企業向け無線LAN市場は拡大傾向 カギは「Wi-Fi 7」「HaaS」:「中小ベンダーが大手の市場シェアを奪う絶好の機会」
ABI Researchは、エンタープライズ無線LANインフラストラクチャの売り上げが2022年から2028年の間に年平均成長率9.7%を達成すると予測した。無線LANの市場規模は新技術の導入とともに拡大している。
市場調査会社のABI Researchは2023年7月13日(米国時間)、エンタープライズ無線LANインフラストラクチャに関する予測結果を発表した。エンタープライズ無線LANインフラストラクチャの売り上げは2022年から2028年の間に年平均成長率(CAGR)が9.7%を達成し、無線LANアクセスポイントの出荷台数は、同期間に年平均成長率(CAGR)9.4%で増加すると予測している。
無線LANによって対応可能な市場は拡大
無線LANの市場規模は、新技術の導入とともに拡大している。ABI Researchのシニアアナリストであるアンドリュー・スパイビー氏は「Wi-Fi 7は、業務遂行に必要不可欠な産業オートメーションアプリケーションやAR/VR(拡張現実/仮想現実)のような新しいリアルタイム技術に必要な低遅延を実現するのに役立つ。ここでも、無線LANがプライベートネットワークで5Gと融合することで、以前は無線ではサービスを提供できなかった環境でも複合技術を展開できるようになり、両技術に対応可能な市場が拡大する」と話す。
2022年の無線LAN出荷台数および売上高は、全ての主要ベンダーが力強い成長を遂げた。HPE Aruba Networksの無線LAN出荷台数の増加により、同社のインテリジェントエッジ部門は力強い成長を記録したという。Extreme Networksは複数の大規模な展開によって勢いづき、Alcatel-Lucent Enterpriseの「Stellar Access Point」シリーズはWi-Fi 6の需要とハイブリッド作業への移行に後押しされて100%以上の成長を遂げた。
HaaSの実装に成功したベンダーが優位に立つ時代へ
最近の無線LAN出荷台数の急増を通じて、ベンダーの市場シェアは比較的安定していたが、新たな市場展開によってベンダー間の力関係が大きく崩れる可能性がある。企業はCAPEX(Capital Expenditure:設備投資)を大量に投じて先行投資を行うよりも、as-a-Serviceの提供というOPEX(Operating Expense:運営費)モデルをますます好むようになっている。そのため、ポートフォリオ全体でHaaS(Hardware as a Service)の実装に成功したベンダーが優位に立つと同社は予測している。新しい付加価値サービスの出現と無線LANネットワーク管理の進化によって、市場が変化する準備が整っているという。
例えば、生成AI(人工知能)は、管理者がネットワークを管理して洞察を得る方法を合理化し、簡素化する。同時に、サードパーティーのプラットフォームとの緊密な統合により、リアルタイムのネットワークデータ探索が拡大する。その結果、より的を絞った実用的なネットワーク分析と洞察が可能となる。スパイビー氏は「このような最新のソフトウェア開発をプラットフォームにうまく組み込むことが、今後ますます重要になるだろう」と述べている。
小規模のベンダーは市場のシェアを奪うチャンス
市場支配的な地位と豊富なリソースを持つ大手ベンダーは、こうした新サービスが提供する機会を活用する上で最適な立場にいるように見えるかもしれない。しかし、動きが遅く、新技術をレガシープラットフォームにシームレスに統合するのに苦労している。
「大手のベンダーに対して小規模なベンダーは機敏で、自社のポートフォリオ全体に一貫して新機能を組み込むのに適しているケースが多い。また、集中力が高くネットワーク管理がシンプルであるという利点もある。このような理由から、新しいサービスの出現は中小ベンダーに大手ベンダーの市場シェアを奪う絶好の機会を提供する」(スパイビー氏)
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