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AIが意外とできない“簡単な”お仕事「CLOVA note」サイコー!

2023年は、AIの得手不得手がある程度明確になった1年でした。来年は精進して私の仕事をもっと奪ってほしいものです。

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 2023年が終わりますね。今年のIT的な話題といえば、やっぱり生成AIです。

 2022年後半から画像生成AIが大きな話題になり、同年11月末に「ChatGPT」が登場。「AIが人間の仕事を奪う」などとも言われました。フリーライターの筆者は「いよいよ、自分の仕事がなくなってしまう」とメンタルが不安定になり、カウンセリングでその不安をぶちまけていたぐらいです。

 あれから1年。「あの不安は何だったんだろう」と思うぐらい、筆者の仕事は変わっていません。むしろ、生成AIのおかげで楽になったり、楽しくなったり、これまで難しいと思っていた新たな分野に挑戦できたりしています。逆に、「これはAIにもできるかも?」と思った仕事が意外と全然できなくて、びっくりしたりしています。

AIが得意な仕事は

 例えば、英語ソースが多い分野の原稿を依頼されたときに、「Bingチャット」を使って英文の検索結果を日本語にしてもらいながら調べることで、不安なく取り掛かれるようになりました。長文の概要をつかむとき、ChatGPTにいったん要約してもらって概要をつかんだ後に本文を読み込むと、理解しやすくなります。

 インタビューの仕事でもAIが活躍します。「CLOVA note」によるAI文字起こしは最高。精度が高く、IT系のキーワードや固有名詞も拾ってくれる上、話者を書き分けてくれ、話者アイコンが「LINE FRIENDS」のクマちゃんなどかわいいのもすてき。書き起こしが段落で分かれていて、タップするだけでその部分の音声が再生されるのも最高です。しかも無料。やばい。

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CLOVA noteの公式サイトより

 CLOVA noteを使うまでは、インタビュー中にノートPCに超高速で発言をメモし、書き切れなかった部分は、インタビュー後に音声を全て聞き返して補足。その後に記事執筆に入っていました。

 聞き返し作業はインタビューにかけた時間より長い時間がかかって無駄が多く、本当に嫌いでしたが、CLOVA noteを使い始めて以降、メモを見ながらAI書き起こしを確認し、必要な部分だけ聞き返すことが可能になりました。マジ最高。大好き。

 もともとインタビューは好きなのですが、書き起こしだけがつらくてつらくて嫌いでした。CLOVA noteのおかげで、インタビュー仕事が「楽しいだけ」になりました。

AIが意外とできない“簡単な”仕事

 一方で、「これぐらいならAIにできるでしょう」と思っていた仕事が、意外と任せ切れないことも分かってきました。例えば「リリース起こし」です。

 リリース起こしとは、企業が発表した新製品などの情報「ニュースリリース」を要約し、記事の形にまとめる仕事のこと。新人記者のトレーニングにも使われる、基本的な仕事の一つです。

 「要約といえばChatGPTの得意技。リリース起こしぐらいは朝飯前だろうし、私が受託しているリリース起こしの仕事、なくなるかもなあ」。そんなふうに考えていた時期もあったのですが……。AIを使ったリリース起こしは何度も試みたのですが、単純な要約以上のものにはならないのです。

 筆者は新人記者時代、「ニュースバリューを判断してタイトルを作り、重要な順に、逆三角形で本文を書く」ことをたたき込まれました。ニュースバリューは普遍的なものではなく、メディアによって変わります。IT系メディアならばITやシステム関連の内容が、経済メディアなら経営関連の数字が重要。さらに、メディアの方向性や記者の価値観で変わります。

 でもAIにはそうした判断基準がないため、「ニュースリリースで書かれた順番」、つまり「企業がアピールしたい順番」に書いてしまう、ということが起きます。結果、「記事のような文体だが、企業の宣伝(リリース)文の要約」が出力されることになり、メディアが求める記事は作れません。

 AIに価値判断の基準を教え、チューニングしていけば、ある程度は書けるようになるのかもしれません。ただそれも、リリースに書かれた文章の再構成以上にはならないはず。リリースに書かれていない背景情報や、その企業の過去の動き、ライバル企業の動向、市場動向などをベースにバリューを判断したり、書く順番や内容を考えたりするのは難しそうです。

 リリース起こしって、思っていたより難しい仕事だったのかもしれないなあ。

2024年は、どれぐらいの仕事が「AIに奪われる」だろうか

 まとめると、ライターの仕事としては、面倒なのに直接お金にはならなかった「文字起こし」をAIに任せられるようになった一方で、お金をもらっている「リリース起こし」は代替してもらえなかったのが2023年のAIでした。

 ITエンジニアの皆さんも、「AI以前にどう仕事していたか、分からなくなった」レベルでAIを活用している方が多いと聞きますが、「AIで仕事がなくなった、奪われた」という話はあまり聞いたことがありません。

 ただ、AIの進化はすさまじいものがあります。2022年に「これはできないよね」と思っていたことが2023年に急にできるようになったり。例えば画像生成AIは、2022年から2023年にかけて画質がどんどん良くなり、人を描く時の手足の不自然さも減り、さらに、動画まで生成できるようになりました。「Suno AI」など、歌詞入りの楽曲を作って歌ってくれるAIも話題です。

 2024年はどうなるでしょうか。ライターとしてテキスト系AIに期待することは、文字起こしの精度のさらなる向上です。変わった単語などもさらに正確に聞き取りつつ、「うーん」「そうですね」など意味のない発言を省くモードや、質問に関連する内容だけを抽出して、脱線した話を別にしてくれるモードなんか、出てくるといいなあ。ただ、「リリース起こしが完璧にできるAI」は、出てくるとちょっと困るかもしれない。仕事が減って、収入が減っちゃうもんなあ。

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