「過去に経験がない異常予兆」をAIで検知するシステムを開発 大阪ガスと宇部情報システム:正常範囲内の小さな異常も検知
大阪ガスと宇部情報システムは、AIによって過去に経験がない異常予兆を早期に検知するシステムを開発した。異常時のデータと同じかどうかではなく、正常時の製造運転データから外れているか否かで異常を判定する。
大阪ガスと宇部情報システムは2022年3月8日、AI(人工知能)で「過去に経験がない異常予兆」を検知するシステムを開発したと発表した。
「AIモデルの再学習」も利用者側で実施可能
大阪ガスと宇部情報システムは、従来のAIを活用した異常予兆検知システムとの違いについて「『過去に経験したトラブル時の異常データ』を学習させるのではなく、『正常時の製造運転データ』を学習させる。そこから外れた場合に異常と判定することで、経験したことがないトラブルでも検知できる」と説明する。
また、従来の異常データを基にした検知システムは「正常動作のしきい値を超えているか否か」で異常を判定していたため、「正常動作の範囲内で発生した小さな異常」は検知が難しいという課題があった。大阪ガスと宇部情報システムが開発したシステムは正常時のデータを基にしているため、こうした「小さな異常」も検知できるという。
大阪ガスと宇部情報システムは、学習データの違いの他にメンテナンス性の高さを特徴として挙げている。
「従来のAIを使った異常予兆検知システムは、装置のオーバーホールや経年変化によるAIモデルの精度低下を防ぐために専門のエンジニアがAIモデルを再学習させる必要があった。今回開発したシステムはユーザー自身で再学習できる」
宇部情報システムは「このシステムを導入することで、早期に異常を検知でき、緊急停止といったトラブルを回避可能だ。そのため、計画的な状態基準保全ができるようになる」としている。
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