会社を「丸ごとスクラム化」すると何が起きる? 事例で分かる、開発だけじゃないスクラムの可能性とは:Developer eXperience Day 2024セッションレポート(1/2 ページ)
ビジネスを取り巻く環境の変化は激しく、変化に追従するためのスピードが欠かせない状態だ。一方、具体的にどうすれば自社のスピード感を高められるのかははっきりしない、という企業は多いだろう。2024年7月に開催された「Developer eXperience Day 2024」のセッションを基に、そのヒントを探る。
素早く変化する市場のニーズに追従するため、「アジャイル開発」を採用している企業は多いだろう。代表的なフレームワークである「スクラム」は、短期間の開発サイクル(スプリント)を繰り返すことで、変化するニーズに柔軟に対応しながら、スピード感のある開発を実現する手法だ。それぞれの役割が明確で、情報の透明性も高いことからチーム全体の意思決定が早いという特徴もある。
こうした“スクラム”の取り組みを開発の外まで拡大した企業がある。それがメディカルフォースだ。
同社は「最速の組織」を目指し、事業運営にスクラムを適用させた。本稿では、2024年7月に開催された「Developer eXperience Day 2024」のセッションを基に、スクラムの新たな可能性を探る。
会社の力は「スピード感」にある
メディカルフォースは、自由診療向けのSaaS(Software as a Service)「medicalforce」を提供している。medicalforceには、電子カルテ、予約管理といった機能から、会計、在庫管理、デジタル問診表、電子同意、カウンセリング、決済などまで幅広い機能が実装されている。同社の取締役CTO(最高技術責任者)の畠中翔一氏は「スタートアップにおいて特に重要なのはスピード感だ」と語る。
「競合との差別化を図り、市場での優位性を維持するためには、競合より速いスピードで新機能や新サービスを開発し、独自のロードマップを作成、実行することが重要です。しかし、“ミッションやビジョンに沿わないことをやっている”、“無駄な仕事をしている”、“ミッションやビジョンが曖昧になっている”といった状態ではスピード感は出せません」
逆に言えば、ミッションやビジョンを明確にし、それに沿っていないときはすぐに軌道修正する。そして、無駄なことはできるだけやらない。こうすることで、他社と差別化できるスピード感を手に入れられると言えるだろう。
実はこうした考え方は、スクラムに備わっている。それが「検査」と「適応」だ。ここで言う“検査”とは、スクラムの進捗(しんちょく)や成果物を定期的に確認し、評価する活動のこと。“適応”とは、検査によって得られた情報に基づいて、プロセスや作業内容を調整することだ。畠中氏はこうした点についてスクラムに可能性を感じ、組織全体でのスクラム導入を進めることにした。
スクラムの「役割」と「イベント」を再定義する
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