パワハラされてリストラされたので、転職サイトに書き込んでやりました:「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(97)(1/3 ページ)
毎日のように怒鳴られ、発言を禁止され、最後はコスト削減のためにリストラされた。この恨み、晴らさでおくべきか!
IT企業から社員が退職する際のトラブルについてはこれまでも、知的所有権の問題や引き抜きなど幾つか取り上げてきた。今回は、退職後に在職していた会社に対するネガティブな情報をSNSで発信したことが、損害賠償の対象となるか争われた裁判を取り上げる。
もちろんこうした問題はIT業界に限ったものではないが、労働の流動性が高く、普段からSNSなどを使い慣れている人間の多いIT業界では、よく起こりがちな問題である。
言うまでもなく日本国憲法では言論の自由が認められており、辞めた会社について何を言おうと、それが事実であり誹謗(ひぼう)中傷の類いに属するものでなければ法的な問題とはならないと思うのだが……。
悔しい! 書き込んでやる!
事件の概要から見ていこう。
東京地方裁判所 平成29年9月20日判決より
あるIT企業において、取締役を務めていた社員が営業成績の不振により度重なる叱責(しっせき)を受け続け、そのことも原因となってうつ病および全般性不安障害を発症した。社員は休職と復帰を繰り返しつつ16カ月のリハビリを行ってから職場に復帰したものの(その間に社員は取締役を辞し部長職となった)、その後も職場の社員に対する態度は変わりなく結局社員は退職することとなった。
退職後、社員はブログを開設し、そこに自身がIT企業内で受けたストレスや具体的な言動を書き込んだ他、インターネットの転職サイトに原告の評判・評価・社風の口コミとして、このIT企業には決算前になるとコスト削減のためにリストラを行う習慣があるなどの書き込みを行うなどした。
これに対してIT企業側は、この(元)社員の行為は企業の信用など破損行為に当たり、その損害は300万円を下らないとして(元)社員に対して賠償を求める訴えを提起した。
※取締役は役員であり社員ではないが、退職時は降格で社員となったため、判決文および本記事内では「元社員」と表記する
※IT企業側の訴えはこれ以外にも、労働契約上の債務不履行、顧客情報などの不正使用、顧客との契約関係に対する侵害につき不法行為、取締役当時の架空売り上げの計上など多岐にわたるが、本記事では信用など破損行為についてだけ取り上げる
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