日本全国の物流を支えるヤマト運輸で「クラウドネイティブ」はどう生かされているか:目的化しないDX、内製化にも取り組む
1919年の創業以来、「宅急便」をはじめとした宅配サービスや法人企業の経営判断に資するサプライチェーンマネジメント戦略の企画立案など、100年以上にわたり国内外の物流を支えているヤマトグループ。経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」のもと、大規模な経営構造改革に取り組んでいる。2022年9月に@ITが開催した「ITmedia Cloud Native Week 2022 秋」に登壇したヤマト運輸 執行役員 DX推進担当の中林紀彦氏が、ヤマト運輸のビジネス変革においてクラウドネイティブ技術がどのように貢献しているのか紹介した。
経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」は、2019年に創業100周年を迎えたヤマトグループが、次の100年を視野に目指す方向性を示した中長期経営のグランドデザインだ。「お客さま、社会のニーズに正面から向き合う経営」「データドリブン経営」「共創による物流エコシステムの創出」を基本戦略とし、「3つの事業構造改革」と「3つの基盤構造改革」の推進が掲げられている。
事業構造改革には「宅急便のデジタルトランスフォーメーション(DX)」「ECエコシステムの確立」「法人向け物流事業の強化」が、基盤構造改革には「グループ経営体制の刷新」「データドリブン経営への転換」「サステナビリティへの取り組み」が、それぞれ掲げられている。これらの改革を推進するに当たって「デジタル化」と「データ活用」の強化は不可欠であり、ヤマト運輸では、クラウドネイティブ技術とアーキテクチャを用いて独自に構築した「Yamato Digital Platform(YDP)」を通じて、その実現を図っている。
「ヤマト運輸が、2022年3月期に取り扱った荷物は22億7000万個を超えた。個人向け会員サービスの『クロネコメンバーズ』は5000万人超、法人向け会員サービスの『ビジネスメンバーズ』は150万社に達している。急速かつ膨大に成長する配送ニーズに応えるため、営業所や車両といったフィジカルなリソースも保有している。昨今では、荷物の増加に伴って、さまざまな課題も生まれてきており、その解決策が求められている」(中林氏)
急速に変化する市場環境にマッチした「運び方」の仕組みを次々とリリース
中林氏は、「3つの事業構造改革」と「3つの基盤構造改革」について、それらをどのように実現していこうとしているのか、取り組みの具体例を紹介した。
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