中小企業だからこそ、1人のちからでDXを始められる:IT人材ゼロから始める中小企業のDXマニュアル(2)
DXをどのように進めたらよいか分からず、焦りを覚えている中小企業のDX担当者や経営者のモヤモヤを吹き飛ばし、DX推進の一歩目を踏み出すことを後押しする本連載。第2回は、1人で中小企業のDXに取り組んだ事例を紹介し、成功の秘訣(ひけつ)は何かを分析、解説する。
中小企業だからこそのDX推進とは
デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるに当たり、中小企業であることの最大の強みはその「アジリティ(=俊敏さ)」にあります。組織において「1人」の占める割合が高く、関係するステークホルダーが少ない。したがって、素早い意思決定とともにそれを実行に移し、物事を改善することができます。そして、その積み重ねが結果として、DXの推進とその拡大につながります。
しかし一方で、前回記事で紹介した通り、むしろ中小企業の方がDX推進は遅れているというのが現状です。多くの中小企業は、DXに関するスキルを持つ人材がいないから進められないと感じてしまっているからです。
筆者は、その「人材不足でDXを進められない」という思い込みをまず捨てる必要があると感じています。今回はBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供するフロント・ワークスのDX推進事例について紹介し、中小企業でもDXを進めることは十分に可能であることを示しつつ、その成功の秘訣(ひけつ)を探ります。
たった1人で始めたDX推進
Google Apps Scriptのスキル習得の狙い
そのスタートは2017年のこと、フロント・ワークスの代表取締役、江藤大さん(当時は専務取締役)は、30人弱の社内で、唯一プログラミング言語「Google Apps Script」(GAS)の学習に挑んでいました。
事業の柱は光学メディアに特化したコールセンターおよび事前検証業務。競合が少ない業界ではありつつも、光学メディアの衰退とともに業界も衰退していくことが見えている斜陽産業でした。その対策の一つとして、ITを活用した生産性向上を挙げていました。
また、江藤さん個人としても、専務という役職でありながら、経理、総務、人事といったバックヤードの仕事を一手に抱えていました。その上、お子さんが誕生したこともあり、育児のための時間もとりたかったのです。
そこでまず、社内の情報を、煩雑なローカルの「Microsoft Excel」や「Microsoft Word」から、クラウドの「Googleスプレッドシート」と「Googleドキュメント」に移行していくことを推し進めました。そして、GASがそれら「Google Workspace」の各アプリケーションや、コミュニケーションツールとして使用していた「Slack」を操作可能であることを知り、業務効率化に大きく貢献すると考えました。さらに、それには余計なヒューマンエラーも減らせるというメリットもありました。
GASにより実現した業務の自動化
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