれば「2009」のものもある

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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