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IHIが日本の防衛力強化に向けフィンランドの衛星企業と正式契約

IHIがフィンランドの衛星企業ICEYEとSAR衛星の調達で契約を結んだ。最多で24基の衛星を同社が保有して運用し、安全保障用途で日本政府へのサービスを提供する体制を構築する。

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 IHIが、フィンランドの衛星企業ICEYE(アイサイ)と衛星の調達、製造、運用で契約し、調印式を2025年10月16日に行った。航空・宇宙・防衛セグメントは同社売上収益の7割以上を占めるが、ICEYEとの連携はこの事業の成長を促進すると井出博社長は話す。

 IHIは新事業として衛星コンステレーションの構築を推進している。主目的は国家・経済の安全保障と防衛力強化のための情報収集にある。


出典:IHIの新事業説明資料

 低軌道で地球を周回する地球観測衛星群を運用し、常に陸海の状況を宇宙から監視する。有事の際にも必要なエリアの情報を収集して日本政府に供給する。この能力を国内で独自に保有し、運用することが重要だとする。将来的には、同盟国や同志国との観測データや衛星の共有も進めたいという。

 国内における宇宙産業のエコシステム構築も同事業の重要な要素。衛星製造技術の国内移転を図り、製造や打ち上げの機会を創出していく。

 IHIでは、光学、VDES、合成開口レーダー(SAR)など、複数種類の地球観測衛星を配備する計画だ。このうち、SAR衛星の調達で目を付けたのがICEYEだった。

 SARはマイクロ波を発射し、反射波を受信して地表の情報を得るセンサー技術。光学衛星とは異なり、天候や昼夜を問わずに24時間365日、地表の情報を得られる。複数の反射波の合成により、高精細な画像が取得可能。

 フィンランドに本社を置くICEYEは、この技術を搭載した衛星の設計から製造、運用、データ提供までを一気通貫で手がけている企業。54基を打ち上げ済みで、SAR衛星コンステレーションの規模として世界最大という。同社は今後打ち上げを加速化し、2027年末には100基以上の体制とする予定だ。

 IHIは衛星4基を調達する契約をICEYEと交わした。このうち2基はIHIの国内工場で製造する。また、今回の契約には20基の追加調達オプションも含まれている。需要を見極めた上で、2029年度までに全24基の運用を開始する見込みという。

 今回IHIが調達する衛星は、全てIHIが所有して運用する。実際の運用は2026年4月頃から段階的に開始の予定。同社では、衛星データを活用して国内外における需要の発掘やユースケースの創出活動を行っていく計画。防衛省とは何度も意見交換をしているといい、今回の契約調印式にも防衛省関係者が出席した。

 IHIが調達する残りの2基は、ICEYEが日本で製造する。同社はこれまでフィンランドと米国で衛星の製造を行ってきたが、製造国として日本が加わることになる。CEOのラファル・モドジェフスキ氏はIHIエアロスペースのイプシロンロケットにも関心があるといい、打ち上げへの利用も検討すると話している。

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