SOMPOひまわり生命がローコードの利点を最大化するために行った「2つの決断」:特集:「内製化」の誤解と、今すぐなすべきこととは?(3)
SOMPOひまわり生命は、保険商品の企画・開発にかかる期間とコストを削減することを目的に、新たな商品基盤をローコード開発プラットフォーム「Pega Platform」で構築した。その効果を最大限に引き出すため同社が行った「2つの決断」とは。
社会のデジタル化が進む中、ビジネスとITシステムとは不可分のものになっている。消費者の嗜好(しこう)やライフスタイルが急速に変化する市場において、競争力の高い商品・サービスを提供し続けるためには、そのビジネスプロセスを支えるシステムも、柔軟かつ迅速に、生み出す必要がある。
そうした認識の元、これまで多くの企業が行ってきたシステム会社への全面的な外注によるシステム開発を見直す動きも生まれている。競争力の源泉となるコアビジネスに関わるシステムの開発・改善を、より迅速に行えるようにすることで、変化への対応力を上げることが目的だ。近年、「ローコード開発ツール」が企業の注目を集めているのも、そうした動きの一環にある。
SOMPOホールディングスの傘下で国内の生命保険事業を手掛けるSOMPOひまわり生命保険(以下、SOMPOひまわり生命)は、保険商品の企画・開発にかかる期間とコストを削減することを目的に、新たな商品基盤をローコード開発プラットフォームで構築した。
ニーズに応える商品の迅速な開発のため新たな基盤を構築
SOMPOひまわり生命では、死亡時や入院時に金銭的なサポートを行う一般的な保険機能を持った商品だけでなく、契約者の日々の健康維持や増進を支援する機能を兼ね備えた商品やサービスの提供に注力している。同社では、このコンセプトを「Insurhealth」(インシュアヘルス)と呼んでおり、2018年以降、保険商品や健康サービスとして展開を続けている。
「SOMPOひまわり生命は、従来の保険商品の概念自体を変えていくことに取り組んでいる。そのチャレンジの一つが、インターネット専用で提供される商品の開発だ」
そう話すのは、SOMPOひまわり生命、情報システム部 IT開発グループの金田幸男氏だ。同社では、2018年ごろから、ローコード開発プラットフォームによる商品開発に本格的に取り組んできた。同社が、ローコードの採用を検討した背景には、旧来の手法に基づいたシステム開発では「ユーザーのニーズに合った商品のスピーディーな開発、提供が難しい」という課題意識があったという。
「従来の開発手法に従うと、新商品向けのシステムを開発する際に、その都度汎用(はんよう)機で動いている基幹システムに手を入れる必要があった。そのため、企画から開発までの期間が1年以上かかってしまうことも珍しくなかった。顧客ニーズに合った商品を短期間に開発し、インターネットで提供していくという新たなチャレンジを実現していくためには、これまでのやり方とは異なる、新たな仕組みが必要だと考えた」(金田氏)
そこで、同社が下した決断が、対面販売商品向けに作られていた基幹システムとは別に、インターネット専用商品を高速、低コストで市場に投入するための新たな「ネット商品基盤」を構築することだった。
高生産性・低コストの要件を満たす「Pega Platform」を採用
新しいネット商品基盤の構築に当たっては、当初よりローコードツールを活用する方針で、製品選定を進めた。複数の製品を比較検討した結果、同社が選択したのは、Pegasystemsが開発する「Pega Platform」だった。
製品選定とネット商品基盤の開発に関わった、SOMPOひまわり生命 情報システム部 IT開発グループの川崎隆史(「崎」は異体字)氏は「今回のプロジェクトでは、高速かつ低コストに生産性の高い開発が行える基盤を作ることが最重要の要件として求められていた。これらの要件を満たすためには、従来型のコードベース開発では限界があり、特に画面作成についてのコーディングが不要で、作成したアプリケーションの保守管理までをフォローできるようなロードコードプラットフォームを活用することが必須だった」と話す。
他のローコード製品と比較した場合のPega Platformの優位性として川崎氏が挙げるのは、「生産性の高さ」と「ライセンスコストのリーズナブルさ」だ。
「Pega Platformでは、画面だけでなく、プロセスやルールまでを統一された環境で開発、管理できる。当社では、新しいネット商品基盤上で、継続的に商品を開発していくことを計画していたため、一度作成したモジュールの再利用で、さらに生産性が高められると期待した。また、コストについては、Pega Platformが、オンプレミスでの運用でありながら、トランザクション量に対する“従量制”でのライセンス形態を採用していることが大きかった。これによって、アプリケーションへのアクセス量に応じた課金となり、ライセンスコストを削減することが可能だった」(川崎氏)
ローコードから最大限の成果を得るために行った「2つの決断」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- DX以前の「要件」とDX時代の「ユーザーストーリー」、その最大の違いとは
ユーザー企業におけるDXは、Web系企業やスタートアップで使われる手法とは違うアプローチが必要だ。SOMPOホールディングスの内製開発事例を基にデジタル開発の在り方を学ぶ。第1回は「DX時代の『ユーザーストーリー』はこれまでの要件定義と何が違うか」について。 - 開発1カ月で「セゾンのお月玉」をリリース――クレディセゾンが語るDX推進のコツ
クレジットカードで知られるクレディセゾンはDXの取り組みを進展させ、新規サービスを1カ月で開発するなど価値創出につなげている。どのような体制を築き、何に取り組んできたのか。 - ドキュメントは最低限、会議は2つだけ――開発に全集中したプロジェクトの品質はどのようにして保たれたのか
リクルートでの新規プロダクト開発事例からエンジニアとしての価値の高め方を探る本連載。前編に引き続き「本開発フェーズ」にフォーカスし、不確実性が高いプロダクト開発で高い品質を維持しつつ、高速にプロジェクトを進めるポイントを解説する。後編となる今回は「実装に集中するためのプロジェクトモニタリング」と「テストによるプロダクト品質の保証」について。