AI駆動、ローコード/ノーコード、APIなどがけん引 エンタープライズアプリ市場は右肩上がり予測:年平均8%のペースで成長
IDCは、エンタープライズアプリケーション市場における世界売上高の予測を発表した。2026年までの5年間の平均成長率が8%に、2026年には3852億ドルに市場が拡大するとみている。
調査会社のIDCは2023年1月12日(米国時間)、エンタープライズアプリケーションの世界売上高が2022年の2796億ドルから、2026年には3852億ドルに拡大し、この5年間の年平均成長率が8%になるとの見通しを発表した。
この成長のほぼ全てがパブリッククラウドソフトウェアへの投資によって実現され、2026年にはパブリッククラウドソフトウェアがエンタープライズアプリケーションの売上高全体の3分の2近くを占めると予想されている。
オンプレミスアプリケーションからクラウドへの移行プロセスには何年もかかることがあるが、エンタープライズソフトウェアベンダーとその顧客は、クラウドへの移行を継続すると、IDCはみている。デジタル世界でのビジネス運営に不可欠だからだ。
この技術を追求しない企業は、大きな機会費用による損失を被ることになるとIDCは指摘する。競合他社がクラウドの技術やAPIを導入してビジネスに活用し、オンプレミスや自前の技術ソリューションに固執する企業は太刀打ちできなくなるからだ。
「デジタルの世界では、エンタープライズソフトウェアは、スピード、スケールおよびレジリエントな(強靭《きょうじん》で回復力のある)ビジネスへの需要に対応していくために、イノベーションを継続する必要がある」と、同社ワールドワイドデジタルコマース担当リサーチディレクターのヘザー・ハーシー氏は述べている。
「企業はデジタル時代に入り、アプリケーションポートフォリオを最新の状態に保つ新しいツールに投資し、全てのプロセスを自動化するとともに、イノベーションと豊富なデータを活用し、デジタル分野でさらなる創造性とレジリエンスを発揮しなければならない」(ハーシー氏)
IDCは、現在進んでいるクラウドへの移行の他にも、エンタープライズアプリケーション市場の成長を促進する重要な動向を、次のように特定している。
動向1:SaaSや、クラウドベースのモジュール型インテリジェントアプリケーションが、ビジネスに不可欠なものとなっている。ビジネスの継続を望む企業では、クラウドに対応するモジュール型のインテリジェントなAI駆動型ソフトウェアが必要になる。
動向2:アプリケーションプログラマブルインタフェース技術は、エンタープライズアプリケーション市場を支える基盤であり続ける。モダンなシステムを構成する全ての異種コードベースを接続する上で、APIが極めて重要な役割を果たすことを理解している企業では、APIは常に、健全な投資対象と位置付けられるだろう。
動向3:タスクアプリの拡張を伴うクラウドへの段階的な移行が今後も続き、B2B(Business to Business)企業では特にそうなる。タスクアプリとローコード/ノーコード開発ツールは、デジタルファーストへの移行過程において、ギャップを埋め、プロセスを拡張し、ビジネスをより迅速に変化させるために使用されている。
動向4:データプライバシーと倫理に関する新しいグローバル規制は、企業がデータを収集、使用する方法を変え、ガバナンスにスポットを当てた。コンプライアンスは、信頼を優先する企業にとって差別化要因となっている。
「デジタル世界はモジュール化やAPI、ローコード/ノーコード、ビジネスプロセス自動化、タスクアプリ、さらにはイノベーションにより、企業がソフトウェアを導入、活用する方法を一変させている。企業は、技術がもたらす機会を生かし始めている」と、同社のエンタープライズソフトウェア部門グループバイスプレジデントを務めるミッキー・ノース・リザ氏は述べている。
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