「離職率が上昇し、従業員は疲弊」 Gartnerの2023年職場トレンド予測に会社はどう対応すべき?:予測不能な環境において、再教育、勤務の柔軟性がますます重要に
Gartnerは、人事リーダーが労働市場に的確に対応し、ビジネス成果を推進し続けるために、今後対処すべき職場のトレンドに関する予測を発表した。
Gartnerは2023年1月4日(米国時間)、2023年も職場を取り巻く状況がさまざまに変化する中、HR(人事)リーダーが今日の労働市場に的確に対応し、ビジネス成果を推進し続けるために、今後対処すべき職場のトレンドに関する9つの予測を発表した。
GartnerのHRプラクティス部門シニアディレクターを務めるエミリー・ローズ・マクレー氏は、「多くの企業が職場復帰を義務付け、恒常的に離職率が上昇し、従業員が疲弊する中で、HRリーダーは、ますます予測不能な環境に直面している。2023年の予測は、HRリーダーが今後12カ月間に優先的に取り組むべき仕事の側面を浮き彫りにしている」と述べている。
Gartnerが発表した9つの予測
予測1:「静かな採用」が、需要の高い人材の獲得に新たな道を開く
Gartnerのデータによると、景気後退への懸念が広がり、解雇を発表する企業も出てきているが、HRリーダーの大多数は、労働市場で人材獲得競争が激化すると予想している。
先進的なHRリーダーは、正社員を新規に採用せずに新たなスキルや能力を獲得するために「静かな採用」に目を向けるだろう。静かな採用には、従業員を優先順位の高い職務に就かせるためのリスキリング教育や、組織のニーズと従業員のキャリアに関する希望をともに満たすスキルアップ教育などが含まれる。
予測2:ハイブリッドワークの柔軟性がフロントラインワーカーにも適用される
2023年に賢明な企業は、公平性を確保するために勤務の柔軟性を制限することをやめ、テレワークが可能なフロントラインワーカー(現場の最前線で働く従業員)の柔軟性を高める正式な戦略を推進するだろう。この目的のために、フロントラインワーカーのスケジュール管理の自由度を高め、有給休暇を増やし、スケジュールの一層の安定化を図ると予想される。
予測3:マネジャーがリーダーと従業員の期待の板挟みに
GartnerのHRプラクティス部門リサーチチーフを務めるピーター・エーケンズ氏は、「多くのマネジャーが、シニアリーダーの命を受けて企業戦略を実行する必要性と、従業員が期待する目的意識、柔軟性、キャリア機会の提供とのバランスをどう取るかに悩んでいる」と述べている。
2023年に先進的な企業は、マネジャーに対するプレッシャーの高まりを認識し、マネジャーにサポートやトレーニングを提供するとともに、マネジャーの優先事項を明確にし、必要に応じてマネジャーの職務を再設計するだろう。
予測4:非伝統的な採用候補者の重視が人材パイプラインの拡大につながる
企業は、重要な役割を果たす人材を確保するために、資格や過去の経験よりも、職務遂行能力のみで採用候補者を評価することを良しとしなければならなくなる。そのために、例えば、求人情報の中で正式な学歴や経験の要件を緩和したり、従来とは異なる経歴を持つ社内外の候補者に直接アプローチしたりするようになるだろう。
予測5:パンデミックのトラウマを癒やすことで、より持続可能なパフォーマンスへの道が開ける
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)下で、人々は強いストレスを経験してきた。
2023年に主要な企業は、従業員が感情的な回復力とパフォーマンスを維持できるように、積極的な休憩を促すようになる。Gartnerが2022年7月に約3500人の企業従業員を対象にした調査では、企業が積極的な休憩を促すと、従業員のパフォーマンスが26%向上することが分かった。
予測6:企業は反発を受けながらもDEIを推進
企業はDEI(多様性、公平性、包摂性)の取り組みを優先的に進めているが、この取り組みがかえって組織の分断を招いていると見る従業員も多い。
2023年に人事担当者はマネジャーのために、DEIに抵抗を感じる従業員を巻き込み、DEIへの反発が破壊的な形態に発展する前にいち早く対処するためのツールや戦略を用意する必要がある。
予測7:企業による従業員支援のパーソナライズが進むとともに、新たなデータリスクが発生
企業は従業員のニーズにより効果的に対応するために、人工知能(AI)アシスタントやウェアラブルデバイスなど、新しい技術をますます利用して、従業員に関するより多くのデータを収集するようになっている。だが、これらの技術の利用は、プライバシーを脅かすおそれがある。
2023年に先進的な企業は、従業員データの収集、使用、保存方法に関する透明性を優先し、従業員が自分の望まない慣行からオプトアウトできるようにする社内ルールを策定するだろう。
予測8:AIに関する懸念が人材採用技術の透明性向上につながる
人材採用にAIを利用する企業が増える中、こうした慣行における倫理性の確保が急務となっている。こうした企業や関連ベンダーは、AIの利用方法について透明性を高めるとともに、従業員や採用候補者に、AI主導のプロセスからオプトアウトする選択肢を提供しなければならないという圧力に直面するだろう。
予測9:Z世代のスキルギャップにより、従業員間の交流促進が重要に
テレワークやハイブリッドワークの増加により、多くの新入社員は、社内の規範を観察し、どのような行動が適切で効果的かを判断する、対面での機会が少なくなっている。リーダーは、対面での業務に強制的に戻すのではなく、地理的、世代的な境界を越えて従業員間の意識的なつながりを築く必要がある。
Gartnerの調査は、従業員間の意識的な交流を生み出す上では、従業員の選択と自律、明確な構造と目的、陽気さと楽しさという3つの要素が重要であることを示している。
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