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VisionalグループのCCoEが明かすクラウド活用の最前線――「アジリティ」と「ガバナンス」を兼ね備えたクラウドネイティブの全貌クラウド推進のポイントは「経営の理解」と「現場の協力」

2022年9月に@ITが主催した「Cloud Native Week 2022 秋」にビジョナル ITプラットフォーム本部 グループIT室 CCoEテックリードを務める長原佑紀氏が登壇。転職サイト「ビズリーチ」、人財活用プラットフォーム「HRMOS(ハーモス)」シリーズなどを展開するVisionalグループの「クラウドネイティブな事業環境」を支えるために、CCoE(Cloud Center of Excellence)が手掛ける取り組みを語った。

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「アジリティ」と「ガバナンス」の両立を目指した軌跡

 2009年にサービスを開始した転職サイト「ビズリーチ」、2016年サービス開始の人財活用プラットフォーム「HRMOS(ハーモス)」などを展開する「ビズリーチ」は、2020年2月にグループ経営体制に移行。現在は、VisionalグループとしてHR Tech領域を中心に、産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するさまざまな事業を展開している。

Visionalグループの経営体制
Visionalグループの経営体制

 VisionalのCCoEは、もともと「全社プロダクトにおける非機能要件の向上」を目的として2018年に組成された組織が母体だ。「最初から『クラウド活用推進組織』として立ち上げたものではなかった」と長原氏は振り返る。

ビジョナル ITプラットフォーム本部 グループIT室 CCoEテックリード 長原佑紀氏
ビジョナル ITプラットフォーム本部 グループIT室 CCoEテックリード 長原佑紀氏

 「2018年当時、プロダクトのグロース開発に重点が置かれる中で、非機能要件がないがしろになり、品質や生産性が低下するという課題が生じていた。非機能要件に関する全社的な基準やガイドラインも整っていなかったため、将来的な事業成長を阻害しないよう、それらを整備し、しかるべき非機能要件をプロダクトに反映できる体制を作るための組織としてスタートした」(長原氏)

 この取り組みの中で、メンバーの一部がクラウドを主体に活動を行った結果として、現在のCCoEが形作られてきたという。この組織が、社内で通称として「CCoE」と呼ばれるようになったのは、2021年におけるホールディングカンパニーへの組織移管後のことだ。

 Visionalでは、2012年以降のサービス開発、提供のインフラ全てにおいて、クラウドを活用している。中心となっているのは、Amazon Web Services(AWS)であり、アカウントベースで100以上、コストベースで95%以上がAWS上で利用されている。残りは、Google Cloud Platform(GCP)などとなっている。

Visionalグループにおけるクラウド利用の状況
Visionalグループにおけるクラウド利用の状況

 VisionalではCCoE組織を「企業内でクラウドを活用、推進していくための仕組みを整え、広めるための専門組織」と位置付けている。現在、CCoEの取り組みが目指すのは「クラウド活用における『アジリティ』と『ガバナンス』の両立」だ。事業会社のプロダクトチームに対するクラウドプラットフォームの開発、提供だけでなく、ナレッジの共有やコミュニティー活動など、組織文化の醸成に資する活動も、CCoEが中心となっている。

VisionalグループのCCoE
VisionalグループのCCoE

 「クラウドの最大の利点であるアジリティと、セキュリティやコンプライアンスを強化してリスクを適切に管理、対処するガバナンスは、一見すると相反する概念にも思えるが、工夫次第で両立が可能だと考えている。これらが両立したクラウドネイティブな環境が、プロダクトの成功、ビジネスの成功に貢献するものであり、CCoEでは、その実現に取り組んでいる」(長原氏)

 CCoEの活動を通じ、実際にVisionalにおけるクラウド利用の状況にも変化が見られているという。2018年ごろには、クラウド利用に関わる組織横断的なガバナンス機能は不足しており、プロダクトチームは思い思いにクラウドを利用していた。そのため、会社として把握、管理できていない「シャドークラウド」の存在なども課題となっていたという。

 2022年現在では、グループ全体で利用しているクラウドサービスについて、一定のガバナンスを効かせた管理が可能となり、コストの最適化やセキュリティリスクの低減なども実現している。

クラウド利用状況の変化
クラウド利用状況の変化

 以前は主にAmazon EC2(IaaS)を中心としていた環境は、コンテナやサーバレス技術を活用したアーキテクチャに移行。これにより、サーバの保守運用にかかる手間の削減や、スケーラビリティ、アジリティの向上に寄与しているという。

プロダクトのアーキテクチャの変化
プロダクトのアーキテクチャの変化

「品質向上」のための基準づくりや適用支援がスタート地点

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