本当に進んでいる? 調査から見えてきた「データ活用」の今:事業部門とIT部門の協力が不可欠
「DXを成功に導くにはデータの整備、活用が不可欠」といわれるようになり、はや数年。企業はどのような業務に活用しているのか? DXのように価値創出につなげているケースは多いのか? 200人が回答した調査結果を、有識者と分析した。
44%は「データはあるが、まだ分析のための整備や蓄積ができていない」
「DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功に導くにはデータの整備、活用が不可欠」――経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」からはや数年、企業のデータ活用はどこまで進んだのか。それを探るためにITmediaでは2023年3〜5月にかけて「DX時代のデータ活用」に関する読者アンケート調査を実施した。
約200人から得た回答からは、データ活用において抱えている課題や求められる解決策、今後の取り組みに向けた将来像などが明らかになった。ソリューションベンダーとして顧客の課題と向き合うデル・テクノロジーズの担当者とともに、企業におけるデータ活用の現在位置と将来像を整理する。
まずは、アンケートの回答を「データ活用の現状と課題」と「課題解決に向けたアプローチとこれからのデータ活用の展望」という2つのテーマに分けて分析する。
1つ目のテーマである「データ活用の現状と課題」については、データ活用の現在の状況について聞いたQ1、データ活用の目的について聞いたQ2、データ活用の課題について聞いたQ3から、それぞれ確認する。
アンケート結果によると、24%が「データを分析し、分析結果から新たな価値創出につなげている」と回答していたが、最も多い回答は「データはあるが、まだ分析のための整備や蓄積ができていない」で44%だった。このことから、DXやデジタル推進といったトレンドが注目されている現在でも、データ活用から価値創出までつなげられている企業は少ないといえる。
また、データ活用の環境については「データの整備や蓄積ができている」が27%、「データの加工や高速処理をする環境を整えている」が15%となっており、環境は整備しているが具体的な成果に結び付けることができていないことがうかがえる。
さらに「分からない」「分析、活用できそうなデータが存在しない」を合わせると20%に達することから、DXに対してそもそも期待していないか、取り組みに消極的な姿勢も感じられるなど、二極化している傾向がある。
データ活用のライフサイクルごとに課題がある
データ活用の目的については、「製品開発・サービス開発」が最も多く、40%。次いで「品質管理・歩留まり改善」(35%)、「経営分析」(32%)、「マーケティング/営業」(32%)、「AI(人工知能)、機械学習」(24%)と続いた。
質問内容は、業務に関するものと具体的なツールに関するものに分かれている。傾向としては、製品開発、品質管理、経営分析、マーケティングなど、業務に関するものへの回答が多く占め、AI、IoT(Internet of Things)、自然言語処理、画像認識などツールに関するものは少ないという結果となった。
これらの結果からは、データ活用をコスト削減や業務効率化だけでなく、製品開発や営業活動などに生かしていこうという意欲が強まっていること、活用の目的は明確化しつつあるものの、具体的にどのようなツールを活用するかにまでは意識が及んでいないことがうかがえる。
データ活用の課題については、回答が多かった順に「大量データを扱える技術者がいない」(38%)、「システム間のデータ連携ができていない」(33%)、「大量データを分析できるツールがない」(26%)、「リアルタイムにデータを扱えない」(23%)、「運用保守における人的負荷やコスト」(23%)となった。
総じて、企業のさまざまな取り組みで課題になりやすい「人材不足」「技術、スキル不足」「コスト」がデータ活用においても大きな課題になっていることが確認できた。また、内容については、「システム間のデータ連携」「大量データの取り扱い」「リアルタイムデータ処理」などデータの収集、蓄積、活用、管理といったライフサイクルごとに具体的な課題を抱えていることも分かった。
データ保護やセキュリティへの関心は低め
2つ目のテーマである「課題解決に向けたアプローチとこれからのデータ活用の展望」についてはデータ活用における設備の導入、更新のポイントについて聞いたQ5の結果を基に分析する。データ活用における設備の導入、更新で重視するポイントについては、「費用対効果」が最も多く、49%。次いで「運用管理のしやすさ」(44%)、「導入コスト」(42%)、「運用管理コスト」(34%)、「データ量の増加などに対応するシステムの拡張性」(27%)、「導入のしやすさ」(26%)、「システムの信頼性/可用性」(23%)などが挙がった。
コストに関する回答を除くと、運用管理性、信頼性や可用性といった非機能要件を重視していることが分かる。ただ、非機能要件の中でも「データ保護機能」(16%)や「事業継続計画(BCP)/災害復旧(DR)」(7%)は相対的に低い結果となっている。一方、データ活用の機能要件といえる「I/O性能」(12%)、「バックアップ/リストア処理の性能」(17%)も相対的に低い結果なのが気になるところだ。
デル・テクノロジーズに聞く、データ活用に向けたシステム環境整備のポイント
この結果を、デル・テクノロジーズの五十嵐 修平氏(UDS事業本部 本部長)と矢ヶ部 謙一氏(UDS事業本部 SE部 マネージャ)はどう捉えたのか。両者にインタビューした。
──データ活用ができている企業とできていない企業で二極化傾向にあるようですが、この結果についてどう思いますか。
五十嵐氏 われわれの肌感覚とも一致します。データ活用は、部門や部署ごとの活用は進んでいるものの、全社的に横断した形で環境を整備できている企業はまだ多くないという印象です。事業部門が取り組みをリードする一方、IT部門のサポートがまだ追い付いていないとも言えます。
矢ヶ部氏 「システムが提供する価値」に事業部門側が気付いていない可能性もあります。データを蓄積し、自分たちで活用しているだけで十分と考えてしまうと、全社的にデータを共有して活用しようという発想になりにくい。そのため、インフラの見直しや再構築まで進まないと推測します。
五十嵐氏 もう1つ気を付けたいのは、データ活用に取り組む企業は着実に増えていますが、取り組みが進めば新たな課題に直面しやすいということです。データを分析してみたら、もっと違う観点でのデータがほしい、といったニーズが生まれてきます。状況に合わせてシステムの在り方を常に見直していく必要があります。
──データ活用の目的と手段に関するアンケート結果についてはどのように分析していますか。
五十嵐氏 まず、目的と手段は分けて考えるべきです。アンケート結果からも分かるように、データ活用によって何を実現したいかという“目的”は明確になっている企業が多いです。ただ、どのような技術、製品を適用していけばよいかとなると漠然としがちです。
矢ヶ部氏 最近注目されている「生成AI」をどう業務に適用するかはまだ判断が難しいところがありますが、特定の業務に適用できるAIや機械学習のツールは成熟してきています。パートナー企業などにアドバイスをもらいながら、目的を実現するツールとしてデジタル技術の活用を目指すべきでしょう。
──データ活用のライフサイクルごとの課題についてどのように対処すべきでしょうか。
五十嵐氏 なぜ課題が発生するかといえば、前提として業務やシステムのサイロ化があります。業務とITが乖離(かいり)している、システムがオンプレミスとクラウドに分散しているといったことはよくあります。これはわれわれのようなITベンダーでも起こっていることです。デル・テクノロジーズの社内システムについても「データの分散化が加速している」という認識があり、CDO(最高デジタル責任者)が旗振り役として改革を進めています。分散環境の中でどうデータを管理するかは、われわれも含め、全ての企業が抱える課題だと思います。そのため、経営層やIT部門がリードしていくことも重要になってきます。
矢ヶ部氏 事業部門の担当者とITシステムの担当者が、“企業の両輪”になって改革を走らせる必要があります。データ活用をするのは事業部門であり、IT部門だけでは取り組みはうまく進みません。ハードウェアやシステムの視点でいえば、自社環境に適した在り方を模索することが重要です。データ活用だからといって必ずデータレイクやレイクハウスを作らなければならないわけではありません。システム連携が難しければわざわざコストをかけて無理に連携させる必要もないと考えます。もちろん、統合するメリットが大きければデータ管理の共通基盤をつくって統合すべきです。
──適材適所でシステムを使い分けるような発想が重要ということですね。
五十嵐氏 はい。オンプレミスとクラウドの選択もそうです。オンプレミスが有利なこともありますし、クラウドが有利な場合もあります。われわれは「マルチクラウドバイデザイン」を提唱しています。必要に応じてオンプレミスとクラウドを最適に組み合わせる考え方です。
矢ヶ部氏 マルチクラウド環境を管理しようとすると、オンプレミスとクラウドのシステム同士がスパゲティのように複雑に絡み合い、統制がとれなくなる場合もあります。ただ、近年は、オンプレミスのハードウェアをクラウドサービスのように利用できるサービスもありますし、オンプレミス機器を仮想化してクラウド上で稼働させるサービスもあります。また、マルチクラウド環境を統合的に監視、管理できるようなソリューションもあります。それらもうまく活用してほしいと思います。
──データ活用のインフラについて、データ保護やセキュリティへの関心が低いという結果でした。
五十嵐氏 お客さまと接していても、セキュリティとデータ管理がうまく連携できていないと感じます。ネットワークセキュリティやクラウドセキュリティという取り組みは実施しているのですが、それがデータ保護と結び付いていないと、実際にインシデントが起こったときに対応できないケースも出てきます。
矢ヶ部氏 セキュリティとバックアップ、災害対策なども結び付いていないことが多いと感じます。データを活用するために、セキュリティやバックアップをセットで検討することが重要です。
──データ活用に向けて、デル・テクノロジーズはどのようなソリューションを提供していますか。
五十嵐氏 企業が抱えるさまざまな課題に対応できる製品として、スケールアウトNAS「Dell PowerScale」があります。クラウド、オンプレミスで利用でき、構造化データ、非構造化データの区別なく高速処理が可能です。システムやデータの連携、データレイク、レイクハウスなどとしても利用できます。
矢ヶ部氏 Dell PowerScaleは、もともとファイルサーバとしてスタートした製品です。小さく始められて拡張可能な点が特徴で、可用性や信頼性はもちろん、バックアップや災害対策、ランサムウェア対策などのセキュリティ機能も充実しています。データ活用におけるライフサイクル全体で効果的な対策を講じることができるストレージとして検討してみてください。
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