クロスプラットフォームでの分散型クラウドアプリ開発 そのメリット/デメリットとは:「競争力を維持したい企業にとって不可欠なもの」
TechTergetのポール・ナシャワティ氏はWebメディア「TechTarget」にてクロスプラットフォームでの分散型クラウドアプリ開発について解説した。分散型クラウドアプリ開発は、アプリケーションをさまざまなプラットフォームやクラウドで動かす新しい方法だ。
TechTergetのポール・ナシャワティ氏(Enterprise Strategy Group、プリンシパルアナリスト)は、2023年8月4日、Webメディア「TechTarget」にてクロスプラットフォームでの分散型クラウドアプリケーション(以下、アプリ)開発について解説した。
ビジネス競争がますます激化する中、複数のプラットフォーム(クラウド、データセンターなど。以下、クロスプラットフォーム)にまたがったエコシステムを構築する動きが活発になっている。こうした「分散クラウドエコシステム」で重要になるのが、クロスプラットフォームでスムーズに動作するアプリ「分散型クラウドアプリ」の開発だ。ナシャワティ氏は「分散型クラウドアプリを提供することは、競争力を維持したい企業にとって不可欠なものとなっている」と述べている。
分散型クラウドアプリ開発のメリット
ナシャワティ氏は分散型クラウドアプリ開発の利点を6つ挙げる。
1.スケーラビリティの強化
アプリを動作させるための環境(サーバ、データベースなど)を容易に拡張できるため、急激に負荷が上昇したりアプリの利用者が急増したりしても、ワークロードを簡単に処理できる。需要が変動するアプリケーションや、大規模なユーザーベースに対応しなければならないアプリであれば不可欠な要素だ。
2.遅延の軽減
データセンターが複数の場所に分散されており、ユーザーに最も近い場所でアプリが提供されるため、遅延が少ない。即時のやりとりが必要なアプリにとって特に有効だ。
3.信頼性の向上
従来のやり方では単一障害点による影響を回避できないが、分散型クラウドアプリであれば、クロスプラットフォームを利用しているため、冗長性とフォールトトレランス(一部が故障しても代替機能などで動作を継続させること)を保証できる。
4.費用対効果の向上
複数のデータセンターにリソースが分散するため、データセンター1つ当たりのコストを最適化できる。組織は、電力コスト、規制要件、ユーザーとの近接性などの要因を考慮して、戦略的にデータセンターを選択可能だ。
5.データレジデンシー(データ常駐性)の改善
厳格なデータ常駐規制のある地域で事業を展開する企業の場合、クラウド上にデータを保持することは難しい。「分散クラウドアプリ開発であれば、データをローカルに保存したまま、パフォーマンスを犠牲にすることなくコンプライアンス要件を順守できる」とナシャワティ氏は説明している。
6.柔軟なクラウドプロバイダーの選択
分散型クラウドアプリ開発であれば、単一のクラウドプロバイダーに拘束されない。さまざまなプロバイダーの独自の強みを活用し、より良い価格を交渉し、ベンダーのロックインを回避することも可能だ。
分散型クラウドアプリ開発のデメリット
クロスプラットフォームの分散型クラウドアプリ開発には多くの利点があるが、課題もある。クロスプラットフォームにまたがった開発になるため、コーディングやデプロイ、メンテナンスの面で複雑さが増す。ナシャワティ氏は「さまざまなプラットフォーム間で一貫性と互換性を確保するには、徹底的な計画と強固な開発慣行が必要だ」と指摘している。
セキュリティ
データが複数の場所とクラウドに分散しているため、データのセキュリティとコンプライアンスを確保する必要がある。強力な暗号化、認証メカニズム、定期的なセキュリティ監査が不可欠となる。
パフォーマンス
パフォーマンスのバランスをとるには、各プラットフォームに合わせた最適化戦略が必要となる。例えば、プラットフォーム固有の機能を使用したり、キャッシュメカニズムを採用したりして、コードを微調整することも有効だ。
チームコラボレーション
特に多様なプラットフォームを扱う場合は、開発チーム間の効果的なコラボレーションが不可欠だ。継続的なコミュニケーション、バージョン管理、統合された開発環境は、開発プロセスを合理化するのに役立つ。
ナシャワティ氏はまとめとして次のように述べている。
「クロスプラットフォームの分散型クラウドアプリ開発を採用することで、企業はアプリケーションの将来性を確保し、進化する技術環境にシームレスに適応できるようになる。強固な開発慣行と戦略的コラボレーションを通じて課題を克服することで、組織は分散クラウドコンピューティングの可能性を最大限に引き出し、デジタル時代のイノベーションを推進できるだろう」
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