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住友商事がAWS上にグループ全社の統合IT基盤「SCDP」を構築、何を目指すのかSAPもAWSに完全移行

住友商事が、グループ全社のデジタル基盤「SCDP」を、AWS上に移行する取り組みを進めている。これは、グループ各社のシステムを、単一のインフラにまとめるだけのものではないという。

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 住友商事が2023年6月22日、国内外のグループ企業全社を対象としたグループ統合IT基盤をAmazon Web Services(AWS)上に構築中であることを明らかにした。SAPについてもAWSへの移行を進めており、事業システムとの機動的な連携を目指す。

 同社は基本的に全ての既存システムをAWSに移行し、オンプレミス/プライベートクラウドは将来的に撤廃する方針。新規システムはAWS上で開発・運用する。


住友商事の塩谷渉氏

 これは「AWSへのオールイン(全システムをAWS上で動かす)」ということなのか。同社の理事でIT企画推進部長 DX・IT統括責任者補佐の塩谷渉氏は、AWSジャパンが開催した説明会で次のように説明した。

 「 住友商事のクラウド戦略は、AWSを基軸としたマルチクラウド 。事業はさまざまな分野にまたがるため、 各事業の特性を見ながら他のクラウドサービスも利用している。だが、セキュリティを含めた運用の基盤はあくまでAWSとし、他クラウド上のシステムとはAPIで連携する形になる」(塩谷氏)

 既存システムの移行については「時間がかかるのが正直なところ」(塩谷氏)。各システムのバージョンアップや作り替えのタイミングを生かすなどして順次進めていく。

住友商事グループの統合IT基盤「SCDP」とは

 住友商事は、「SCデジタル基盤(以下、SCDP)」と呼ぶグループ統合IT基盤の設計・構築を2020年から進めてきた。当初はプライベートクラウド上に構築していたが、2022年よりAWSへの移行を開始した。

 SCDPは、グループ各社のシステムを、単一のインフラにまとめるだけのものではないという。


SCDP進化のフェーズ。現在はPhase 1の段階だという

 住友商事は、本体で行ってきた事業を、順次グループ会社へ移管してきた。その上で、特定業界向けSaaSを展開するなどして「業界変革をリード」し、最終的には「業界を超えた消費者・需要家への新たな価値の創出」を目指すのが、同社のグループDX戦略だという。SCDPは、これを支えるIT基盤という位置付けだ。

 つまり、セキュリティを担保した上で、グループ各社が機動的にデータやシステムを連携し、場合によっては共同でサービスを迅速に開発・運用できなければならない。この目的に基づき、AWSへの移行を決断したという。

 SCDPの構築・運用は、住友商事と連携しながら、IT子会社のSCSKが担う。この基盤では、下記に取り組むという。

  • 「Amazon Guard Duty」や「AWS Security Hub」などを活用してゼロトラストを原則とし、グループ全体のセキュリティを強化
  • SCSKが環境構築、運用・保守、監視を一括して担うことで、事業会社がDXに注力できるようにする
  • グループ企業間や外部サービスとのデータ連携で、データの利活用を促進する

「コンポーザブルERP」を目指し、SAPもAWSに移行

 SAPについては、約60インスタンスを「SAP HANA Enterprise Cloud」で運用してきた。これを全てAWS上の「RISE with SAP」に移行する。国内拠点・グループ会社については2024年末までに、海外については2026年中旬までに移行を完了する予定。これにより、SCDP上の他のシステムとの連携やAWSのデータ分析・機械学習サービスの活用を進める。

 将来的には、ガートナーのいう「コンポーザブルERP」への進化を目指しているという。

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