「シンクライアント 3.0」は何が違う? テレワークの快適性を爆上げした技術とは:NEC、NVIDIA、Omnissaのパートナーシップで実現
一時しのぎのシンクライアント環境を今も使い続けていれば、当然さまざまな「性能不足」に苦労することになる。快適性と安全性を両立し、今どきのテレワークを可能にする「シンクライアント 3.0」の姿とは?
テレワークが常態化する中で露呈した“あの性能不足”
テレワーク導入に勢いがついたきっかけの一つは、日本開催の国際的なスポーツイベントだった。大会期間中の首都圏は大変な交通混雑が予想されたことから、政府はテレワークを推奨し、企業もそれに応えるべく準備を進めてきた。そんな折にコロナ禍が重なり、当初は「数週間しのげればいい」と考えて準備したテレワーク体制を、長期にわたって継続しなければならなくなった。
この想定外の混乱に拍車を掛けたのが、テレワークのために導入したVDI(Virtual Desktop Infrastructure)とシンクライアントだった。NECの劉 伯誠氏(BluStellarビジネス開発統括部 プロフェッショナル)はこう振り返る。「テレワークを1年以上続けるには、リモートでも緊密なコミュニケーションを取るためのIT環境が必要になります。しかし一時しのぎで導入したシンクライアントでは、さまざまな支障が生じました。よくあるトラブルとしてはWeb会議でカメラを起動できない、バーチャル背景などのエフェクトが使えない、Web会議ツールと同時に別のアプリケーションを起動すると処理落ちする、などです」
アフターコロナの現在、性能不足に起因する懸念から、シンクライアントをやめてFAT PC(端末側で処理を実行する一般的なPC)に戻すべきかどうか悩む企業もある。しかしもともとは「端末に情報が残らない」「デスクトップの集中管理ができる」という点を重視してシンクライアントを選んでいたはずだ。「安易にFAT PCに戻してしまうと、この大前提が崩れてしまいます」と劉氏は警鐘を鳴らす。シンクライアントの導入そのものに問題があるわけではない。今どきのテレワークで要求される技術要件を満たせないVDIを使い続けていることが問題なのだ。
今どきのテレワークにはグラフィックス性能が不可欠
劉氏は、シンクライアント技術の進化を3つの世代に区切って説明する。
「シンクライアント 1.0」は、2010年ごろに登場した初期のVDIだ。NECはVDI環境を数千人、数万人規模のユーザー企業に展開するために、基盤構築のノウハウを磨いてきた。
「シンクライアント 2.0」は、シンクライアント1.0世代が直面してきたストレージの負荷問題に対処した世代だ。NECはオールフラッシュストレージを活用することで、この課題を克服した。
そして「シンクライアント 3.0」が、今どきのテレワーク要件を満たす世代となる。「GPUの技術をVDIと組み合わせることで、FAT PCとシンクライアントの間に存在していたグラフィックス性能のギャップを解消します」と劉氏は語る。
GPUを追加することでVDIのグラフィックス性能が向上する――それがなぜシンクライアントの課題解決につながるのか。ポイントは、今どきの業務やテレワークでは誰もがWeb会議を必要とし、グラフィックスを多用するアプリケーションを標準的に利用するということだ。e-ラーニングなど動画コンテンツを業務で視聴する機会も一般的になった。
「Windows 10」以降はOSが標準的にGPUを必要としており、グラフィックス処理の負荷が高まっている。さらに言えば「Microsoft Office」やWebブラウザなどのデスクトップアプリケーションや、さまざまなSaaSのアプリケーションが備えるグラフィックス機能はますますリッチ化している。
こうした背景から、近年のFAT PCはレベルに差はあれ標準でGPUを搭載していることが多い。旧来のVDI構成は、一般的な事務作業での利用を想定してGPUを搭載しないこともあった。そのため、仮想デスクトップでのCPUの負荷が急激に高くなってしまっている。このギャップが、問題として顕在化しているのだ。エヌビディアの後藤 祐一郎氏(エンタープライズ事業本部 vGPUビジネス開発マネージャー)は、「VDIにも最適なGPUを追加し、CPUが背負っていたグラフィックス処理をGPUにオフロードすれば、シンクライアントにおいてもCPU負荷を軽減して、仮想デスクトップ全体のパフォーマンスを改善できます」と説く。
ただし各ユーザーの仮想デスクトップに対して物理的なGPUを割り当てるとなれば、VDIのシステム構成は非常に複雑なものとなり、コストも大幅に上昇してしまう。この課題を解決するのが、後藤氏が「GPU分身の術」と称する仮想GPUソリューション「NVIDIA vGPU」の技術だ。
「NVIDIA vGPUとは、NVIDIA vGPUソフトウェアを利用して、VDIのホストサーバに搭載した物理GPUのメモリを仮想GPU(vGPU)として分割、複数台の仮想デスクトップで高いコア性能を効率的に最大限共有しながら利用できる仕組みです。少ないGPU枚数で費用を抑えて多くのユーザーがGPUを利用可能になります。各仮想デスクトップで性能をフル活用でき、ベアメタルと遜色ないパフォーマンスを発揮します」と後藤氏は説明する。例えば仮想マシン向けGPU「NVIDIA A16」は、1280個のCUDAコアと16GBのGPUメモリのセットを4基内蔵している。仮にこの1枚のGPUとオフィスユーザー向けのソフトウェアNVIDIA vPCで1GB(A16-1B)ずつのvGPUを分割した場合、64台の仮想マシン(VM)に対して仮想GPUを割り当てられる。
1台のサーバにNVIDIA A16×2枚搭載すれば、1サーバに最大128台の仮想マシンを集約可能になる。パフォーマンスも改善して、サーバ集約率も向上することで、コスト削減にもつながるのだ。
3000台の仮想マシンが必要な場合、CPU VDIではサーバ60台、vGPU付きVDIではサーバ24台と、“36台”ものサーバ台数を削減できる。
独自の画面転送プロトコルで高品質な表示を実現
NVIDIA vGPUと組み合わせた導入実績が豊富にあるのがOmnissaのVDIソフトウェア「Omnissa Horizon」(旧称「VMware Horizon」)だ。2023年11月にBroadcomがVMwareを買収し、BroadcomのEUC(エンドユーザーコンピューティング)事業本部が独立。その後新会社として新たに立ち上がったのがOmnissaだ。同社は VMware 時代から手掛けてきた EUC 事業の製品群を提供する。
Omnissa Horizonの機能で注目したいのが「Blast Extreme」という独自の画面転送プロトコルだ。Omnissaの金 容鎮氏(ソリューションエンジニアリング本部 パートナー&コーポレートSE部 部長 兼 本部長代理)はこう説明する。「Blast Extremeは、ユースケースに応じて複数のコーデックから適切なものを選択できます。これがユーザーエクスペリエンスを支えています」
例えばH.264やHEVCによる動画圧縮コーデックでは多くの計算処理が必要で、これまでCPUに高負荷をもたらす一因となっていた。しかしBlast ExtremeはNVIDIA vGPUと連携することで、さらにNVENCと呼ばれるハードウェアエンコーダーも利用可能になりH.264やHEVCなどのコーデック利用時にWeb会議の映像や動画コンテンツをスムーズに画面転送し、コマ落ちしない高品質な表示を実現できる。Blast Extremeは大量のコーデック処理をNVIDIA vGPUにオフロードし、CPU負荷を軽減するのだ。「現行バージョンの『Omnissa Horizon 8』からHEVCのオプションとして、ハイダイナミックレンジ(HDR)エンコーディングも利用可能になり、グラフィックス品質がさらに向上します。この処理もNVIDIA vGPUにオフロードできます」と金氏は説明する。
Omnissaの柳瀬 央氏(Head of Sales 兼 パートナー&コーポレート営業統括本部 統括本部長)は、「Omnissa Horizonを購入したお客さまには、サーバ仮想化ソフトウェア『VMware vSphere』およびストレージ仮想化ソフトウェア『vSAN』をバンドルした『VMware vSphere Foundation for VDI』(VVF for VDI)のライセンスが引き続き付与されるので、安心してご利用いただけます」と説明する。ベンダー名は変わっても、提供する組織体制は一貫して継続しており、機能およびサービスでユーザー企業に不利益が生じるような変更は加わっていないという。
3社連携でシンクライアント 3.0構築を強力に支援
NVIDIA vGPUとOmnissa Horizonを取り入れた構成のシンクライアント 3.0は、快適なテレワークを実現する答えの一つになるはずだ。シンクライアント 3.0の普及を目指してNECは提案に力を入れ、サポート体制を整えている。
「VDIを基盤としたシンクライアント環境の構築を20年以上にわたり支援し、多くの実績を重ねてきた当社は、シンクライアント 3.0へ切り替えていく過程でより良い提案をするために、技術ノウハウを蓄積しています。NVIDIAから最新機材を借り受け、vGPUがどのようなユースケースおよび条件で効果を発揮するのか検証を繰り返してきました。例えば『Zoom』や『Microsoft Teams』などを使ってWeb会議をする際に、ユーザーの体感性能はどれだけ改善されるのか、サーバ側のCPU負荷はどれだけ下がるのか、データを大量に収集、分析して得られた知見に基づき、お客さまのニーズにお応えする最適な提案を目指します」と劉氏は語る。
GPUや仮想化技術だけでなく、VDIのユーザーエクスペリエンスに関わるストレージとネットワーク設計の部分にも豊富な知見を有しているのがNECの強みだ。大手SIer(システムインテグレーター)のJSOLも、NECの提案でVDI構成を見直し、シンクライアント 3.0を手に入れたユーザー企業の一社だった。Omnissa HorizonのホストサーバにNVIDIA A16とNVIDIA vGPUを搭載し、グラフィックス処理や動画のエンコード、デコード処理をGPUにオフロードすることで、仮想デスクトップ全体の性能向上を実現。約3000人規模の従業員への展開を2024年6月に完了し、テレワークに関する課題を解消したという。ユーザー企業がテレワークを継続する限り、VDIをモダナイズする流れは今後も加速するはずだ。NEC、NVIDIA、Omnissaの連携体制は、ユーザー企業にとって心強いものになるだろう。
数多くの仮想GPUソリューション事例を知り尽くすNVIDIA社、「NVIDIA vGPU」との組み合わせ導入実績も豊富に持つOmnissa Horizon(旧称「VMware Horizon」)を提供するOmnissa社、そしてシンクライアント領域において数多くの導入実績・ノウハウを持つNECがGPUシンクライアントで実現する「シンクライアント3.0」をさらに詳細に語り尽くします。
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