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エンジニアの自律的な成長と長期的なキャリア形成を支えていくボッシュの人事施策「私自身」が主役のキャリア開発

縦・横・斜めの施策で従業員の成長を支援するボッシュの研修制度と人事施策。その根底に流れる、人財育成にかける期待と願いとは。

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 2024年5月に新本社を横浜市に移転したグローバル企業「ボッシュ」。前回の記事では、エンジニアの働きやすさを追求した新本社の全貌をお伝えした。今回は、教育制度や人事施策などについて徹底解剖する。


ボッシュ 人事部門 ボッシュトレーニングセンタージャパン マネージャー 小松崎晃義氏(左)、人事部門 人材開発グループ マネージャー ボックまり子氏

ボッシュでエンジニアが活躍できる理由

 かつてハードウェア開発とソフトウェア開発は、全くの“別物”と捉えられていたが、この垣根は次第に失われつつある。今や多くのハードウェア製品は、組み込みソフトウェアによって動作が制御され、さまざまな機能が実現されている。

 自動車業界で研究開発が活発化しているSDV(Software-Defined Vehicle)は、その最たるものだ。直訳すると「ソフトウェアによって定義される車」であり、「将来の車はスマートフォンにタイヤが付いたようなものになる」とも語られている。ソフトウェアを更新することで、車の機能をどんどん進化させ、ユーザーに新たな体験価値を提供できるのだ。この技術革新を加速させるために、ハードウェア業界でもソフトウェアエンジニアが活躍する場はますます広がっており、人財に対する需要も高まっている。

 こうした潮流の中でハードウェアとソフトウェアの両面で卓越した技術力を発揮し、モビリティ、産業機器テクノロジー、消費財、エネルギー・ビルディングテクノロジーという4つの事業領域を中心に、グローバルで存在感を高めているのが、ドイツに本拠を構えるグローバル企業のボッシュだ。

 エンジニアの採用もさることながら、一人一人のスキルアップやキャリア形成など育成面に注力することで、層の厚いソフトウェア開発の体制を築いている。

 前回の記事で紹介したボッシュの新本社は、その実践の場となるものだ。東京、横浜エリアの複数拠点に分散していた人財を集約することで、事業部間やグループ会社間を横断したコラボレーションを促進するとともに、一人一人の能力を最大限に引き出し、自律的な成長と長期的なキャリア形成を支えていく人事施策を展開している。

「私自身」を中心に位置付けた、自律性を重んじる人事施策

 エンジニアをはじめとする多様な人財の育成と活用に向けて、ボッシュが特徴としているのは、「自らのキャリアについて主体的に考える機会づくり」だ。人材開発グループのボックまり子氏は、こう語る。

ボックまり子氏
ボックまり子氏

 「人財育成に関しては特に日系企業の場合、人事部門や教育部門などが用意したプログラムに基づいて、新入社員や中堅従業員、管理職といった階層別に実施するケースが多かったように思います。これに対してボッシュでは、一人一人の自律性や自主性を重んじており、人財育成の中心には、必ず『私自身』が位置します」

 ボッシュの従業員(=私自身)は、仕事上で必要な能力やキャリアを高めるために自ら率先して行動する。利用可能な育成機会や人財開発ツール、人脈を積極的に活用し、自らの成長に必要な方向付けや着想を求めていくのだ。

 もっともボッシュに入社したばかりの人財が、いきなり上記のような人事施策の考え方を理解し、能動的に行動するのは困難だ。

 「そこで直属の上司や、人事部門のHRビジネスパートナーがサポートに当たります」(ボック氏)

 従業員育成の最初の窓口となるのが上司だ。上司の責任の範囲内で一人一人に適切なフィードバックを与え、指導し、育成に積極的に取り組む。また、従業員の希望と思いを会社の利益と結び付けるための視点を提供する。

 担当HRビジネスパートナーは従業員の能力開発について、従業員やその上司をサポートし、指導するとともに、適切なツールや施策情報を提供する。

図1
ボッシュにおける育成の考え方(出典:ボッシュ提供資料)《クリックで拡大》

縦・横・斜めの学びを通じて、一人一人に合った成長を促す

 自律的なキャリア形成を後押しするボッシュの人事施策における、もう一つの大きな特徴が「縦・横・斜めのつながりを生かした成長支援」だ。

図2
縦・横・斜めのつながりを生かした成長支援(出典:ボッシュ提供資料)《クリックで拡大》

 縦とは「日常業務を通じた学び」だ。OJT(On the Job Training)で日々の業務から学びつつ、上司と業務上の目標や成長機会について直接話す年3回の目標・評価面談や、上司や人事と今後2〜5年間の成長機会について話す個別育成面談などでもしっかりサポートする。

 横は「新たな経験からの学び」だ。社内公募や海外赴任の他、週1回の期間限定で他部署での業務を経験する「Internal STA」(短期社内インターン)といった制度が用意されており、従業員は自ら手を挙げて応募できる。

 斜めは「日常業務を離れた学び」だ。従業員が新たな知識やスキルを獲得するための各種研修の他、ボッシュの取り組みでユニークなのは、従業員自身の自由なテーマ設定で学べる「SOLF」と呼ばれる自主勉強会も開催している。ここで、自分の部署以外の人たちとのつながりが生まれる。

 「例えばエンジニアが生成AIについて理解を深めたい、実務に応用できるスキルを身に付けたいと思えば、自らのイニシアチブで周りの有志を募って勉強会を開催できます。もちろん自ら講師を務めることも可能で、ボッシュはそんな従業員の自発的な活動を後押ししています」(ボック氏)

 加えて、メンタリングやコーチングといった制度にも注力している。

 メンタリングとは、欧米を中心に導入が広がってきた自己啓発の方法の一つ。指導する側(メンター)と指導を受ける側(メンティー)が1on1で対話を重ねる中から、課題に直面したメンターに対して「どうやったらできるのか」という気付きを与え、自律的な行動を促す。メンターは、メンティーのキャリアに関するさまざまな相談にも乗り、悩みを解決しながら成長を支援する。

 コーチングは、従業員の内面にある考えや答えを対話によって引き出しながら、目標達成を導いていく指導法だ。ボッシュには専門的なトレーニングを受けた社内コーチが多数在籍しており、誰でも自由に申し込んで、就業時間内に無料でコーチングを受けられる。従業員自身が社内コーチとして活躍する道も用意されている。

 「利害関係が生じがちな上司や同僚だけでなく、異なる部署のさまざまな人と交流する機会を増やすことで、従業員個人の学びと成長を促進しているのが、ボッシュの企業文化を反映した人財育成の特徴です」(ボック氏)

クリフトンストレングスコーチング 左:クリフトンストレングス研修の様子、右:コーチング研修の様子(出典:ボッシュ提供資料)《クリックで拡大》

「40から始めるキャリア投資」が新たな挑戦を呼び起こす

 研修にも目を見張るものがある。ボッシュには、世界中の全ての従業員に求められる独自の「ボッシュ・コンピテンスモデル」に基づく豊富な学習機会が用意されている。

 ボッシュトレーニングセンタージャパンの小松崎晃義氏は、「コミュニケーション&マネジメント、リーダーシップ、テクノロジー、ランゲージ&カルチャーといったカテゴリーで年間300セッション以上の研修があり、従業員は自主的に申し込んで就業時間内に受講できます。クラスルーム研修からオンライン研修、Webベーストレーニング、バーチャルクラスルームまで、従業員のワークスタイルに合わせた学び方にも対応しています」と説明する。

 中でも特にフォーカスしたいのが、「40から始めるキャリア投資」という人財育成のプログラムだ。

 人生100年時代とも呼ばれ、生涯の働き方やライフステージが大きく変化し、長期的なキャリアプランが不可欠となっている中、このプログラムは自律的なスキルアップやリスキリングの機会を提供する。

 「社内アンケートの結果から、特に40歳以降における新しいチャレンジへの意欲が低下傾向にあり、人事として危機感を持ったことが、この施策を開始したきっかけです。40歳を迎えた従業員を対象として自律的にキャリアプランを作成し、達成したい目標を立てることでエンゲージメント向上を図ります。目標に対して必要とされるスキルに気付いてもらうことで、学びの意欲を向上させるとともに、同年代の従業員同士で部署の垣根を越えたネットワーキングを強化します」(ボック氏)

図3
「40から始めるキャリア投資」施策の概要(出典:ボッシュ提供資料 )《クリックで拡大》

 具体的には、

  • Will(自分がやりたいこと)
  • Can(自分にできること=強み)
  • Must(自分がすべきこと=周りからの期待)

 といった観点から自己分析とピアグループでのフィードバックを実施し、学習メソッドや人財開発ツールを学ぶ。「TOEIC●●点以上取る」などの目標を個々に掲げ、3〜5人の少人数のグループで進捗(しんちょく)確認ミーティングを毎週行い、1年間かけて新たなキャリア形成に取り組む。

 「この施策を導入したのは2021年9月で、取り組みの歴史はまだ浅いのですが、社内外の資格取得や新しい部署への異動、Pythonなど新しいプログラミング言語のスキル獲得、英語力の向上、社内講師としての活躍、マネジャーへのキャリア転向など、既に多くの挑戦が始まっています」

 こう語る小松崎氏自身も、実は40歳を迎えたときにこのプログラムを受けたことがきっかけとなり、現在の人事部門への転身を図った。

小松崎晃義氏
小松崎晃義氏

 「もともと私は前職も含め、ハードウェアとソフトウェアの両面にまたがるエンジニアリング一筋にキャリアを重ね、仕事にもやりがいを持っていました。しかし、このプログラムを通じて、自分がこれまで培ってきた知見や経験をより多様な場面で生かしたいという思いが次第に高まっていきました。ちょうどそのとき、会社側でもエンジニアがより働きやすく活躍できる環境を作るために、ソフトウェア開発を熟知した人財を募集しているという話が伝わってきたのです。これこそまさに私の新たな使命であると判断し、人事部門でのチャレンジを開始しました」(小松崎氏)

 エンジニアのニーズや悩みに応える研修の数々には、小松崎氏のエンジニア時代の経験や知識、感情が盛り込まれている。

 いつまでもエンジニアとして活躍し続けたいと希望しつつも、「今のスキルでいつまでやっていけるのだろうか」「このままでいいのだろうか」とキャリアの将来に不安を感じているエンジニアは多いだろう。ボッシュでは長期的なキャリアプランの下、本人の意欲に基づき生涯にわたって活躍していけるチャンスが広がっている。ボッシュのさまざまな施策や環境づくりは、エンジニアの成長を大きく後押ししてくれるに違いない。

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提供:ボッシュ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2025年1月10日

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