「コーディングは死ぬ」「AIはソフトウェアをディスラプトする」 生成AI革命の本当の価値(3/3 ページ)
世界最大のVCであるAndreessen Horowitzのゼネラルパートナー、マーティン・カサド氏が東京で講演、生成AIブームの正体を解説した。生成AIは、インターネットと同じレベルの歴史的変革であり、ソフトウェア業界の在り方を根本的に変える。これにより、ソフトウェアの黄金時代が到来しつつあるという。
コードを書く作業はソフトウェアエンジニアリングのごく一部
では、業界として私たちはどこに向かうのでしょうか。ソフトウェア開発は今後どうなっていくのでしょうか。
もし私がスタートアップ企業を立ち上げ、シニア開発者だけで構成された開発チームにAIを活用させるとしたら、驚くほど速く開発を進められます。ゼロから最初のプロトタイプを作るまでのスピードは、確実にこれまでの10倍になります。
その理由は、会社を立ち上げたり、新しいソフトウェアを作り始めたりする段階では、過去に誰かが何度も作ってきたものを大量に作る必要があるからです。
そのスタートアップが成長し、2年後に例えば社員は200人、エンジニアは50人、顧客もいて、システムは既に本番稼働しているとしましょう。ソフトウェアははるかに巨大で複雑になっています。その段階では、かつて10倍だった生産性向上は、30〜50%程度にまで縮小してしまいます。かつてのような圧倒的なスピード感はなくなります。
さらに、何百万、あるいは何十億もの顧客を抱え、レガシーなコードベースを持つ非常に大規模な老舗企業を見てみると、改善率はせいぜい20〜30%程度になります。
つまり、AIは決して万能薬ではありません。得られる効果は無限ではないのです。
理由は、コードを書く作業がソフトウェアエンジニアリング全体の中ではごく一部に過ぎないことにあります。時間配分を見てみると、多くの場合はソフトウェアエンジニアリングプロセスの別の部分に費やされているのです。
ソフトウェアプロジェクトが成熟するにつれて、AIの有無にかかわらず、顧客からビジネスプロセスに関して学ぶことと、複雑化したシステムを運用することについての課題が支配的になっていきます。非常に経験豊富なあるソフトウェアエンジニアは、「ソフトウェアを書くという行為自体は、昔から実質的にはコピー&ペーストの繰り返しに過ぎなかった。本当に難しいのは、アーキテクチャ、運用、そして学びの部分だ」と私に話しています。
コーディングはほぼ終わったと言えます。しかし、ソフトウェアエンジニアリングそのものが不要になる、という話では全くありません。コンピュータがどのように動くのかを理解している専門家は、今後も確実に必要です。アーキテクチャ、設計、運用のために欠かせません。これは依然として非常に技術的な分野です。
ソフトウェアエンジニアの終焉を叫ぶ声が多くある一方で、私が知る限り、最も活発なAI企業は例外なく大量に採用している、という点は指摘しておく価値があります。
私たちは今、ビスポーク・ソフトウェアの時代に入りつつあります。あらゆるアイデアがソフトウェアアプリになり得る時代です。
そして、より多くのソフトウェアが書かれるのであれば、それを支えるインフラが必要になります。そこで今、約10〜20年ごとに訪れるコンピュートスタック全体を作り直す新たな機会が、再び巡ってきています。
これまでを振り返ると、私たちは何度もコンピュータサイエンスやコンピュータシステムを再構築してきました。メインフレームからクライアント/サーバへ、そしてインターネットの登場によって再び全てを作り直しました。サーバルームからクラウドへの移行でも、また全てをやり直しました。
そのたびに、チップを作り直し、ネットワークを作り直し、オペレーティングシステムを作り直してきたのです。そして同じことが、今まさにAIでも起ころうとしています。
そして最後に、これが最も重要な点だと思います。ソフトウェアは今や、これまで決して取り組めなかった問題に挑戦できるようになりました。つまり、ソフトウェアの役割そのものが大きく拡張しているのです。単にコードを書くという話ではありません。創造性、科学、感情、さらにはセラピーのような領域にまで及んでいます。
ソフトウェアが取り組める課題の範囲は飛躍的に広がっています。だからこそ、私はこの分野全体がこれから大きく成長していくと考えていますし、今まさにソフトウェアに関わるには本当にエキサイティングで、信じられないほど素晴らしい時代だと感じています。
われわれは、「ソフトウェアの黄金時代」に突入しているのです。
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