ソフトは転売していません。マニュアルを販売しただけです:「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(105)(1/2 ページ)
ソフトウェアを転売しても窃盗罪には当たらないんだってね。じゃあ、アクティベーション回避プログラムをじゃんじゃん売っちゃおうぜ。
自分が作ったソフトを勝手に転売されたら、訴えてやる?
必要のなくなった書籍やDVDを中古品として売却することは、何ら問題はない。未成年ならともかく成人であれば、誰の許可を得る必要もなくいつでも自由に中古品として売ることができる。では、ソフトウェアの場合はどうだろうか。これもCDやDVDに収められたゲームソフトなどを買い取り業者に売ることには問題はない。
では同じソフトウェアでも本体をダウンロードした上でライセンスキーなどを購入する場合はどうだろうか。コピーが可能なソフトウェアのライセンスキーを購入した人間がこれを第三者に売れば、違法になる。民事上はソフトウェアの販売業者や作成者に損害賠償を請求されるだろうし、刑事上の罪にも問われる。同じようにソフトウェアを転売する行為ではあるが、こちらは立派な犯罪になってしまう。
今回はソフトウェアの違法な転売についての裁判例を紹介する。
いつものようなシステム開発を巡る紛争ではないが、読者の中にも、ご自身で、あるいは自社でソフトウェアを作成してダウンロード販売をされる方もいらっしゃることだろう。
もしも自分が作成したソフトウェアが転売されていたら、その非を相手に理解させ糾弾するには、裁判に訴えることが有効だ。だが、裁判には時間も費用もかかる。裁判に勝てば費用の多くは相手方から支払われるが、少なくとも一時的には弁護士費用や裁判費用、その他経費がかなりかかることになるからだ 。
そうする前に(まさに「訴えてやるの前に」)、相手の非を法的に説明し糾弾することで、より簡便に賠償や違法な販売の停止を求められるかもしれない。
事件の概要から紹介しよう。
東京地方裁判所 平成30年1月30日判決より
原告企業Xが、著作権などを有する建築CADソフトウェア(以下「CADソフト」という)を販売していたところ、これを購入した被告Y(個人)がソフトウェアをインターネットからダウンロード可能な場所に置いた上、このソフトウェアをXによる使用許諾なしに実行できるプログラム(以下「アクティベーション回避プログラム」という)を複数名(以下「最終利用者」という)に販売し利益を得ていた。
Xは、Yの行為が違法であるとし、損害の賠償を請求する訴訟を提起した。Yはこれに対して自身はソフトウェアを最終利用者に販売はしておらず、単にCADソフトのダウンロード方法などを記したマニュアルを販売したのみであると反論した。
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