OpenSSL Project、「OpenSSL 3.2.0」を公開:クライアント側QUICやTLSハンドシェイクにおける証明書圧縮に対応
OpenSSL Projectは、クライアント側QUICやTLSハンドシェイクにおける証明書圧縮に対応した「OpenSSL 3.2.0」を公開した。
OpenSSL Projectは2023年11月23日(米国時間)、「OpenSSL 3.2.0」を公開した。OpenSSLは、SSL/TLSのツールキットおよび暗号化ライブラリを提供するオープンソースソフトウェア(OSS)だ。
OpenSSL 3.2.0では、トランスポートプロトコル「QUIC」(Quick UDP Internet Connections)に対応し、TLSハンドシェイクにおけるサーバ証明書の圧縮処理、「Ed25519ctx」など新たな暗号化アルゴリズムがサポートされた。
2年以上にわたる開発作業の成果であり、4000を超えるコミットと300を超える開発者からの貢献によりOpenSSL 3.2.0を公開できたと、開発チームは述べている。
OpenSSL 3.2.0の新機能
OpenSSL 3.2.0では、以下のような機能が追加されている。
- マルチストリームのサポートを含む、クライアント側QUICのサポート(RFC 9000)
- zlib、zstd、Brotliのサポートを含む、TLSにおける証明書圧縮(RFC 8879)
- ECDSA署名(RFC 6979)
- 既存のEd25519とEd448のサポートに加え、Ed25519ctx、Ed25519ph、Ed448phのサポート(RFC 8032)
- AES-GCM-SIV(RFC 8452)
- Argon2(RFC 9106)とスレッドプール機能のサポート
- HPKE(RFC 9180)
- TLSでRaw Public Keyを使用する機能(RFC 7250)
- OSがサポートしている場合におけるTCP Fast Open(RFC 7413)のサポート
- TLSにおけるプロバイダーベースのプラグイン可能な署名スキームのサポート(サードパーティーのポスト量子アルゴリズムやその他のアルゴリズムプロバイダーが、TLSでそれらのアルゴリズムを使用できるようになる)
- TLS 1.3におけるBrainpoolカーブのサポート
- SM4-XTS
- Windowsシステム証明書ストアを信頼されたルート証明書のソースとして使用できるようになった。ただし、同機能は現在デフォルトでは有効になっておらず、環境変数を使って有効化する必要がある。将来的には、デフォルトで有効化される予定だ
OpenSSL 3.2.0の主な新機能と重要な変更点の完全なリストはGitHubの「NEWS」に、より詳細な変更点はGitHubの「OpenSSL CHANGES」で公開されている。OpenSSL 3.2.0は公式サイトのダウンロードページまたはGitHubの「Release」タグから入手できる。
OpenSSL Projectは、OpenSSL 3.2.0の次期バージョンがOpenSSL 3.3.0であり、2024年4月30日までに公開予定であることも明らかにした。OpenSL 3.3.0では、サーバ側QUICのサポートなど複数の機能追加を予定しているという。
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