Google、「Genkit」フレームワークのGo対応版を発表 AI搭載アプリの開発にどう便利なのか?:開発を助けるプラグインも利用できる
Googleはプログラミング言語Goで効率的に自然言語処理や生成AIアプリを構築できるフレームワーク「Genkit for Go」を発表した。
2024年7月17日(米国時間)、Googleは「Genkit for Go」を発表した。Googleの説明は以下の通りだ。
Genkit for Goとは
Genkit for Goは、GoネイティブでAI(人工知能)を搭載したアプリやクラウドサービスを構築するためのオープンソースフレームワークだ。なお、既にGenkitのNode.js対応版もリリースされている。2024年7月現在はα版を公開している。
「Genkit」のライブラリやツールを、Goの利点である高いパフォーマンスと同時実行性と組み合わせることにより、生成AIアプリを作成できる。ユースケースとして次のようなものが挙げられる。
- インテリジェントアシスタント:複雑なリクエストを理解し、旅行の予約や旅程表の作成などのタスクを自律的に実行する。ユーザーの好みに合わせてさまざまなタスクをカスタマイズできる
- カスタマーサポートエージェント:検索拡張生成(RAG)を使うことで、企業のナレッジベースやポリシーに基づいて、素早く個人に合わせて応答できる
- データ変換ツール:自然言語などの非構造化データを構造化フォーマットに変換、分析し知見を得られる
プロンプトエンジニアリングと管理の強化
より良いAI生成結果を得るためには、モデル、設定、プロンプト、出力形状を慎重に検討する必要がある。Genkitは、プロンプトエンジニアリングプロセスを合理化するシンプルなファイル形式である「Dotprompt」を提供する。
Dotpromptを使用すると、豊富なプロンプトテンプレート、入出力スキーマ、モデル選択、モデル設定オプションの全てを単一の.promptファイル内で定義できる。これにより、プロンプトに関する全ての設定を一元的に管理し、Goのソースコードと共にプロンプトのテスト、バージョン管理、デプロイが簡単にできるようになる。
GoogleとサードパーティーのAIサービスを統合
Genkit for Goの中核は、軽量でプロバイダーに依存しないフレームワークだ。Googleやサードパーティーが提供する特定のモデル、ベクトルデータベース、クラウドサービスとシームレスに統合するためのプラグインを提供している。
Genkit for Goでは、2024年7月時点で以下のプラグインが提供されている。
- Google AI for Developersプラグイン: 「Gemini」や組み込みモデルなど、Googleの生成AI APIを素早く利用できる
- Google Cloud Vertex AIプラグイン:Google Cloudの本番環境対応AIプラットフォームである「Vertex AI」から、Geminiや組み込みモデルにアクセスする。Googleの画像生成モデル、評価モデル、「Vertex AI Model Garden」のサードパーティーモデルも近日中にサポート予定
- Ollamaプラグイン:「Ollama」を使って「Gemma」「Llama」「Mistral」などのオープンソースモデルにアクセスし、ローカルで実行する
- ベクトルデータベースの「Pinecone」:ベクトルデータベースのPineconeと連携して、効率的なインデックス作成や検索操作ができる
- Google Cloudテレメトリープラグイン:AIアプリのログ、指標、トレースを「Cloud Logging」「Cloud Tracing」「Firestore」にエクスポートすることで、包括的に監視する
Genkitのプラグインは、あらゆるモデル、ベクターデータベース、評価ツールなどに対してオープンで拡張可能であるように設計されている。
開発者ツールとの統合
AIを搭載したアプリの構築には、効果的なプロンプトの作成、予測不可能な出力のデバッグ、検索プロセス最適化などの特有の課題が伴う。このような複雑な作業には、一般的なIDE(統合開発環境)ユーティリティーを超える専用のツールが役立つ。
Genkitには、コマンドラインインタフェース(CLI)とブラウザベースの開発者向けUIが用意されている。これらのツールは、生成AIアプリの開発を効率化し、合理化するのに役立つ。
「Visual Studio Code」や「Project IDX」で作業する場合は、IDEの統合ブラウザでGenkitの開発者向けUIを開くことで、コードと開発者UIを並べて表示して作業できる。
本番環境のオブザーバビリティ
デプロイの準備ができたら、Genkitを使用して本番環境でAIアプリを監視し、期待通りにユーザーにサービスを提供していることを確認できる。GenkitのGoogle Cloudテレメトリープラグインを使用すると、AI搭載アプリのログ、メトリクス、トレースをGoogle Cloudのオペレーションスイートに簡単にエクスポートできる。
Genkitの監視、収集機能は広く使用されている「OpenTelemetry」を通じて実装されており、多くの一般的なオブザーバビリティプラットフォームと統合できる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「TypeScript」「Go言語」などを扱うフリーランスエンジニアの需要が高まる パーソルキャリア
パーソルキャリアは「ITフリーランスエンジニアの平均月額単価ランキング」を発表した。職種別、業種別、言語別のいずれも、前回の調査から平均月額単価が上がっていた。 - GPT-4oなど生成AIをIoTアプリに組み込めるローコード開発サービス ソラコムが提供開始
ソラコムは、IoTアプリケーション向けローコード開発サービス「SORACOM Flux」の提供を開始した。同社は「機器から取得したデータや画像データと、生成AIによる分析、意思決定を組み合わせたアプリケーションを開発できる」としている。 - 生成AI対応アプリの大規模展開で、世界のクラウドサービス支出が20%以上成長 Gartner予測
Gartnerはパブリッククラウドサービスにおける世界のエンドユーザー支出予測を発表した。生成AIとアプリケーションのモダナイゼーションが支出を後押ししているという。