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「早くリリースして」の代償 AI時代に広がる“危険な本番投入”の実態AI導入の準備状況 経営層と現場の認識に差も

Tricentisは、ITリーダー2501人以上を対象としたソフトウェア品質に関する調査結果を発表した。AI活用で開発速度が向上する一方、グローバル企業の60%が未テストコードを本番環境へ投入している実態が明らかになった。

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 Tricentisは2026年6月5日、ソフトウェア品質に対する信頼性をテーマにした「2026 Quality Transformation Report」の調査結果を発表した。

 同調査は、調査会社Censuswideを通じて2026年4月に実施された。対象は米国、英国、アイルランド、ドイツ、日本、シンガポールの従業員150人以上の企業に属するCEO(最高経営責任者)、CIO(最高情報責任者)、CTO(最高技術責任者)、エンジニアリング担当バイスプレジデント、QA(品質保証)/DevOpsのリーダー、ソフトウェア開発者など2501人。

スピード最優先の代償 現場を追い詰める「2つの元凶」

 AI活用の拡大でリリース速度が向上する一方、SDLC(ソフトウェア開発ライフサイクル)に新たなリスクが生じ、多くの企業が品質への信頼維持に苦慮している実態が浮き彫りになりつつある。

 同調査によれば、グローバル全体では10社中6社(日本65.6%)が未テストコードを本番環境に展開していると回答した。2025年調査時の63%(日本62%)とほぼ同水準だった。

 投入理由には2025年調査との変化が見られた。2025年は主に「偶発的に未テストのコードが含まれるため」(グローバル40%/日本32%)だったが、2026年調査では「品質よりスピードを優先する経営層からの強いプレッシャー」(グローバル32%/日本25%)や「AI生成コードの膨大な量によりテストが追い付かない」(グローバル30%/日本31%)を背景に、意図的に投入している実態が明らかになった。

 調査対象の全ての主要業界で、過半数の企業が未テストコードを本番投入していると回答した。特に以下の業界で傾向が強かった。

  • 金融サービス(グローバル64%/日本69%)
  • 小売(グローバル63%/日本64%)
  • エネルギー/公益事業(グローバル58%/日本66%)

AI導入に品質管理・ガバナンスが追い付かない

 48%(日本47%)の企業がAIを全社的に導入済みと回答したものの、そのうち半数以上がAIツールやプロセスが頻繁に変化しているとした。

 ソフトウェア品質を維持するための課題は、「ツールの複雑化・乱立」(グローバル33%/日本27%)や「スキル不足」(グローバル33%/日本26%)が上位に挙がった。「管理可能な範囲を超えるコード量の増加」(グローバル28%/日本30%)や、「品質や信頼性に関する明確な指標の不足」(グローバル26%/日本28%)も主要課題となっている。

AI導入に対する認識 経営層と現場にギャップ

 経営層がAI活用の進展と捉える状況が、開発チームには運用負荷として認識されているケースもある。CEOの約5人に4人(グローバル81%/日本80%)がAI主導のシステムやツールに高い信頼を示した一方、QA/DevOps担当者では56%(日本43%)にとどまった。「SDLC全体でAIエージェントを運用・管理・拡張できる準備が整っている」と回答した取締役員は44%(日本26%)だったのに対し、QA/DevOps担当者では23%(日本8%)にとどまった。

 83%(日本69%)の企業が「エージェント型AIによるリリース判断を信頼している」、82%(日本64%)が「AIエージェントを大規模運用・統制する準備ができている」と回答した。

 しかし、未テストコード(グローバル60%/日本66%)、ツール乱立(グローバル33%/日本27%)、セキュリティ懸念(グローバル27%/日本33%)、スキル不足(グローバル24%/日本21%)、データ品質問題(グローバル24%/日本18%)など多くの課題に直面している。

品質低下による財務損失は年間100万ドル超も

 企業の5社に1社(グローバル20%/日本23%)は、ソフトウェア品質低下によって年間100万ドル超の損失を被っていると回答した。

 主な原因はセキュリティおよびコンプライアンスの問題(グローバル30%/日本34%)、技術的負債や再作業コスト(グローバル28%/日本25%)だった。45%(日本49%)の企業が年間50万〜100万ドルの損失を見積もっている。

 TricentisのCEOであるケビン・トンプソン氏は「スピードの向上には同時にリスクの増大が伴う。品質プロセスが開発速度に追い付かない場合、多くの企業は近道的な対応を取るようになり、品質や信頼性が大きく損なわれることもある」と述べている。「今後成功する企業とは、スピードと統制を両立して拡張できる企業だ」とし、ソフトウェア品質が経営レベルで取り組むべき課題になっていると指摘している。

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