最も勢いのあるプログラミング言語は?:全世界2万人弱の開発者を調査
SlashDataは開発者動向レポートの最新版「Developer Economics: State of the Developer Nation 21th Edition」を公開した。主要プログラミング言語のユーザー数や、5G、IoT、機械学習、データサイエンス、ゲーム開発といった最新のテーマを追っている。中国の開発者の貢献が多い開発分野なども分かる。
開発者動向を分析する調査会社SlashDataは、年2回実施する調査レポートの最新版「Developer Economics: State of the Developer Nation 21th Edition」を2021年11月に公開した。2021年6〜8月に、168カ国の1万9000人以上の開発者を対象に調査を行い、その結果をまとめたレポートだ。
同レポートでは、「言語コミュニティー」「5G IoT革命の中核を担う開発者」「開発者が転職する理由」「機械学習とデータサイエンスのワークフローのさまざまなステージ」「サードパーティープラットフォーム向けアプリケーションや拡張機能を開発する開発者」「ゲーム開発に使われる技術」という6つのテーマについて、2021年第3四半期以降の主要な開発者動向を掘り下げて分析している。テーマごとのハイライトは次の通り。
最も成長が著しい言語コミュニティーは?
SlashDataは主要なプログラミング言語を使用するアクティブなソフトウェア開発者の数を継続的に推計している。世界のあらゆるタイプの開発者が推計の対象だ。推計は次の2つのデータに基づいている。
・SlashDataが独自に推計した世界のソフトウェア開発者数
2021年第3四半期における世界のアクティブなソフトウェア開発者数は2680万人と推計されている。
・同社が6カ月ごとに実施している数万人の開発者に対する調査結果
調査では地域や開発者グループなどの偏りを統計的に取り除いており、10の開発分野におけるプログラミング言語の使用状況を一貫して調べている。
レポートは巨大な開発者コミュニティーが存在する2つの言語と成長が著しい2つの言語をまず取り上げている。
・JavaScript
世界で1650万人近くの開発者が使用しており、圧倒的な人気を誇っている(CoffeeScriptやTypeScriptを使用する開発者数を含む)。
・Python
2020年初めにJavaの人気を抜いて以来、JavaScriptに次いで2番目に広く採用されている。ユーザー数は1130万人。
・Rust
過去2年間、他のどの言語よりも急速にユーザー数を伸ばしている。Rustを使う開発者は、2019年第3四半期には40万人だったが、2021年第3四半期には110万人に達し、ほぼ3倍に増えた。
・Kotlin
過去3年間でユーザー数が2倍に増え、約300万人に達した。
プログラミング言語コミュニティーのランキング(2018年第2四半期〜2021年第3四半期) JavaScriptのユーザー数は、CoffeeScriptとTypeScriptのユーザー数を含む(出典:SlashData「State of the Developer Nation 21th Edition」)
主要なプログラミング言語の使用状況は?
開発者数の多いプログラミング言語について、調査ではさらに詳細なデータを公開している。
・JavaScript
ここ数年、JavaScriptユーザーは一貫して増加している。過去1年間の増加数は400万人、過去6カ月の増加数は250万人以上だった。
・Python
過去1年でユーザー数が230万人増加した。Pythonの人気を支えているのは、データサイエンスと機械学習(ML)の台頭だ。ML開発者やデータサイエンティストの70%以上が、Pythonを使用していると回答した。
・Java
Androidアプリケーションのエコシステムの基盤であり、最も重要な汎用(はんよう)言語の一つだ。ユーザー数は2018年半ば以降、約250万人増加し、2021年第3四半期には960万人となっている。
2021年第3四半期における主要なプログラミング言語コミュニティーの規模 各言語を使用する世界のアクティブなソフトウェア開発者数と、最もユーザー数が多い分野、少ない分野を示した。単位は100万人。JavaScriptのユーザー数は、CoffeeScriptとTypeScriptのユーザー数を含む(出典:SlashData「State of the Developer Nation 21th Edition」)
・C/C++、PHP、C#
CとC++は組み込みやIoTプロジェクトにおいて、オンデバイスとアプリケーションレベルの両方のコーディングで中核的な言語だ。PHPはWebアプリケーションにおいて、JavaScriptに次いで2番目によく使われている。C#は伝統的にデスクトップ開発者コミュニティーで人気があるが、AR/VR(拡張現実/仮想現実)やゲーム開発者の間で最も広く使われている言語でもある。これは、これらの分野でゲームエンジン「Unity」が広く採用されていることが大きな理由だ。
・Rust
パフォーマンスやメモリ安全性、セキュリティを重視する開発者に強く支持されている。SlashDataのデータによると、Rustは主に組み込みソフトウェアプロジェクトで使われているが、AR/VRアプリケーションの低レベルコアロジックの実装など、AR/VR開発でも使われている。
・Kotlin
Kotlinのユーザー拡大は、GoogleがAndroid開発の優先言語としたことによる部分が大きい。Kotlinは現在、モバイル開発において、JavaScriptとJavaに次いで3番目に人気のある言語だ。
・SwiftとObjective C
Swiftは2021年初めに、ユーザー数がKotlinを下回った。その後、ユーザー数は10万人しか増えていない。それでも、Swiftは全Appleプラットフォームで既定の開発言語だ。一方、Swiftに役割を取って代わられたObjective Cは、Appleのエコシステムから徐々に姿を消しつつある。図にあるように、ユーザー数も低迷してきている。
中国の開発者が5G IoT革命を支える
・中国の開発者に5Gへの勢いがある
国や地域別に見ると、中国のソフトウェア開発者が5G革命への対応に最も積極的だ。開発者の82%が5G技術に関心を持っているか、この技術を学んでいるか、この技術に取り組んでいる。
・米州の開発者には温度差あり
北米と南米では、5Gに取り組んでいる開発者の割合が中国に次いで高い。だが、同地域の一般的な開発者の間では、5Gへの関心ははるかに低い。
・AR/VRなどで5G技術が使われる
開発者の5Gへの取り組みが最も加速している分野として、AR/VR、産業用IoT(IIoT)、家電が挙げられる。これらの分野では、6人に1人の開発者が5G技術に取り組んでいる。
・IIoT市場でも活躍する5G技術
IIoT専門家による5Gへの取り組みが最も盛んな分野としては、製造やスマートシティー、デジタルツイン技術が挙げられる。
開発者はなぜ転職したいのか
・9割の開発者が転職を意識
多くの開発者は自分の価値を認識しており、それに基づいて、状況によっては転職を考えるとしている。何があっても転職しないと答えた開発者は、10人に1人にとどまる。
・テレワークを要望
約4分の1の開発者は、テレワークの機会を求めて転職する可能性がある。ソフトウェア開発は歴史的に、テレワークの先駆けとなった業界であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的流行)の影響で、テレワーク志向が特に顕著になった可能性がある。
・東欧の開発者は給与アップを最重要視
東欧の開発者の10人中7人近くが、給与アップを目的に転職するだろうと答えており、福利厚生の充実で引き留めることは難しそうだ。
・中国の開発者はその他のメリットを重視
中国の開発者はより良い企業文化や職場環境、通勤時間の短縮など、「よりソフトな」メリットを求める傾向が強い。
・経験豊富な開発者は転職したがらない
経験を積んだ開発者は自分の仕事に最も満足している。16年以上の経験を持つ開発者の約6人に1人は、何があっても転職しないと答えている。
変化した機械学習とデータサイエンス関連の開発
・データサイエンス/機械学習の開発に変化あり
データサイエンス/機械学習(DS/ML)開発者のうち、DS/MLワークフローにエンドツーエンドで関与している人は10人に1人にすぎず、エンドツーエンドでの関与は減少している。
・DS/MLプロジェクトでは何が起こっているのか
DS/MLプロジェクトではデータの探索や分析、モデルの開発、可視化/プレゼンテーションが基本となっている。
・サイロ化するDS/MLワークフロー
特定のステージ(データの取り込みなど)に関与する開発者は、隣接するステージ(データエンジニアリングや特徴量エンジニアリングなど)にも関与する場合が多いが、より上流に移動することはあまりない。
サードパーティープラットフォーム向けアプリケーションや拡張機能の開発はWeb中心
・「プロ」開発者が多数を占める
サードパーティーエコシステム向けにアプリケーションを開発している開発者のうち3分の2以上(68%)が、プロを自認している。
・Webブラウザ向け開発が最大
サードパーティーエコシステム向け開発者の43%が、Webブラウザ向けのアプリケーションや拡張機能を作成している。Webブラウザはさまざまなプラットフォームタイプの中で、この割合が最も高い。
・電子コマースプラットフォーム向け開発者が最も増加
過去2年間に、この分野をターゲットとするサードパーティーエコシステム向け開発者が、16%増加した。この分野は、開発ターゲットとして最も成長しているプラットフォームタイプだ。
・プロ向け開発のパイが大きい
サードパーティーエコシステム向けアプリケーションを開発しているプロの開発者の17%が、他のプロをターゲットにしている。他のプロはさまざまなターゲット層の中で、消費者に次いでこの割合が高い。
バックエンド技術がゲーム開発では重要
・成長するゲーム開発市場
ゲームをクラウドまたはオンプレミスサーバにデプロイするゲーム開発者の割合は、2021年第3四半期に30%に達した。過去6カ月間におけるこの割合の伸びは、他のさまざまなプラットフォームタイプにデプロイするゲーム開発者の割合の伸びをいずれも上回った。
・クラウド利用が深化
コードをクラウドにデプロイするプロのゲーム開発者の中で、43%がマルチ/ハイブリッドクラウド戦略を採用している。
・利用頻度が高いバックエンド技術
バックエンド技術はゲーム開発において、2D/3Dゲームエンジンに次いで3番目に使用される技術となっている。
・ストレージ/DB技術が重要
プロのゲーム開発者の間では、バックエンド技術の必要性が高く、開発者の大部分がストレージ/データベース技術を使用している。
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