Wi-Fi 7導入で検討したい安定運用の要件 無線LANの不調が招く業務停滞を避ける秘策は:膨大なIoT機器の収容と通信安定性を両立
Web会議の定着や接続デバイスの増加によって、無線LANの課題が顕在化している。多拠点展開や大規模オフィスを構える企業では「Wi-Fi 7」への世代交代は避けて通れない。しかし検討すべき要件は高速化や安定化だけではない。アクセスポイントの更新をきっかけに、サイレント障害の可視化、AI技術を使った運用の省力化なども目指したい。次世代の通信基盤で重視すべき安定運用の要件を整理する。
無線LANの不調は業務の生産性に直結
無線LANの通信品質は、業務遂行を左右する重要事項となった。オフィスや工場で、IT機器の多くは無線LANを介してネットワークに接続している。接続トラブルは業務の停滞を招き、通信速度の低下は作業能率を損なう。現場からの「つながらない」「遅い」といった問い合わせへの対処は、IT担当者の負担増に直結する。
日本ヒューレット・パッカードの中村裕也氏は「コロナ禍以後、Web会議は当たり前になりました。IoT機器も普及し、無線LANへの依存度は高まっています」と指摘する。エンドユーザーが通信の快適さに慣れた結果、不調時の不便さをより強く意識するようになったのではないか、と同氏は推測する。
こうした状況から、新しい無線規格「Wi-Fi 7」(IEEE 802.11be)への注目が集まっている。Wi-Fi 7は2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯という3つの周波数帯域で動作し、Multi-Link Operation(MLO)やMulti-RUといった技術を実装した。さらに4096QAMが利用できることで、伝送効率を向上させ、高速通信、高信頼性、低遅延、通信容量の拡大を可能にする。
過酷環境にも適応する無線LANアクセスポイント
Wi-Fi 7の導入検討が本格化する中、「HPE Aruba Networking」から、Wi-Fi 7対応のアクセスポイントとして5機種が登場した(図1)。「AP-725」「AP-735」「AP-745」「AP-755」は一般オフィス向け、「AP-763」は工場や倉庫などの“屋内過酷環境”向けだ。
オフィス向け製品は、アンテナ数の違いで2x2と4x4の2系統に分けられる。4x4モデルは多接続時のスループット低下を抑制して高速通信を維持できる。各系統の上位版(AP-735、AP-755)はGPSレシーバーと気圧センサーを内蔵し、1メートル未満の精度で位置情報を取得できる他、階層(高度)の把握が可能だ。取得した位置情報を、広告やアセットトラッキングなど、さまざまなビジネスにも活用できる。アップリンクポートを2つ搭載しており、通信やPoE電源の冗長性も提供する。
AP-763は国際保護等級「IP50」(防じん)に準拠し、-40〜+55℃の動作温度範囲に対応する。日本ヒューレット・パッカードの植田凌央氏は「ホコリの多い場所、エアコンのない工場の建屋内、冷凍倉庫内でも利用できます」と説明する。機能面では、アンテナの指向性をソフトウェアで切り替える「ダイナミックアンテナ」を備える点が特徴だ。工場や倉庫のように天井が高い建屋はもちろん、棚の移動やレイアウト変更が多い現場でも、機器を買い替えることなくソフトウェア設定のみで電波強度を最適化できる。この柔軟性は、中長期的なネットワーク設計とメンテナンスコストの削減に直結する(図2)。
IoTプラットフォームとして使われることを想定して、HPEのアクセスポイントはBluetooth Low Energy(BLE)とZigbeeラジオを内蔵している。上位モデルのAP-735とAP-755は、IoTラジオを2つ内蔵しており、より多くのIoTを収容できる。中村氏は「内蔵IoTラジオの拡張やUSBポートの追加といったハードウェアの刷新によってIoTデバイスの収容能力は従来比で2倍に拡大しました。メリットは、無線LANインフラとは別にBLEやZigbeeなどのIoT専用ネットワークを個別に構築・運用する必要がなくなることです。大規模なセンサーネットワークも、アクセスポイントに統合的に収容し、安定して運用できます」と語る。加えて、接続状況に応じて、AIがアクセスポイントをスリープモードに変更することを提案し、混雑時と閑散時の差が大きい場合の電力消費を最適化する。
Wi-Fi 7アクセスポイントを含むHPEのネットワーク製品群の運用管理は、クラウド型管理基盤「HPE Aruba Networking Central」が担う。支店や営業所にまたがる分散型ネットワークで、アクセスポイントの設置場所や台数が増加しても容易に一元管理し、管理工数を抑えられる。HPE Aruba Networking Centralの最新バージョンはユーザーインタフェースを刷新し、AIOps(AI技術を使ったIT運用)の機能を強化した。IT担当者はダッシュボードを通じて、インフラ全体の稼働状況を直感的に把握できる。
ダッシュボードでは正常に見えても通信不調が生じている「サイレント障害」の解消には、ネットワーク監視ツール「User Experience Insight」(UXI)が有効だ。UXIは通信機器の状態をチェックするだけでは確認が難しい問題を、エンドユーザーやクライアントの視点から可視化する。会議室などで突発的に発生する通信不調を後日調査するのは状況の再現が難しく、IT担当者の調査を難航させる要因となる。こうした課題に対してUXIは、利用者と同じ立場からネットワークを監視することで解決を図る。インフラ側の管理画面では見えにくい「エンドユーザーから見た品質」を可視化して、問題発生時の状況を客観的なデータで裏付ける。これにより原因の切り分けから問題解決までのサイクルを迅速化できるのが利点だ。継続的なテストを自動実行する独立型デバイス「UXIセンサー」と、PCやモバイル端末に導入するソフトウェア「UXIエージェント」があり、測定結果はクラウドのダッシュボードで確認可能だ。通信の安定性が業務継続に直結する現場において、UXIは信頼性を確保する実用的な仕組みとなる。UXIエージェントは、従来対応していたZebra、Android端末に加えて、Mac、Windows端末にも対応するようになっており、Wi-Fi 7に対応するUXIセンサーもリリースされた。
全国112拠点の営業網と専任チームでHPE製品の導入を支援するDIS
HPE Aruba NetworkingのWi-Fi 7アクセスポイントは、ITディストリビューターと販売店を通じて、ユーザー企業に提供される。国内のディストリビューターの中でも、盤石な供給体制を敷くのがダイワボウ情報システム(DIS)だ。
DISの宮城真将氏は「全国112カ所に営業拠点を設け、各地のパートナー企業と対面で向き合う体制を構築しています」と説明する。同部の浅田港氏も「豊富な在庫を確保することで、短納期での製品提供を可能にするのが弊社の強みです」と続ける。
HPE製品を取り扱うITパートナー企業に対して、DISは主に3つの側面から支援する。1つ目は、技術的な知見に基づく構成支援と見積もりサービスだ。浅田氏は「社内には20人以上のHPE専任チームを組織しています。HPE Aruba Networking Centralライセンスの手配チームもあり、複雑なライセンス構成でも迅速かつ確実に提供できる体制を整えて提案活動をサポートします」と語る。全国各地のパートナー企業の得意分野を熟知するDISは、ユーザー企業の課題に適したSIerをつなぐ「目利き」の役割も果たしている。
2つ目は、オンラインの流通支援だ。DISが運営するECサイト「iDATEN(韋駄天)」は、物流システムと連動した在庫状況の確認が可能となっている。販売店はWebサイトから直接発注できるため、商材の手配から納品までのリードタイムを短縮できる。ネットワーク機器は、止まってから手配していては間に合わない場面が少なくない。工場や店舗、倉庫といった現場では、突発的な故障や拠点追加に即応できる体制が、事業継続そのものを左右する。故障対応や拠点の急な拡張に伴う即時調達が必要な局面において、この流通体制はダウンタイムの短縮やネットワークの早期稼働を可能にする。
3つ目は、Webサイトでの広範な情報提供だ。Wi-Fi 7の技術解説や最新のキャンペーン情報、製品カタログ、チラシなどの販促用コンテンツを公開している。これらの情報はITパートナー企業だけでなく、エンドユーザーも閲覧可能であり、導入検討時の比較判断を支援する。
オフィス回帰が進む中でもWeb会議は定着し、通信インフラへの要求水準は高まる一方だ。製造業のサイバーフィジカルシステム活用や、物流倉庫でのハンディターミナルを用いたトレーサビリティー管理など、無線LANの役割は拡大の一途をたどる。HPE Aruba Networkingの製品群とDISの供給体制は、高度化する通信ニーズへの現実的な解になるだろう。
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